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英雄、勇者としてまず頭に浮かぶほどに知られた「アーサー王」
聖剣エクスカリバーの使い手としてブリテンを統一した名君、そんなイメージが浮かびます。
今回はその「アーサー王」の生涯に触れてみたいと思います。
幸せな最期とは言い難い結末のアーサー王の物語とは…
目次
アーサー王物語とは
アーサーはブリテン人の王。ブリタニア(イギリス)に進撃するサクソン人(ゲリマン系の民族)を撃退したとされる英雄です。
アーサー王が実在の人物であるかどうかについては定かではありません。
一説では、5世紀後半〜6世紀前半、実在したとされる王。
その存在は10世紀以前の書『カンブリア年代記』や、アーサー王伝説の最古の資料とされる歴史書『ブリトン人の歴史』に記されています。
伝説としてアーサー王は、12世紀、ウェールズ人ジェフリー・オブ・モンマスが書いた『ブリタニア列王史』の中でその生涯が描かれています。
13世紀に記された、ウェールズの神話や伝承を収録した書物『マビノギオン』の中でも、騎士道やロマンスに着色される以前のアーサー王伝説を見ることができます。
15世紀に入って、騎士トマス・マロリーがこれまでのアーサー王伝説を編纂し書き上げた『アーサー王の死』によって物語は集大成され、アーサー王物語は今に伝えられています。
アーサー王物語 あらすじ
ブリテンの王アーサーの誕生
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410年、ローマがイギリスから撤退し、そのあとに幾つものケルト人の国家が生まれました。
そのひとつイングランドの王ユーサー・ペンドラゴンは、敵国コーンウォールの王妃イグレインをみそめます。
その想いを遂げよと魔術師マーリンに助けを求めます。マーリンは子が生まれたら預かることを条件に承諾。ユーサーをイグレインの夫、コーンウォール王ゴルロイスに変身させ、ユーサーはイグレインと結ばれ、想いを遂げます。
やがてユーサー王とイグレインの間に後にアーサーと呼ばれる男の子が誕生。アーサーはマーリンに預けられ、エクター卿の子供として育てられます。
ユーサー王が亡くなるとイングランドでは後継者の座を巡って争いが始まります。
そんな時、突然カンタベリー寺院大聖堂の前に岩上に突き刺さった剣「カリブルヌス」が現れ、「この剣を抜いた者がブリテンの正統な王である」という神のお告げがあります(あるいは剣に記されいました)。
ブリテン中の名だたる騎士たちはその剣を抜こうと試しますが、剣は微動だにしません。
エクター卿の子として育てられたアーサーは、義兄ケイの騎士見習いを務め、兄が参加する馬上槍試合に付き添いとしてその場を訪れ、そして難なくその剣を抜いてしまいます。
エクター卿はアーサーの出生を明かし、アーサーはイングランド王として即位することになります。
エクスカリバーとの出会い
王となったアーサーはキャメロンを拠点として、勢力を拡大してゆきます。けれど、他国の王がこれに反発。
アーサーはペリノア王と戦った際、名剣カリブルヌスを折られて完敗してしまいます。
アーサーは次なる剣を得るため、魔術師マーロンに連れられ、とある湖(あるいは伝説の島アヴァロン)を訪れます。
そこで湖の乙女ヴィヴィアンから聖剣エクスカリバーを授かります。
湖の中央に乙女の腕が突き出て、その手には聖剣エクスカリバーが握られていました。
魔法の剣エクスカリバーを手に入れたアーサー王は、その後アングロサクソン軍やウェールズ軍との数々の戦いに勝利し、ブリタニア全土を統一。
マロニーの『アーサー王の死』ではフランス、イタリアを制圧し、ヨーロッパを手中に治めたと記されています。
円卓の騎士
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アーサー王の元には多くの優れた騎士が集います。騎士たちはそれぞれ様々な冒険を体験します。
ラーンスロット
フランスバン王の息子。両親が他界した後、湖の乙女に育てられます。別名「湖の騎士」。
武者修行の旅でブリタニアを訪れ、アーサーと出会います。
