現代でも親しまれる浦島太郎はなんと奈良時代から語り継がれる太古の説話。
なんとも可哀想な結末のお話です。
その伝承は形を変え、さまざまに言い伝えられているとか。
そこで、その原話や変遷をたどります。
目次
浦島太郎、太古のおとぎ話
浦島太郎は浦島子伝説が原話とされ、『日本書紀』にも記述される神話。その伝承は全国に点在します。
『万葉集』『風土記』『丹後国風土記逸文』にも記され、現在の内容は室町時代の御伽草子に記されたものを、明治時代に子供向けに改編したものとされます。
浦島伝説を素材にした文学作品には
- 近松門左衛門『浦島年代記』
- 幸田露伴(こうだろはん)『新浦島』
- 森鴎外(もりおうがい)の戯曲「玉篋両浦嶼」
- 坪内逍遙(しょうよう) の楽劇『新曲うら島』
- 島崎藤村の詩『浦島』
などがあります。
浦島太郎の発祥
浦島太郎は『日本書紀』雄略(ゆうりゃく)天皇の項に「浦島子伝承」として記され、『万葉集』にある丹後(京都)の日下部氏の氏族伝承「水江浦島子」がその原型。
『丹後国風土記逸文』では丹後・与謝郡・筒川村の,日下部(くさかべ)氏の祖と記されています。
太古から多くの物語が伝えられています。
- 『浦島子伝』
- 『続浦島子伝記』
- 『続浦島子伝略抄』
などの漢文で記された稀覯本も現存。
- 『源氏物語』夕霧にも浦島の玉匣への思いが詠まれています
- 『本朝神仙伝』平安時代大江匡房著、日本で神仙となったとされる37人の伝記
- 『古事談』鎌倉初期の説話集
- 『宇治拾遺物語』鎌倉時代の説話集
- 『無名抄』鎌倉時代の歌論書
- 『元亨釈書』鎌倉時代の歴史書
- 『御伽草子』室町時代の短編の物語集。ここでで初めて『浦島太郎』として「太郎」の名を与えられて内容も現在のものとなります。
現代において、日本で広く普及する浦島太郎の御伽話は、明治から昭和にかけて使用された教科書に近い内容。童話作家巖谷小波著『日本昔噺』を生徒向けに手を加えて短縮したもので、玉手箱を開けると老人になってしまう、約束を破ると悪いことが起こると伝えるもの。
発祥地は、京都府の与謝郡伊根町、神奈川県横浜市神奈川区、沖縄県にも同様の伝承が伝えられ、
- 京都府与謝郡では宇良神社(浦島神社)、
- 神奈川県横浜市では浦島の足洗い井戸・腰掛石
- 長野県木曾郡の寝覚ノ床
などが浦島太郎ゆかりの地として現存しています。
浦島太郎の原話『浦島子』とは
出典:wikipedia
浦島太郎の原話「浦島子」は万葉集、日本書紀、丹後国風土記に記述されています。
この浦島子は実在する日下部首の先祖。
嶼子(島子)が一人船で海に出るが、3日間魚は釣れず、五色の亀が取れる。船で寝入る間に亀は美女の姿に変わっている。いきなり現れた女性の素性を訪ねると、「天上の仙(ひじり)の家」の者だとの返答。島子と語らいたくなってやって来たという。舟を漕いで女性の住む「蓬山」を訪れるが、海上の島であった。門に立つと、7人の童子、ついで8人の童子に「亀比売(かめひめ)の夫がいらした」と出迎えられるが、これらは昴七星と畢星の星団であった。浦島は饗宴を受け、女性と男女の契りを交わす。三年がたち、島子に里心がつくと、女性は悲しむが、彼女との再会を望むなら決して開けてはならない玉匣(たまくしげ)(箱)を授けて送りだす。郷里を訪ねると家族の消息は得られず、水江の浦の島子という人が300年前に失踪したと伝わる、と教えられる。約束を忘れて箱を開けると、何か美しい姿が雲をともない天上に飛び去って行った。そこで島子は女性と再会できなくなったことを悟るのである。
出典:wikipedia
浦島子から浦島太郎へ その変遷
浦島説話は、古代(~鎌倉時代)、中世(室町時代〜大正時代)、近代(昭和〜)に大別されます。
古代から近代に至る中で、太郎が連れられた異郷は蓬山・常世が竜宮城、浦島子は浦島太郎へ、亀比女は乙姫、玉匣は玉手箱と変わっています。
古代・中世では浦島は姫に招かれ船で異郷を訪れますが、江戸時代には浦島は亀に乗って竜宮城を訪れます。
⚫️古代では
浦島子は亀に身をやつした異郷の姫に夫婦になる縁といわれ、異郷にいざなわれます。
⚫️中世では
亀を漁師の浦島が助けるというエピソードが加わります。
その亀は竜宮の姫で救われた漁師と夫婦になります。
けれど『万葉集』では釣りをしていた浦嶋子(浦島太郎)がワダツミの娘と結婚。里帰りを望んだ浦島にワダツミの娘が箱を渡し、最後に箱を開けた浦島は老衰で亡くなっています。
また『御伽草子』版では、浦島太郎は老人になったのち鶴となって龍宮の姫と再会し再び夫婦となっています。
⚫️近代では
亀は姫の従者として登場します。
そして昭和期の教科書で竜宮は海中にある場所と記述されます。
また、姫は従者の亀を救われた恩返しに蛸や魚などの踊り子で浦島をもてなしますが夫婦にはなっていません。
現代の浦島太郎 あらすじ
出典:wikipedia
現在のストーリーは、教科書を通じて広く国民に知れわたっています。
浦島太郎という漁師は、浜で子供達が亀をいじめているところに出会います。
亀を哀れに思った太郎は亀を買いとって海に放します。後日亀が現れ、お礼に太郎を竜宮に招待するといいます。太郎は亀の背に乗って、龍宮に着くと乙姫が太郎を歓待。
けれど里心の付いた太郎が帰ると伝えると、乙姫は「決して蓋を開けてはならない」といい、玉手箱を渡します。ところが地上では700年もの年月が経ってしまっています。悲観した太郎は忠告を忘れて玉手箱を開け、中から白い煙が立ち太郎は老人になってしまいます
全国に残る浦島太郎伝説
全国的伝承は丹後半島を中心に、
- 横浜市の蓮法寺(れんぽうじ)
- 長野県木曽郡の寝覚の床(ねざめのとこ)
- 埼玉県秩父(ちちぶ)郡小鹿野(おがの)町など
の伝説が伝えられています。
口承伝説では、
- 青森県では 亀はカレイ
- 福井県では 太郎は継子であった
- 京都府では 太郎は3人兄弟の長男の申し子
- 香川県では 玉手箱を開けた太郎は鶴と化し
- 奄美の沖永良部島では 海彦・山彦説話と複合した物語が言い伝えられています
現代では妖怪や怪人にもなる浦島太郎
『仮面ライダー電王』のウラタロスは良太郎が持つ『浦島太郎』に出てくる海亀のイメージが具現化された良太郎に憑依した、青色のイマジン
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『妖怪ウォッチバスターズ』のウラシマニャンは帰りに玉手箱をもらい忘れたショックで妖怪になった竜宮城で暮らしたネコ
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浦島太郎 まとめ
浦島太郎のお話は、助けたお礼を受けただけなのに一生を棒にふる可哀想なお話というイメージがあります。
けれど、昔のお話はまるで鶴の恩返し。
見てはいけない、開けてはいかないと言われれば逆らいたくなる、人間とは好奇心という困った性分を持っているものです。
それがどれほどの代償を伴うかもわからずに