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ラミア、ヴァンパイアの蛇女。ギリシャ神話のリリス

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出典:deviantart

ラミアはギリシャ神話の蛇女

ヨーロッパの広い地域で、遥かな昔から子供を諭すために言い伝えられてきたヴァンパイア

純真な青年を太らせて食べてしまう、コワ〜〜い怪物、ラミアの生態を探ります。

可哀相な美女の成れの果て、ラミアとは

 

 

ラミア、子供や青年を餌食にする醜悪な蛇女

『鬼女のキス』 イソベル・リリアン・グローグ 作

ラミアまたはラミアー( Lamiā)は、ギリシア神話や民間信仰でも言い伝えられる、もとは古代リビュア(南アフリカ)エジプト王ベロスの娘、あるいはポセイドンの娘という説もあります。

その名前は「貪欲」を意味するラミュロス(λαμυρός)、あるいは「喉」や「食道」(λαιμός)が巨大であるためにその名がついたとされます。

ゼウスに愛され通じたために、子を産むたびにヘラに狂わされてその子を殺し、悲痛のあまり下半身が蛇となって、他の女性の子を奪って殺す怪物に成り果ててしまいます

 

ラミアの起源

ラミアはもとは太古(紀元前〜紀元後12世紀頃)のユーラシアの遊牧民族スキタイやリビアに至る広い地域で崇められた女頭蛇身愛と戦いの女神

その起源は古代バビロニアの風と熱風の悪霊あるいは魔神パズズの妻、魔の女神ラマシュトゥの化身の一つであると伝えられています。
ラマシュトゥは天空神アヌの娘、悪霊たちを率いる女神。自らも子供や妊婦の腹の胎児の血を好んだとされます。

 

容姿

エドワード・トップセル 『四足獣物語』

ラミアの容姿についてはいくつかの説がありますが、共通するのはラミアは美しい女性の上半身と蛇の下半身を持つ蛇女

全身が鱗で覆われ、獣のような手を持っていたとされるものもあります。

起元1世紀頃になるとラミアは男性を誘惑して喰らう悪霊の総称とされるようになり、外見は美しい女性として伝えられます。

 

けれど、17世紀 エドワード・トップセル著『四足獣物語』でのラミアは全身が鱗で覆われ、下半身はヤギ、アザラシの匂いのする睾丸を持つ両性具有種と記されています。

共通して伝えられる、ラミアは悪臭を放つという特徴もあげられます。

 

能力

ラミアは眼球を思うままに取り出すことができます。これはヘラに眠りを奪われたラミアにゼウスが与えた能力といわれます。

蛇の胴体は音も無く俊敏に動き、敵に絡みつく武器にもなります。

上半身も下半身と同じ膂力、恐ろしい毒のある蛇の牙を有します。

けれど、人の言葉はしゃべれないとされます。

ただし、美しい歌や口笛で人を魅了します。人の夢に入る夢魔の能力もあり、眠っている相手の精力を奪うこともあります。

けれど、ラミアは情を交わすこともできといいます。獲物に愛情が芽生えれば伴侶となって暮らし、子をなすこともあると伝えられています。

 

神話の中のラミア

ヘラの嫉妬で怪物になったラミア

コラン・ド・プランシー「地獄の辞典」

ギリシャ神話の中のラミアは元はリビアの女王、海神ポセイドンの息子でエジプト王ベロスとその母リビュエーの間に生まれます。

ゼウスとの間に何人かの子供を授かりますが、ヘラの嫉妬で子供達は全員殺されてしまいます(あるいはヘラに狂わされ自らが手にかけます)。

ゼウスはラミアをアフリカの洞窟に隠します(あるいは、我に返ったラミアはおぞましい自身を呪い、洞窟に籠もってしまいます)。

けれどヘラに知られ、半人半蛇の怪物に姿を変えられてしまいます。

それでもヘラの怒りは収まらず、子を失ったことの悲しみ、絶望からから逃れられぬよう、眠りの神ヒュプノスに命じて、ラミアから眠りを奪ってしまいます。

絶望したラミアは気が狂い、異性や子供を見つけると人を魅了する口笛を鳴らして誘惑し、喰らうようになってしまいます。(あるいは、ヘラに眠りを奪われたので、夜にさまよっては寝ない子を襲って殺すのだとされています)

昼夜彷徨うラミアを見かね、ゼウスはラミアが休めるよう、両眼を取り外せるようにします。そのおかげで眼玉を外しているラミアは穏やかに失った子を思い出しているのだといいます。

 

古代ギリシャでは、眼をつけてさまよっている時間は子供たちが狙われるため、親は「ラミアが来る」と子供を諭します

 

ヘラクレスとラミア

「ゲーリュオーンの牛」ルーカス・クラナッハ 作

ラミアはヘラクレスの神話の中にも登場します。

ヘラクレスが12の偉業のひとつであるゲリュオンの牛を逃がし、乗っていた馬ともはぐれてしまった時ラミアと出会います。

馬を探しヒュライアという土地にたどりついたとき、ヘラクレスは森林の奥の洞窟で半人半蛇の女性に出会います。
自分の馬を見なかったかと尋ねるヘラクレスに、蛇女は答えます。

