ヒュプノスはギリシャ神話の眠りを司る神。原初神である夜を司るニュクスから生まれ、夢の神モルフェウスの父にして死の神タナトスと双子の兄弟という、なんとなくそれぞれの役割が理解できるような中の一柱です。
最近では聖闘士星矢でも冥闘士として知られ、アニメやゲームの世界でもお馴染みの神。そのヒュプノスに注目です。
人の死はヒュプノスが与える最後の永眠であるとされる、神秘に包まれた眠りの神ヒュプノス。 ご覧ください
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ヒュプノス、人に最後の永眠を与える、眠りを司る神
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眠りの神ヒュプノスは夜の女神ニュクスと暗黒の神エレボスの子。死の神タナトスとは双子の兄弟、夢の神モルフェウスの父とされ、ローマ神話のソムヌスと同一視されます。
『オデッセイア』で知られるギリシアの詩人ホメロスによれば,ヘラの命を果たした褒美としてヘラから美と典雅の女神カリテスの一人パシテアを妻に与えられます。
ヒュプノスは人々を眠りに誘うことで労苦から解放してくれる穏やかで慈悲深い神。
両耳の後ろに翼を持ち、木の枝で額に触れる、あるいは額にある角から芥子の液汁を注いで、人々を眠りへと誘います。
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ヒュプノスは、西の空から夜を司る母神ニュクスと共に訪れ、人々に眠りを授けます。
ヒュプノスはまた死の神タナトスと共に人の臨終にも寄り添い、永遠の眠りを授けます。死期が近づいた人間をヒュプノスが眠りに誘い、死神・タナトスが冥界に迎い入れます。
ヒュプノスは兄タナトスとともに、タルタロス(冥界)の、太陽の訪れることのない常夜の地キンメリオイの宮殿で、ケシの花と息子オネイロイたち夢の群れに囲まれて眠っています。
ヒュプノスの息子たち、オネイロイは父ヒュプノスに仕え、人々の夢を司る夢の神。父ヒュプノスが眠らせた人の脳裏にそれぞれの夢を描きます
モルフェウスは、人間の姿となって夢のなかに現われ、時として神のお告げを伝えます。薬物モルヒネの名前は,このモルペウスにちなんでつけられています。
ポベトル(ポベートール・イケロス)は、獣となって悪夢を生み出します。「恐怖症(フォビア)」という言葉が生まれた起因ともなっています。
3番目のパンタソスは鉱物や植物など、物体の形で夢に登場します。非現実的な夢を生みだすことが多く、ここから「幻想的(ファンタジー)」という言葉が生まれました。
神話に登場するヒュプノス
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神話に登場するヒュプノスは眠りを司る事で様々な役割を果たしています
** ケユクスとハルキュオネ **
暁の明星ヘスペロスの息子、ケユクスはテッサリアの王。妻は風の神アイオロスの娘ハルキュオネです。
あるときケユクスの国に恐ろしい異変が続きます。ケユクスはアポロンの神託を仰ぐため、ハルキュオネの反対を押し切ってロニアのカルロスの町へ向かいます。
旅の途中ケユクスの船は難破して、ケユクスは死亡。
けれど夫の死を知らない妻ハルキュオネは、毎日、ヘラに夫の無事を祈り続けます。ヘラはハルキュオネを不憫に思い、虹の神イリスに命じます。
「ヒュプノスに、ハルキュオネに夫の死を知らせるよう伝えなさい」と。
虹の神イリスは、ヒュプノスの住まう眠りの王国がある洞窟を訪れます。洞窟には忘却を促すケシの花が咲き乱れ、そこに流れるレテ川(忘れ川)の水の流れは、あらゆる物を眠りにさそいます。レテ川(忘却の川)の水を飲むと、生前の記憶を失くします。そうすることで自然に死を受け入れることができるようになるのです。
ヒュプノスは、人の心を静め、慰める神。虹の神イリスは、眠りの神ヒュプノスにヘラからの伝言を伝えます。
眠りの神ヒュプノスは息子夢を司るモルフェウスに、その命を託します。
モルフェウスは、死んだケユクスに姿を変え、ハルキュオネの夢に現れます。そしてケユクスとなって「自分は死んだ。だから泣く人もなく、地獄に落とさないでくれ」と告げます。
ハルキュオネは夫の死を知り、嘆き悲しみ、海に身を投げ、神の憐れみによって翼が生え鳥になります。ケユクスもまた鳥になり、二人は再び連れ添うつがいとなりました。
そのほかヒュプノスはヘラの命でゼウスのトロイア戦争への関与を妨げ、月の女神セレネに愛されたエンデュミオンには、若さと美しさを保ったままの永遠の眠りを与えたと伝えられています。
** クトゥルフ神話 **
クトゥルフ神話でのヒュプノスは旧支配者に敵対する旧神の一柱。
一見美しい青年。けれどその実態は悪夢のように歪んで怖ろしい存在。夢の中でヒュプノスの注意を引いてしまった者は、ヒュプノスが考えるもっと相応しい姿、邪悪な者に変えられてしまいます。そして二度と元には戻れなくなり、夢のなかでヒプノスと永久に暮すことになります。
永遠の眠りを与えるヒュプノス、冥界の使者?
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「聖闘士星矢」のヒュプノスは額に線状の六芒星のチャクラがある眠りを司る神。普段はエリシオンにある、ヒュプノス神殿に住まう。無駄な殺生を好まない紳士的な性格。神聖衣を纏った聖闘士や神々でさえも眠らせる実力。
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「ドラクエ10」ではあくま系の中ボス。紫色の鎧の騎士、タナトとは対をなす左利きで武器は剣。「ドラクエ11」では強ボス「魔兵ヒプノス強」に昇格しています。
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『テイルズオブイノセンス』では天上に死神としてその名を轟かせるラティオの戦士。元々は地上の死神。兄タナトスが地上に降りたことで自身もセンサスとの戦争に参加することになります。
女神転生シリーズのヒュプノス、「真・女神転生デビルサマナー」では美しい夜魔の青年。「女神異聞録ペルソナ」では広瀬久美のペルソナ。「雪の女王編」のヒュプノスの塔のボスとして登場。「ペルソナ3」では眠りは死だとする神話を体現するタカヤのペルソナ。
「ヒュプノス 」(ビッグコミックス)
僕らは現実でなく、夢の世界で世界と戦う。
高校一年生の相模は高校入学後、不思議な夢を見る。それは夢の中で変身し、見知らぬ「敵」と戦うというもの。
その特殊な「夢」は、「人類の侵略者との戦い」だった...!!
新鋭・成瀬乙彦が送るダーク青春ファンタジー!
ヒュプノス まとめ
眠りは安らぎ。寝具に寝そべる瞬間も至上の喜びと思う筆者にとっては、ヒュプノスはお友達のように思えます。
けれど、人の苦痛の中で、眠ると悪夢を見たり、眠りたいのに眠れない苦痛にも怖いものがあります。
悪夢を見せるオネイロイ達とは仲良くしたくはないし、まだ永眠もしたくない。
ヒュプノス、やっぱ怖いのか慈悲深いのかよくわからない神です。