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エレクトラとオレステス、父アガメムノンの復讐、母親殺しの悲劇

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神話の世界の中では華々しい英雄の物語と同じように、血生臭い権力闘争や復讐劇も数多く存在します。今回はその中のギリシャ悲劇「エレクトラとオレステス」のご紹介です。

父アガメムノンを母クリュタイムネーストラに殺され、その復讐を果たす姉弟「エレクトラとオレステス」。夫婦、親子の愛と憎しみを描きます。


「エレクトラとオレステス」ギリシャ悲劇の代表作のひとつ

ベルナルディーノメイ 作

ギリシャ悲劇とは古代ギリシアアテナイのディオニュシア祭において上演されていた悲劇をいいます。

三大悲劇詩人として知られるのがアイスキュロス、ソポクレス、エウリピデス。その詩人達が扱った作品がアイスキュロスは「オレステスソポクレス、エウリピデス共に「エレクトラ

オレステスとエレクトラは父アガメムノンと母クリュタイムネーストラの間に生まれた姉弟。実母に実父を殺されたことの復讐を果たすお話です。

エレクトラとオレステス、物語の背景

ヤコポ・アレッサンドロ・カルヴィ 作

エレクトラとオレステス兄弟の父はミュケーナイの王アガメムノーン。トロイア戦争でのギリシア軍の総大将です。トロイアに勝利し、捕虜として得たカッサンドラーを連れてミュケナイへ凱旋

けれど、長い戦闘で国を留守にした王アガメムノーンの妻クリュタイムネーストラーは、その間、夫の従兄弟アイギストスを愛人として暮らしていました、

ふたりは帰国したその夜、アガメムノーンと一緒に連れ帰ったイーリオスの王女で予言者のカッサンドラーを殺害

妻クリュタイムネーストラーは開戦前、夫で父のアガメムノーンが娘のイーピゲネイアを神々の生け贄とし捧げたことを憎み、その復讐を果たすべきこととし、これは正当な報復であると考えていました

この時、娘エレクトラはまだ小さい弟オレステースをフォキスのストロフィオスに預け、自身もミュケーナイを脱出

古代ギリシア9歌唱詩人のひとりピンダロスは、 オレステスは20歳になった時、デルポイ(アポロン)の神託で、父の復讐を遂げるよう告げられたとしています。

三代悲劇詩人のひとりアイスキュロスによれば、8年後エーレクトラーとオレステースは、アガメムノーンの墓前で再会し、共にミュケーナイに戻ります

 

芝居は、大人の男性となったオレステースが復讐を行い、ミュケーナイに帰るところから始まります。

 

友人のピュラデースとオレステースはエーレクトラーの手引きにより、クリュタイムネーストラーとアイギストスを殺害

その後、オレステースは実母を手にかけたことの自責の念から狂気に陥り、復讐の女神エリーニュスに追われることになります。

オレステースはデルポイの神殿に避難しますが、たとえアポローンの神託であっても、実母を殺したことの報いから逃れられません。

そこで、女神アテナが提言し、12人のアッティカ人の陪審員による裁判が行われました。

陪審員は有罪無罪ともに同票に別れますが、最後にアテナがオレステスの無罪に票を投じます

ギリシャ悲劇「オレスティア」と「エレクトラ」

アイスキュロスの「オレスティア」ではオレステスの視点から、ソポクレス、エウリピデスの「エレクトラ」ではエレクトラの視点から復讐劇が語られています。

エレクトラ(エウリピデス)

フレデリック・レイトン作 『アガメムノーンの墓前のエーレクトラー』

アガメムノーンの死後、数年の後、クリュタイムネーストラーはエレクトラをミュケナイの農夫に嫁がせます。

農夫は妻を思いやり、性関係を持たずにいます。誠実な夫にエレクトラも家庭の雑用こなし、良き夫婦でありました。けれどエレクトラの母に対する恨みは消えず、その心の内を嘆きます。