馬はわたしのところにいます。あなたが私の夫になって子をなしてくれるなら返しましょう」と。

ヘラクレスはラミアの申し出を受け、ともに暮らします。

ラミアは三人の子供をみごもり、約束通り馬を返し、去ろうとするヘラクレスに子どもたちの処遇を訪ねます。
ヘラクレスは自分の弓と、金の杯がついた帯を託していいます。

この帯を身につけることができて、この弓を引けることができる子をこの地に残せ」と。

ラミアはヘラクレスの言葉通り、成人した子供らに彼の弓と帯を試させます。

その中の三男が父親のように扱うことができたため、この子スキュテスはこの地の王となりスキタイ人の始祖となっています

 



エムプーサとラミア

魔物と化したラミアは、その後ヘカテーの配下とされる夢魔で吸血鬼のエムプーサの一員となったと伝えられています。

エムプーサは優れた変身能力を持つ魔物

若い男を獲物として狙い、美しい女性に変身して近づきます

眠っている獲物に悪夢を見せて血を飲んだり、ときには交わった後に喰うこともあるといいます。

エムプーサの一員となったラミアは、子供だけでなく若い男をも誘惑する魔物として扱われてゆきます。

 

民間伝承のラミア

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 作

古来ラミアは子供が恐怖する名として、しつけの場で用いられています。

けれど、紀元1世紀頃以降、子供だけではなく青年を誘惑して最後には喰らう悪霊たちの総称として扱われるようになります。

 

アポロニオスのラミア退治

紀元世紀頃の著述家ピロストラトス著『テュアナのアポロニオス伝』の挿話ではラミアは聡明な哲人アポロニオスにその正体を暴露されています。

 

美しい女性になりすましたラミアはアポロニオスの門弟をたぶらかし、婚礼をあげようとします。

アポロニオスは門弟に「そいつはエンプーサだ、周りではラミアやモルモリュケー(牝狼)と呼んでいる奴だ」と告げます。

このラミアーは美しい女性になる変身能力だけでなく、幻影術によって住まいも豪邸に見せかけていました。婚礼の席でアポロニオスが彼女の正体を暴露すると、幻は消え、すべての嘘が発覚

このラミアは青年を太らせて食らうつもりでおり、「その血が新鮮で純粋」な美青年をねらったと白状しています。

 

黄金のロバ

紀元1世紀頃の弁論作家アプレイウスの代表作『変容』(『黄金のロバ』)では、メロエとパンティアというラミアが登場します。

ラミアのひとりメロエはその能力を使って男性を誘惑します。

けれど虜となった男は友人の助言でメロエの正体を知り、ラミアから逃亡。

けれど二人に見つかり、男は左顎の下を刀で突かれて血を抜かれ、流血は小さな革袋に詰められます。

心臓も獲られてそこに海綿を詰められてしまいます。

男はそんな状態でもなんとか逃げ出しますが、川の水を飲もうとかがんだとき心臓に詰められた海綿が落ちて絶命してしまいます。

 

中世のラミア

古代においてメソポタミアからギリシャへと伝わった、子供の血を吸う怪物ラミアの伝承は、その後長い時代を経て様々な国に異型の形となって伝わってゆきます。

  • アダムの最初の妻リリス(Lilith)とリリスの娘リリム(Lilim)は古代ギリシャにおいては「ラミア」「エムプーサ」と呼ばれ、キリスト教においても「ラミア」と訳されています。
  • ブルガリアに伝わるラミアは再生能力をもった多頭の蛇(あるいは竜)。人間、特に若い娘の血を好むといわれます。
  • アフリカではラミアイ(Lamiae)
  • 中国・日本に伝わって、白蛇伝承のもととなったという説もあります。

敵でも味方でもラミアはやっぱり蛇女

アプリゲーム『Fate/GrandOrder』のラミアは半人半蛇の女性の怪物。蛇の宝玉をドロップするキャスタークラスのエネミー。

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モンスター娘のお医者さん』のラミアはクトゥリフに師事したグレンの姉弟子。薬学の知識に長け、助手としてグレンを支えるしっかり者の知的な女性。

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ラミア まとめ

出典:deviantart

日本では子供を食らう悪神も改心すれば「鬼子母神」なんて善神として崇められるようになります。

ラミアも情を交わせる相手が見つかれば幸せに暮すようにもなれる。

けど、下手したら食べられてしまうという恐怖と向き合ってでも添い遂げたいなんて相手を望むのは難しいかも。

やっぱ、可愛そうだとは思うけど怖い存在。

それにしても、眠りさえ奪うなんて、そこまでやるかって思う、ヘラは悪魔顔負けの、いつもながら怖い存在です。

 



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