目を見開き、牙をむき、眉を逆立てた憤怒の表情でおなじみの不動明王。
仏教の中でもトップクラスの知名度を誇る不動明王ですが、何故、激怒しているのか分かる方はきっと少数なはず。
今回は、そんな鬼神・不動明王のご紹介です。
この仏様は何に、何故怒っていらっしゃるのか、真相は意外なところにあるのです。
熱血な鬼神・不動明王
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八大明王の主尊にして大日如来の化身
不動明王は、仏教に登場する明王で、降三世明、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王ら五大明王や八大明王の主尊。
起源は、ヒンドゥー教の最高神シヴァ神にあるとの説が有力視されています。
明王とは、釈迦が悟りを開いた後の姿である大日如来の化身、あるいは内心の決意を表現したもの。
大日如来の命を受けて、大人しく仏教に帰依しない人々を帰依させ、救済しようとする仏教の守護神。
真言宗をはじめ、天台宗、禅宗、日蓮宗等の日本仏教の諸派および修験道で幅広く信仰されています。
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不動明王の表情には
不動明王は火生三昧 (かしょうざんまい) という炎の世界を住まいとします。
その炎で内外の障害やけがれを焼き尽し、人間の煩悩を断ち切り、すべての悪魔や敵を撃滅するのです。
多くの明王は、人々を調伏させるために恐ろしげな表情をしているのが特徴。
不動明王のその表情は、片目あるいは両目を見開き、牙を出し、下の上唇を噛んで憤怒を示しています。
頭には蓮華をかぶり、怒り狂って乱れる髪を一本に結って左肩にたらし、迦楼羅天という炎を背中に背負っています。
左手には羂索 (けんさく) という人々を救う綱を持ち、右手の倶利伽羅剣 (くりからけん) で邪悪なものを断ち切ります。
忿怒の姿をもって、煩悩を抱える最も救い難い衆生をも救済するのです。
また、大磐石座という堅い岩の上に座っています。これは、迷いのない安定した心を所持していることを表しているのです。
不動明王は酉年生まれの人間の守護神とされ、魔物や災害に打ち勝ち、勝負必勝、立身出世、商売繁盛などの利益をもたらします。
八大童子
不動明王は、八大童子という8の眷属を従えています。
矜羯羅童子 (こんがらどうじ) や制吒童子 (せいたどうじ) 、慧光童子 (えいこうどうじ) などが代表的。
絵画や彫刻では矜羯羅童子と制吒童子だけを両脇に従えたものが多く、これらは不動三尊と呼ばれています。
不動三尊の場合、矜羯羅童子は右に控え、童顔で合掌しながら不動明王を見上げています。制吒童子は左に控え、金剛杵や金剛棒を持って、いたずらっ子のような表情を浮かべています。
お不動さん
不動明王は、9世紀、弘法大師 (空海) が中国から図像を持ち込んだことよって日本に伝来しました。
平将門の乱でなかなか屈服しなかった平将門を不動明王像を使って成田山で調伏したことや元寇を経て、人々に盛んに信仰されました。
現代でも「お不動さん」の呼び名で親しまれています。
不動明王自身より、武器や炎が注目されがち?
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漫画『青の祓魔師』では、倶利伽羅剣が主人公の所持する武器として登場します。漫画では降魔剣と呼ばれ、悪魔と人間のハーフである主人公の悪魔の部分が封印されています。かつて迦褸羅天を宿し、不浄王という悪魔を討ったとされる伝説の剣です。
ゲーム「イナズマイレブン」には、不動明王をモチーフにした不動明王 (ふどうあきお) が登場。当初は悪役でしたが、物語が進んでいくに当たって、主人公たちの力になっていきます。
太宰治の短編小説『地獄変』の題材となった、『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀」では、主人公が不動明王の火炎を描くために、火事の中、燃え盛る家に妻子を置き去りにする様子が描かれています。人々は、主人公が妻子を犠牲にして描いた不動明王を、「よぢり不動」と呼んで賞賛しました。
不動明王 まとめ
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恐ろしげな表情から、戦の神様と誤解しそうな不動明王ですが、人々を啓蒙する存在だったなんて驚きですよね。
憤怒の表情で人々を力ずくでも仏教に帰依させようという姿は、熱血そのもの。でも、現代でこんなことをすれば犯罪になってしまうかも
正義のヒーローが孤独で敬遠される存在になるのはありがちな話ではありますが。。。