槍、剣術、乗馬のどれも彼の右に出るものはいない最強の騎士。性格も高潔、民衆に愛される英傑。「騎士の中の騎士」と称えられる円卓最高の騎士です。
トリスタン
コーンウォールのマルク王の甥で、マルク王に仕える騎士。王の妃になるイゾルデを迎えにゆく任務の途中、誤って愛の媚薬を飲んでしまいます。
王の妃との道ならぬ恋を断ち切るためにイングランドを訪れ、アーサー王の家臣となります。
ガウェイン
ガウェインはアーサー王の姉の息子。有名な物語「緑の騎士」に登場します。
ウェールズの英雄グワルフマイが起源であるとされ、正午には力が平常の3倍になり、太陽が沈むと弱くなるという特殊な能力が備わっていたと伝えられています
アーサー王の結婚
そんな中、遠征から帰還したアーサー王のもとに、オークニー国の王妃モルゴースが訪れます。モルゴースはアーサー王の父違いの実の姉。
それを知らないままアーサーはモルゴースの美しさに惹かれ、一夜をともにします。
そして、モルゴースは後に円卓の騎士モルドレットになる子を身篭ります。
またアーサーは、ロデグランス王の娘、美しいグィネヴィアに恋をします。
ブリタニア統一以前、共に戦ったレオデグランス王の城でアーサーとグィネヴィアは出会います。
魔術師マーリンの反対を押し切って、アーサーはグィネヴィアと結婚。
この時に、グィネヴィアの持参した品の中、大きな円卓がキャメロット城に運び込まれます。
これにより、アーサーに仕える騎士達は円滝を囲み、語り合う「円卓の騎士」と呼ばれることになります。
アーサー王の治めるイングランドは多くの騎士を迎え、円卓の騎士団が結成されます。
その中にはフランスから来た騎士ランスロットがいました。この時よりランスロットとグィネヴィアは恋に落ち、後の円卓の崩壊に繋がってゆきます。
マーリン
アーサー王の最も重要なパートナーはやはり魔法使いマーリン。
マーリンは優れた魔法使いで、預言者でもありましたが、意外な最期を迎えます。
マーリンは妖精ヴィヴィアン(ランスロットを育てた妖精)に恋い焦がれます。
言われるままに魔術を教え、挙句の果て、魔法陣に永遠に閉じこめられることになります。
エクスカリバーの鞘
強大な力を持つ魔女モルガン・ル・フェイはアーサーの異母姉にあたります。
彼女はランスロットを罠にはめたり、数々の悪事を働きます。
そしてある晩、アーサー王の寝室に忍び込み、エクスカリバーの魔法の鞘を盗み出します。
そのためアーサー王は不死の力を失ってしまいます。
聖杯探究
ある日、王宮に雷鳴と共に聖杯の幻影が出現します。
アーサーは円卓の騎士たちに聖杯の探索を命じます。
そのほとんどが挫折する中、ラーンスロット、ガラハッド、パーシヴァル、ラーンスロットの従兄ボールスは聖杯のある城に辿り着きます。
けれど王妃との不義の罪を持つランスロットには、聖杯を手にする資格がなく断念。
ガラハット
ガラハットはランスロットの息子。美しく心の清らかな騎士。聖杯探究の任を与えられ、「最も偉大な騎士」と称されます。
旅の途中、「聖杯の騎士だけが持てる白い盾」「ソロモン王の船」「ダビデ王の剣」を入手。
苦難の末、ついにカルボネック城で聖杯に到達します。
そして、サラスの地でアリマタヤのヨセフのお告げを受け、自ら天に召されます。
パーシヴァル
一説によるとペリノア王の息子で、森で隠れるように育ったパーシヴァルは長して騎士となり、アーサー王に仕えます。
パーシヴァルもまたアーサーに任を与えられた聖杯探求の「穢れなき騎士」
敵の騎士の襲撃や悪魔の誘惑など、苦難の旅の末、ボールス卿、ガラハットと共に聖杯に辿り着きます。
ガラハットが天に召された後、パーシバルは僧になりその後パーシバルもまた天に召されてゆきます。
円卓の崩壊
アーサー王の不義の子モルドレッドも円卓の騎士に加わります。
そして、ランスロットと王妃グィネヴィアの関係に気付き、二人の不貞の現場をおさえ、告発。
ランスロットは逃亡、グィネヴィアは捕えられてしまいます。
不義密通は死刑、アーサー王はグィネヴィアに火炙りの刑を宣告します。
死刑執行の場にランスロットが現れ、グィネヴィアを救出。
けれどその時ガウェインの二人の弟を心なく殺してしまいます。
