出典:deviantart
エジプトの偉大なる神、太陽神ラーに注目です。
エジプト神話もヒンドゥー教のような独特の世界観が魅力。
その最高神ラーは姿を変えながら天上と冥界を旅する陽の光としての一日の中で、死と再生を繰り返す、まさに太陽の化身。
天と地の祖父、人間を造った創造神でもあります。
そんなエジプト神話の最高神、偉大なる神ラーの神秘を探求です。
目次
ラー、太陽の化身。宇宙と人間の創造神
ラーとは
ラー (Ra)あるいは レー (Re) ははやぶさの頭を持つエジプト神話の太陽神。
原始の海・ヌンから生まれた、原初神。
宇宙の創造者です。
エジプト創世神話のヘリオポリス9柱の一柱であり、エジプト神話の最高神。
天空、地上、地下世界の最高神、古代エジプト宗教で最も重要な神の一柱。
ラーの誕生
世界に混沌しかなかった太古、宇宙はあらゆる存在の起源とされる膨大な原始の水の塊・ヌンに包み込まれていました。
この混沌の中にピラミッド型の丘・ベンベンが出現。
そこに生まれた蓮の花からラーが出現。
ラーの誕生で時間が生まれ、一日の時が流れ出します。
死と再生を繰り返すラーの一日、ラーの旅
ラムセス1世の墓にある門の書の写本
ラーは朝に天の女神ヌトの体内(冥界)から東の空に昇り、夕に西の空から再びヌトの体内(冥界)へ沈んでいく、死と再生を繰り返す不死の存在。
ラーは、アテトとマンジェトと呼ばれる朝の船で天空を旅し、夕にはメセクテトと呼ばれる夕方の船でドゥアト(冥界、12時間の夜)を渡ります。
ラーの冥界の旅には
- シア 知覚の神
- フー 創造の発話の神、
- ヘカ 魔法と医学の神
- セト 砂漠、嵐の神
- メヘン ラーに巻き付く蛇
たちがラーの旅を助けます。
「大猫の姿をしたラーがアポフィスを倒す」テーベ、インヘル・カーの墓(299)の壁画
太陽が沈むとラーの船は西のアケト(地平線)を通り、冥界へ入ります。
そこでラーは航海を阻む闇の象徴である混沌の蛇アポピスの攻撃を受けることになります。
アポピスを倒した船は地底のナイル川を渡り、12の門と地域を通過。
東の地平線に到達、再生。夜明けには再び地上を昇り、昼を照らす旅を始めます。
ラーのこの物語は当時のエジプトにおいて、死は新たなる旅立ちの時として信仰されます。
容姿
冥界の、雄羊の頭と太陽の円盤のラー(クヌム・ラー)
ラーはハヤブサの頭をもつ姿が一般的ですが。一日という時間の中で、多くの姿を持つ(多くの姿に変形する神。
日の出の時は、ヌトの体内(冥界の闇)からタマオシコガネの姿のケプリ(日の出を表すラーの形態)として東に現れ、日中は、ハヤブサの姿となって天を渡ります。
冥界では雄羊(クヌム・ラー)。
それ以外
- 不死鳥、
- サギ、
- 蛇、
- 雄牛
の姿で描かれています。
いくつかの文献でのラーは、黄金の肉体、銀の骨、ラピスラズリの髪の老いた王。
また、
強烈な赤い炎の光を放ち、敵を焼き滅ぼす『ラーの目』の持ち主でもあります。
ラーの目
紀元前 1065年〜664年
ラーの右目はラーの頭上の赤い円盤。
「太陽円盤」と表現され、太陽の持つ力や権威を象徴する神格(女神)であり、破壊的な力を持ってラーの意に背く者を罰する媒体(軍神)です。
『ウアジェト(下エジプトの守護神コブラの女神)の右目』とも呼ばれ、男神であるラーに対(つい)する女神。
ラーを守る守護神であるのと同時に、母、妃、娘として子孫繁栄や出産をつかさどるとされています。
ラーの目の女神たちは
⚫︎ハトホル
愛、美、そしてラーの目とされる殺戮の女神。
雌牛の頭、角の間に太陽円盤を持ちます。
ラーが人類が陰謀を企てていると恐れたとき、「ラーの目」として人間に制裁を加えるために遣わされた女神。
天空神・ホルス、鰐の神・セベク、ミイラ作りの神・アヌビスなど多くの神の妃。
