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ヒュドラ、ヘラクレス最強の敵。 “不死殺しの毒” を持つ9頭の大蛇

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出典:deviantart

農耕民族である日本には古来、各地に「九頭龍伝説」として伝えられる、雨を司る9つの頭を持つ龍、龍神様が信仰されています。 

その元ネタとなったのはインドの創世神話『乳海攪拌』に登場する蛇神・ヴァースキ 

 

そして、ギリシャ神話にも9つの頭を持つ大蛇が伝えられています。 

それはギリシャ神話最高の英雄・ヘラクレスに倒され、そのヘラクレス自身もその怪物の毒によって死に至ったという大怪物・ヒュドラ。 

 

“不死殺しの毒”で猛威をふるった大怪物、ヒュドラのご紹介です。 

ヘレクレスの生涯に大きく関わった最強の怪物・ヒュドラの全貌とは。 

 


 

ヒュドラ、へラクレスの生涯を左右した怪物 

ギュスターヴ・モロー 作

ヒュドラとは 

ヒュドラ(Hydra)は ギリシア神話ののような湖の怪物 

その名はギリシャ語で水蛇を意味し 、水素(hydrogen)の名の由来ともなりました 

 

最強・最悪のカップル、テュポーンエキドナの子である、ギリシャ神話最大の怪物の一体 

 

ヘシオドスによれば、ヒュドラはヘラクレスを憎むヘラが彼を倒すために育てたとされる怪物。 

ヘラクレスによって、12の功業の中の2番目に退治されますが、ヘラクレスもそのヒュドラの毒が原因で命を落としています 

また、この怪物は8つの首それぞれが切り落とされてもそこから2つの首が再生され、主なる首は不死という恐るべき怪物。 

古代ギリシャでは、ヒュドラの頭の神話にちなんで、「ヒュドラを切り落とす」という意味の言語を、「際限のない無駄な作業」の表現に使われていました 

 

ヘラクレスに倒された後、ヘラはヒュドラとそれを助けようとしたカニを天に上げ、ヒュドラをうみへび座、カニを蟹座にしています 

 

家系 

アポロドロス(古代ギリシャの著作家)によれば、父母、テュポンとエキドナは奈落タルタロスと地母神・ガイア 

ヒュドラは原初の神々の血を引く怪物 

ヘシオドス(古代ギリシャの詩人)の『神統記』の中でその関係が語られています。 

 

それらによると

祖父 タルタロス 冥界 

祖母 ガイア 原初の地母神 

父 テュポーン  ゼウスに対抗するためにガイアが産んだ巨神 

母 エキドナ  物達の母と呼ばれる、翼をもつ半人半蛇 

兄弟 

  • ケルベロス  地獄の番犬 
  • オルトロス  二頭の獅子 
  • ラードーン  黄金の林檎を守る、100の頭を持つドラゴン 
  • キマイラ  ライオン・ヤギ・蛇の尾を持つ火を吐く獣 
  • スキュラ  「オデッセイア」に登場する怪物 
  • エトン  プロメテウスを襲った鷲 
  • デルピュネー  半人半蛇または竜の怪物、ゼウスの手足の腱を隠した洞窟コーリュキオンの番人 
  • 金羊毛の番竜  アルゴ探検隊が向かうでコルキスの黄金の羊の毛皮を守る竜 
  • パイア  巨大な猪カリュドーンの母 
  • ケートス  鯨の胴体に犬の頭部を持つ海獣 

 

生態

ルーカス・クラナッハ 作

生息地はアルゴリスの冥界への入り口とされる聖地レルナ湖。 

身体 

ヒュドラーは巨大な胴体に9つの首を持つ大蛇。 

その首の数は伝承によっては50、あるいは100の首を持つとされ、足と翼を持つ姿で描かれたりなど、その容姿には諸説あります 

再生能力 

ヒュドラーは不死の怪物 

後期のヒュドラの物語では、再生能力を持ってもつ怪物ともされます。 

9つの首のうち8つの首は切り落とすことはできますが、すぐにその傷口から2本の首が生え、中央の首はどんな武器でも切り落とせない不死の能力を有していました 

猛毒 

ヒュドラの猛毒は息と血、その臭いにさえも嗅げば命を落とすとされる凄まじい威力を持ちます。 

ヒュドラーが寝所にした場に残った残り香だけで、その場所を通った者はもがき苦しんで死ななければなりません。 

しかもその猛毒は解毒することが出来ないという凄まじいもの。 

 

そのためヘラクレスはヒュドラーを退治した後にその毒を(やじり)に塗って最強の武器にします 

その矢を受けた者は決して癒えることのない、もがき苦しむ不治の傷を負います 

そして、そのことが後にケイローンやポロス、ヘラクレス自身を死に追いやることになります 

 

ヒュドラとヘラクレスの死闘 

ギュスターヴ・モロー 作

アポロドロスの『ビブリオテーケー』にヒュドラとヘラクレスの激しい戦いが記されています。 

 

