ラテン語で「花咲く」を意味するフローラは春の訪れに花々を開花させるローマ神話の女神様。
西風のゼフュロスに連れ去られ、妻となった元はギリシャ神話のニュンペーです。
いかにも清楚で美しい容姿をイメージさせる女神、人々に花を与えたフローラのご紹介です
目次
フローラ、春と花々の女神になった妖精
フローラはローマ神話の春に植物を開花させる、花と豊穣を司る女神。ギリシャ神話の妖精クロリスと同一視されます。
名前の意味は、ラテン語の「花 flos」、または「フロレレ florere 花咲く」。
ギリシャのニュンペーであったころ、西風の神・ゼフュロスに見初められ、イタリアに連れられます。
そしてゼフュロスと結婚し、春と花を司る女神フローラとなり、ふたりの間には、果実の神カルポスが生まれます。
女神となったフローラは人間にありとあらゆる花の種や果実、蜂蜜を与えます。
ギリシャ神話のクロリス
ギリシャ神話の頃のフローラはニュンペーのクロリス、テーバイのアムピーオーンの娘です。
父アムピーオーンはゼウスとアマゾーンの女王アンティオペーの息子。母はニオベー、ゼウスの子タンタロスと、巨人アトラスの娘ディオーネーとの間に生まれます。
父アムピーオーンはヘルメスから習った竪琴の名手で、その音色は石をも動かしたといわれるほどの腕前。
けれど妻ニオベーが自分の子供はアポロンとアルテミスより優れていると自慢し、それがアポロンとアルテミスの怒りに触れたため、クロリス以外の子供達を奪われ、妻のニオベーを石に変えられ、自ら命を断ちます。
クロリスはもとはメリボイアという名でしたが、この時の恐怖で青ざめた顔が元に戻らなかったために「青ざめた顔の女」を意味するクロリスと呼ばれるようになったと伝えられています。
神話で語られる物語は少ないフローラですが、古くから崇拝されている女神。
4月〜5月のこの時期イタリアフィレンツェでは「フローラリア」という豊穣祭が開かれ、ウェヌス(ヴィーナス)や、酒の神バッカス(ディオニソス)と同様に崇められていました。
また、ルネッサンス期の多くの画家に、フローラはヴィーナスと同じように「美」の象徴として描かれています。
西風の神ゼピュロス
西風の神ゼピュロスは、妖精であったころのクロリス(フローラ)の愛を巡って兄弟であるボレアースと争っています。
ゼピュロスは異なる物語の中で、幾人もの妻を持っていたと伝えられ、姉妹である虹の女神イーリスの夫でもありました。
風の神ゼフュルスの妻となり花の女神フローラとなった妖精は、それでもゼフュルスに愛されていると信じていました。けれどゼフュルスは、フローラの侍女アネモネをも愛します。怒ったフローラは、アネモネを追放。
ゼフュルスはアネモネを花に変えたとも伝えられています。
フローラの花園で暮らす花々
ゼフィロスはフローラの住家として花園を贈り、その花園には花になったニュンペーや人間が暮らします。
- サラミスの王子で自刃したアイアースはヒエンソウとなって。
- 水仙になったナルキッソス。
- アポロンの愛を失ったクリュティエはひまわりになって、今も太陽の馬車に乗って天翔るアポロンの姿を追います。
- アポロンの愛を得て北風ボレアスの嫉妬をかい、ヒヤシンスになったヒュアキントス。
- アプロディーテの恋人アドニスはアネモネ。
マルスが生まれた魔法の花
神々の女王ユノー(ヘラ)は夫ユピテル(ゼウス)が自分で娘のミネルヴァ(アテナ)を産んだことに対抗して、自らも子供を出産することを望み、フローラに相談します。
フローラはそれに触れた女性が妊娠することができる魔法の花を与え、この花の力によってユノー(ヘラ)はマルス(アレス)を出産。マルスは本来、太古から信仰される農耕神であったのが、ギリシャ神話と混合し軍神となったものと考えられています。
この伝説に由来して,現在も春の最初の月、3月はマルスの名で呼ばれます。
フローラ、その美しさは普遍的
「刻のイシュタリア」のフローラは、花咲く季節を告げるプリマヴェーラの使者。西風に誘われて、海の果ての楽園へ辿り着き、花と豊穣の女神となった歌と踊りを愛する精霊
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「ダイの大冒険」のフローラはカール王国の女王。国の統治を行いながら 自らも魔王軍と戦う女戦士。
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RPG『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』のフローラはサラボナに住む富豪ルドマンの娘 アベルの嫁候補の一人
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フローラ まとめ
人の気持ちは季節と連動しているのではないかと思うほど、春の陽気の中で人は気分も浮かれます。
これは幸せホルモン・セロトニンが関係していると聞きますが、まあ、理屈は抜きにして、多くの人は美しい花を愛でることで気持ちも癒されます。
だとするなら、フローラは幸福を運ぶ女神様ということになるのでしょうか。