ラーとの間にホルス(大ホルス)をもうけています。
⚫︎セクメト
ラーが人間を滅ぼそうと考えた時、ラーの目から生まれたとされる女神。
雌ライオンまたは猫の頭部、頭頂に真昼の太陽の灼熱を象徴する赤い円盤を持つ女神。
破壊、疫病、戦争を司る一方、治癒や守護の女神としての対局した側面を持ちます。
テフヌトと同様に言葉の創造神・プタハの妻であり、子供はタマオシコガネ(ラー)が姿を変えた睡蓮の神・ネフェルトゥム。
夫プタハ、息子ネフェルトゥムと共にメンフィス三柱神として崇められています。
⚫︎バステト
イシスとの娘とされ、ラーの目とされる女神の一柱。
「ラーの猫」として知られ、バステトはラーを守るために、ラーの宿敵で混沌の神・蛇アポフィスの首をはねたことで知られます。
⚫︎ラエト・タウィ
「天の女神、神々の女主人」と呼ばれるラーの女性形
⚫︎メンヒト
その名は「犠牲を捧げる者」または「虐殺する者」を意味する、雌ライオンの姿を持つ太陽の女神。一説には大気の神・シューの母として伝えられています
⚫︎テフヌト
湿気の女神。
獰猛な雌ライオン、またはライオンの頭を持った戦士とされ、後に、猫の女神へと姿を変えています。
下エジプトのファラオとラーの守護者。
⚫︎ムト
テーぺの守護神である原初の神。
様々な側面と属性を持つ、すべてのものの母なる女神。
アムン・ラーの妻で月神・コンスの母。
ラーを守る力としてのこれらの女神たちは、雌ライオンや、王権の象徴であるウラエウス(コブラ)の姿で象徴されています。
ホルスの目との違い
ウアジェトの右目
「ラーの目」は「ホルスの目」としばしば混同されますが、両者は
⚫︎ラーの目は 太陽を象徴する右目 怒りや暴力、破壊による保護
⚫︎ホルスの目は 月を象徴する左目 慈愛、健康、治癒による保護
という異なった意味合いを持ちます
世界を創った創造神
紀元前1050年頃「混沌の水の神・ヌンが太陽神ラーの船を空に掲る」
創世神話において、ラー(アトゥム・ラー)は世界を創った創造神として語られています。
混沌(カオス)に漂う原初の海・ヌンから生まれたラー(ラー・アトゥム)は自慰によって
⚫︎シュー.
大気の神。
冥界の神・オシリス、豊穣の女神・イシス、軍神・セト、葬祭の女神・ネフティスの祖父。
妹テフヌトとの間に地の神・ゲブと空の女神・ヌトをもうけます。
創造神話の中で、抱き合っている地の神・ゲブと空の女神・ヌトの子供たちを引き離したことで天と地とが分かれたとされます。
⚫︎テフヌト
「ラーの目」とされる湿気の女神。
の父となります。
そして、この2柱は地の神・ゲブと空の女神・ヌトを産みます
ラー信仰
ラーとイメンテト、紀元前13世紀
ラーは先王朝時代(紀元前5500年~紀元前3100年)にはすでに信仰され、第5王朝時代(紀元前2494年~紀元前2345年)には絶大な信仰を集めていたと伝えられています。
天と地、人間を生んだ創造神。
ヘリオポリス9柱の一柱として崇められます。
ヘリオポリス9柱
エニアド、エネアドとも呼ばれるヘリオポリス創世神話に関わる九柱の神々
- シュー 大気の神
- テフヌト 湿気の女神
- ゲブ 地の神
- ヌト 空の女神
- オシリス 冥界の神
- イシス 豊穣の女神
- セト 軍神
- ネフティス 葬祭の女神
その主神となるのが太陽神・ラー。
ラーは、時代によって、アトゥム、アメン、ホルスと習合(同一視)、あるいはトートに入れ替わってゆきます。
人間の誕生
ラーは人間創造に深い関わりがある神の一柱でもあります。
あらゆる生命はラーによって創造されたと信じられていました。
ある伝承では、人間はラーの涙と汗から創造されたとされており、そのためエジプト人は自らを「ラーの牛」と呼んでいます。