ある日、アガメムノーンのもうひとりの子供、成長したオレステースと友となったフォキス王の息子ピュラデスは身分を隠しエレクトラを訪れます。

エレクトラが父の死の復讐を目論んでいることを知ったオレステースは自身が弟であること、そして自分が企てる計画を姉に打ち明けます。

オレステスは祝宴の生贄の家畜を生け捕るために家畜小屋を訪れた母の愛人アイギストスと対決

エレクトラは息子を出産したと偽ってその知らせをクリュタイムネーストラーに送ります。

到着したクリュタイムネーストラーの使者に、オレステースがアイギストスを殺害したことを伝えます。

そしてオレステースとピュラデスがアイギストスの死体を抱えて帰還。

オレステースとエレクトラは帰国を迎えた母クリュタイムネーストラーののどを剣で切りさき、ついに復讐は果たされます

エレクトラコンプレクス

ユングによって提唱。女児が父親に対して独占欲的な愛情を抱き、母親に対して強い対抗心を持つ状態をいいます。これに対して男性が父親を憎み、母親に性的な思慕を抱く場合はエディプスコンプレックスフロイトが提唱しています。

 

オレスティア(アイスキュロス)

ベンジャミン・ウエスト作

舞台は三部作に分かれます。

アガメムノン

トロイアを降伏させたギリシャ軍総大将アガメムノンがミュケナイに凱旋帰国

妃クリュタイムネーストラがこれを迎え、ふたりは宮内に入ります。

アガメムノンに捕虜として捉えられ、ギリシャに連れてこられたトロイアの女王カッサンドラが「この宮にはエリーニュス(復讐の女神)が取り憑いている、アガメムノンは破滅に向かう」と予言

そして自らの運命を受け入れる決心をし、二人の後を追い宮に入ります。

そして、アガメムノンの悲鳴。宮内で刃物を持ち、立ち尽くすクリュタイムネーストラと倒れて生き絶えたアガメムノンとカッサンドラ

アガメムノンはトロイアに出陣する際、実娘イーピゲネイアを女神への生贄として捧げており、クリュタイムネーストラは愛人アイギストスと共謀してその復讐を果たしたのでした。

そしてクリュタイムネーストラは「この殺人は正義に基づいたものであり、今後はアイギストスと共にこの国を支配すると宣言します。

供養する女達

第二幕はアガメムノーンの墓前。成長したオレステスが訪れ、成人の証として切った髪の房を捧げるところから始まります。

そこに姉エレクトラが訪れ、オレステスは身を隠して様子を伺います。エレクトラは母への復讐を誓い、弟オレステスとの再会を願います。弟オレステスはアガメムノンの殺害の前に里子に出されていたために姉弟はそれ以降会えずにいたのでした。

エレクトラの告白を聞きオレステスは姿を表し、ふたりは再会を果たします。そして父の墓前で母と愛人への復讐を誓います

旅人に扮したオレステスはオレステスが死んだと母に伝えることを口実に宮内に入り、そしてまず愛人アイギストスを殺害、命乞いする母クリュタイムネーストラもこれまでの所業を責め、復讐を果たします

慈しみの女神たち

ウィリアム・アドルフ・ブグロー  作 『オレステースの悔恨』

デルポイの神殿、アポロンにすがるために訪れたオレステスの眠っている姿から舞台は始まります。アポロンはアテナイに行き、母殺しの所業をアテナの裁判で罪を問われるよう指示し、ヘルメスが眠っているオレステスを連れ出します

やがてアテナが現れ、オレステスを弁護するアポロンと復讐の女神たちの間で裁判は始まります。結果、オレステスは無罪となり、ここで復讐の連鎖は断ち切られます


それぞれに活躍する「エレクトラとオレステス」

MARVEL COMICSでは「デアデビル」の元カノとして登場し、死亡。蘇生して2005年公開「エレクトラ」では武術や銃器の必殺法を見につけた最強の暗殺者へ生まれ変わります。

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出典:auc1

「不思議の海のナディア」では潜水艦ノーチラス号の副長。

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舞台蜷川幸雄レステス」。演出は蜷川幸雄、出演 藤原竜也、中嶋朋子ほか。2006年公演作品。圧巻の蜷川幸雄の世界が繰り広げられます。

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エレクトラとオレステス まとめ

ジョン・ダウンマン 作

家族間での権力闘争や親子・兄弟の仲違い、果ては憎み合い、遺産相続で殺し合い。

ギリシャ悲劇でなくとも、平日の夜、テレビを付ければ観ることのできるドラマであるようにも思います。

関係が近ければ近いほど、拗れれば根の深い愛憎劇になるのかもしれません。



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