彼らは王妃の処刑に反対して武装していなかったのです。
その一人ガレスはランスロットを最も慕っていた騎士でした。
これにはガウェインも怒り、ランスロットへの復讐を誓います。
アーサー王はランスロット討伐のため、ガウェインと共に大軍を連れてフランスに渡ります。
けれど騎士の中にはランスロットに味方する者も多く、円卓の騎士たちは敵と味方に分かれ、戦いは激しいものとなってゆきます。
ランスロット自身はアーサー王と戦う意思はなく、妃の命の保証を条件にアーサー王にグィネヴィアを返還し、和解に至ります。
カムランの戦い
フランスでの戦闘が続く中、本国イングランドではモルドレッドが反乱を起こします。
アーサー王は直ちに帰国し、カムランの地でモルドレッドと対峙。
この戦いは、これまでの戦いで最も凄惨なものとなります。
ガウェインはこの戦いで倒れ、ランスロットへ謝罪と援軍を請う手紙を送ります。
それを受けたランスロットは戦場に向かいますか時期を逸してしまいます。
最後にはアーサーとモードレッドとの一騎打ちとなり、アーサーの槍がモルドレッドの腹を貫通、モルドレッドの剣もまたアーサーを一撃します。
この戦いでモルドレッドは戦死、アーサーも深傷を負ってしまいます。
アーサー王の最期
自らの最期を覚悟したアーサーは従士ベディヴィエールにエクスカリバーを湖の乙女に返すよう託します。
ベディヴィエールがエクスカリバーを湖に投げ入れると、現れた手が剣を受けとり、再び水中に消えます。
アーサー王は「私はアヴァロンに行って傷を癒さなければならない。けれど、いつかこの世が窮地に立ったときには戻ってくる」と言い残し、姉のモーガン・ル・フェイや湖の乙女らに付き添われ、船に乗り、消えてゆきます。
アーサー王の墓碑には「ここに、過去の王にして未来の王アーサーは眠る」と記されています。
アーサーの死後、王妃グィネヴィアと騎士ラーンスロットの二人は二度と逢うことはありませんでした。グィネヴィアは尼僧となり、ランスロットもまた世捨て人となり神に仕えます。
そして、グィネヴィアの死が伝えられると、ランスロットは食を絶ち、グィネヴィアのあとを追って亡くなります。
聡明で気さくなキャメロットの王「アーサー」
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アーサー王でまずイメージするのがTVアニメシリーズ「七つの大罪」のアーサー・ペンドラゴン。年齢は16歳、170cmの若き青年王。
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ユニークなものとしてTYPE-MOON Fateシリーズ「Fate/stay night」。TVアニメとしてもお馴染みです。主人公衛宮士郎のサーヴァントを務めるのはアルトリア・ペンドラゴン。キングアーサーが女性となって活躍します。
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テレビシリーズでは『魔術師マーリン 』。イケメンアーサー王の魅力が満載です。ちなみにアーサー王を演じるのはイギリスの若手俳優ブラッドリー・ジェームズ
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2017年製作、映画『キングアーサー』も見応えのある秀作です。監督はガイ・リッチー。ガイ・リッチーの持つテンポの良い迫力のストーリー展開は一見の価値あり
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アーサー王 まとめ
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どこの国でも、今でも、高貴な身分の人は自分で自分の人生を決めるのが難しいようです。
そのために、いろんな悲劇が起こる。
アーサー王も妻が他の男を愛する姿を見るのは辛いだろうけれど、側にいながらこらえなければならない想いを抱えるのもシンドイでしょう。
トリスタンとイゾルデ、ラーンスロットとグィネヴィア、アーサー王物語の中には、悲しいロマンスがいっぱいに綴られています。