ある時、大気の男神シューと湿気の女神テフヌトのラーの子供達が旅に出ます。
心配するラーのもとに無事二柱が戻った嬉しさにラーは涙を流します。
最初の人間はその涙から生まれたのだと伝えられています。
ファラオとラー
古代エジプトのファラオたちは太陽神ラーなど、神々の子孫とされていました。
太陽神ラーは第2王朝より王名に取り入れられて、第5王朝には,初代3王はラーとその神官の妻の間に生まれた子とされ,太陽神ラーは 国(民)の守護神であり、宇宙の創造神、神々の王としての地位を確立することになります。
そしてファラオは「ラーの息子」であり、ラーはファラオが死ぬと太陽の船にファラオの霊を招くと信じられていました。
他の太陽神との習合
アメン、アメン・ラー
ラー神は天と地の創造者にして光の主人。
ラーが誕生するまでの世界には光がなく、それゆえラーは「闇より生まれし光」と呼ばれます。
宇宙の体現であることから、原初の神アトゥムと同化し、天地創造の神「アトゥム・ラー」となり、神々とファラオの父として崇められます。
中王国時代(紀元前2040年-紀元前1700年)には創造神で太陽神アメンと習合され、「アメン・ラー」として、上下エジプトで崇拝。
また、同じハヤブサの頭部をもち、天を渡る天空と太陽神ホルスと「二つの地平線のホルスであるラー」という意味の「ラー・ホルアクティ」として習合。
エジプト新王国時代(紀元前1570年頃 - 紀元前1070年頃)、同じく太陽神であるアムンが台頭すると「アムン・ラー」となります。
ラーの威厳の衰退
その権威が衰え始めると、ラーは人間が自分の敵であると思い込むようになります。
自分を敬わない人間を滅ぼすために、ライオンの頭を持つ破壊神セクメトを人間界におくるよう企てます。
けれど生産の神オシリスの説得で断念し、知恵の神トートにその座を譲ります。
あるいは、息子の天空の神ホルスに権力を与えたいイシスの計略にかかり、自分を支配できる彼自身の本当の名前を教えたため、知恵の神トートに最高神の座を譲ることになったとも伝えられています。
やがてアメン信仰がエジプト全土で広まると、アトゥム・ラーとしての創造神の地位はアメン・ラーとしてアメンに移行。
アテンもまたラーと一時的に習合するようになってゆきます。
ラー、ゲームでも頼もしい(?)太陽神
「パズル&ドラゴンズ」では太陽神ラードラゴンとして登場。暗黒太陽神ラー、極光太陽神ラー、覚醒ラー、転生ラー、超転生ラーと究極進化を遂げてゆきます。
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「モンスターストライク」の太陽神ラーは光属性のカワユイ女性キャラ
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『ゴッドイーター3』のラーは鳥類の頭部をもつ、近づくもの全てを焼き尽くす灰域種。
両手に掲げる炎の球体と捕喰攻撃で襲いかかります。
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『グランブルーファンタジー』のラーは風属性の星晶獣。マルチバトル「エニアドシリーズ」のボス。
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ラー まとめ
出典:deviantart
ラーの誕生で、時が生まれ、人間は死と再生を繰り返す。
死は土に帰る終焉の時ではなく、新たな旅立ち。
この思想は個人的にはエジプト神話の最高に魅力的な思考だと思っています。
輪廻転生、人間は生まれ変わるという思想はエジプト神話に限りませんが、
仏教は業を引きずっているのに対し、エジプト神話ではまっさらに生まれ変われそうな気がします。