ヒュドラはヘラクレスを倒すためにヘラが作った怪物 

アルゴリス(古代ギリシャ・ペロポネソス半島の東部)のレルネー湖にある沼地に住み、人里を荒して回っていました 

そのためミュケナイエウリュステウスはヘラクレスにヒュドラの退治を命ます。 

これがヘラクレスのネメアーの獅子退治に続く、最も難行であった2番目の功業となります。 

 

ヘラクレスはヒュドラが住むレルナ湖の沼地に着くと猛毒から身を守るため布で口と鼻を覆います 

そして、ヒュドラの巣窟となっているアミュモネーの泉のある深い洞窟に火矢を放ち、現れたヒュドラの首を棍棒で叩き潰します 

けれど、傷口からすぐに2つの首が再生し、倒せば倒すほど首が増えてしまいます 

 

この方法ではヒュドラを倒せないと悟ったヘラクレスは、甥のイオラーオスに助けを求め、イオラーオスは首の傷口を松明の炎で焼き焦がす方法で首の再生を防ぎます 

 

ヒュドラの苦戦を見たヘラは加勢に化け蟹・カルキノスをおくります 

けれどカルキノスは怒れるヘラクレスに踏み潰されてしまいます 

 

残る不死身の首はアテナからヘラクレスに与えられた黄金の剣で切り落とされ、大きな岩の下にまだ生きて身もだえしている首を置き、動かぬよう岩の下敷きにしました 

 

ちなみに、戦いの後ヘラはヒュドラをヒュドラ座 、カルキノスを座に変えました。 

 

ヒュドラの猛毒が生んだ功績と悲劇 

ルカ・ジョルダーノ 作

ヒュドラ討伐を果たしたヘラクレスはアテナの助言を受け、ヒュドラの体から猛毒含んだ胆汁取り出し、猛毒を自分の矢に塗り、その後の戦いに用いるようになります 

 

この毒矢がもたらした功績は大きく、 

第6の試練では、ステュムパリデスの怪鳥を討伐。 

第10の試練では、巨人ゲリュオンを射殺し、彼の牛を奪い取ることに成功させています。 

 

けれど、4つ目の試練で、エリュマントスの猪を生け捕りする際、ケンタウロスのポロスを訪れ、彼らが所有する酒が原因で他のケンタウロスと戦いになってしまいます。 

そして敵のケンタウロスに放った毒矢が相手を貫通し、自身の師である賢者・ケイローンにもあたってしまいます 

解毒できないヒュドラの毒に不死の肉体を持つケイロンは、限りない猛毒の責め苦を味わうことになり、苦痛に耐えかねたケイロンはゼウスに嘆願し、プロメテウスに不死を譲り、死を迎えます 

 

また、ヘラクレスをもてなしたポロスもまた毒矢を手に取った拍子に鏃が脚を傷つけ、その毒で亡くなってしまいます 

 

そして数年後ヘラクレスにも同じ苦痛が襲います。 

ケンタウロスのネッソスに強姦されそうな妻・ディアネイラを見たヘラクレスは、ヒュドラの毒矢でこのケンタウルスを射殺 

ネッソスは死の間際、自分の血が媚薬で、衣服に塗ることで夫の心変わりを防げるとディアネイラに告げました 

心変わりを恐れたディアネイラは、ネッソスの血を塗った衣服を夫・ヘラクレスに渡します 

ヘラクレスはそれを身に付け、猛毒の苦しみにのたうち回ります 

不死であった彼もまた、自らを生きたまま火葬するという壮絶な最期を遂げました 

 

ちなみにアニグロス川の川魚が悪臭で食べられなくなったのは、ヘラクレスがケンタウロスに使った矢から流されたヒュドラの毒によるものだと伝えられています。 

 


 

ヒュドラ、現代でも絶対的な敵キャラ

映画

 2009年公開映画『ヒドラ』では、3つの頭を持つ獰猛な蛇。 

“人間狩り”を楽しむセレブと獲物となった犯罪者たち双方を喰らい尽くしていきます。 

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2010年公開『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』では、真珠を守る水蛇として主人公たちの前に立ちはだかります。 

CGによる演出技術は迫力満点で、神話上のヒュドラの姿を思う存分楽しむことができます。 

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アニメ・ゲーム 

たくさんの頭を持つというインパクトからか、ヒュドラは多くの作品に登場します。 

『ファイナルファンタジー』ドラゴンクエスト』、『Fate/Grand Orderなど。 

ただし、その多くがいわゆる雑魚キャラで神話における本来の力は発揮されていないようです。 

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ヒュドラ まとめ

出典:deviantart

大英雄・ヘラクレスの英雄譚に、光と影をもたらした怪物・ヒュドラ。

神話には多くの怪物が登場しますが、自分で自分の仇を討つという離れ業をやってのけられるものはごくわずかでしょう。

ギリシャ神話に名をとどろかすその存在は、夜空を飾りながらいまなお語り継がれています



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