サー・ランスロットは円卓の騎士の中でも武勇・人格ともに最も優れた英傑。
アーサー王の友でありながら、王の妻との道ならぬ恋のために、心ならず円卓崩壊のきっかけとなった騎士。
そんな物語の詳細を辿ります。
英雄の「不義」の一言では語り尽くせない、切なすぎる生涯とは。
目次
ランスロット、「騎士の中の騎士」の生涯
サー・ランスロット(Sir Lancelot)はアーサー王物語、円卓の騎士に登場する伝説上の人物。
湖のランスロット(du Lake,Lancelot)、荷車の騎士(Le Chevalier de la charrete)という異名を持ちます。
湖の騎士
ランスロットはフランス・ベンウィックのバン王とエレイン妃の間に生まれます。洗礼名はガラハッド(息子と同名)。
父・バン王はアーサー王のブリテン島統一に助力しますが、長く領地を留守にしていた為に郷の反乱で失命。
戦乱の中、王妃エレインは生まれて間もないランスロットと共に逃亡。
湖の畔で休んでいる時、湖の精(湖の乙女)ヴィヴィアンによってランスロットは連れ去られ、妖精たちに育てられます。
妖精たちに養育されたランスロットは常人を超えた知恵と勇気、武芸を習得します。
成人したランスロットはブリテン島に武者修行に行き、アーサー王と出会いい、王に忠誠を誓います。
アーサーのブリテン島統一のために尽力する歴戦の勇者、アーサーとは親友。馬術、槍術、剣術全てにおいて右に出る者はない、一説には力が3倍になったガーウェイン卿よりも強いとも評されます。
名剣アロンダイトを愛刀とし、円卓の騎士たちを統制し、戦場においては一騎当千の活躍でアーサーを支えています。
騎士としての人格も素晴らしく、多くの女性にも慕われる英傑です。
アーサー王、グィネヴィア妃との出会い
けれど、密かに王妃グィネヴィアへの思いを募らせてゆきます。
きっかけは、ランスロットが騎士叙命式で剣をなくした際、グィネヴィア妃に助けられ、忠誠を誓ったこと。
荷車の騎士
ある時、ブラデメイガスの王子マリアガンスはグィネヴィア妃を慕い、グィネヴィアと護衛のケイ卿をさらいます。
ランスロットは真っ先に救出に向かいますが、待ち伏せで馬を射殺されてしまいます。
重い鎧姿で歩かなければならない時、森で荷車を見つけます。
当時、荷車に乗るのは罪人か不浄な者に限られており、それを使うのは非常な恥とされていました。
ランスロットは自らの自尊心を捨て王妃のため荷車で走り、国中にその姿を晒すことになります。
無事グィネヴィア妃を救出できますが、グィネヴィア妃はランスロットを騎士道に背く行為で罰せられたのだと誤解し、ランスロットを罵倒。ランスロットは半狂乱となって3日3晩森を彷徨うことになります。
二人のエレインとの出会い、そして聖杯探索
ランスロットは亡き母と同じ名の「エレイン」という女性に不思議な縁があります。
カーボネックのエレイン
カーボネックのエレインはペレス王の娘で、漁夫王(ペラム王)の孫。
「この国で最も美しい」という評判のため、モーガン・ル・フェイに嫉妬され、熱湯で茹でられるという拷問を受けていました。
ランスロットに助けられ、卿を慕うようになります。
グィネヴィアに焦がれるランスロットへ想いを遂げるため、自身をグィネヴィアだと思い込ませ、ランスロットと一夜を共にし、後のガラハッド卿をもうけます。
エレインとの関係はグィネヴィア妃にも知られてしまいます。それを妃に責められたランスロットは気が触れて、2年間行方不明になった時期があります。
回復後、エレインの領地でル・シュヴァリエ・マル・フェ(罪を犯した騎士)と名乗って4年間エレインと共に暮らします。
アストラットのエレイン
「アストラットの乙女」「シャロットの乙女」とも呼ばれ、ランスロットへの悲恋で有名です。
兄は円卓の騎士のひとりラヴェイン卿。
身分を隠し、変装して槍試合に出るランスロットと出会います。
愛の印である自身の赤いスカーフをお守りに身に着けるよう願います。ランスロットは身分を隠すためにその申し出を受け、初めて愛の印を付けて試合に参加。重傷を負ったランスロットをエレインは献身的に看護します。
けれど、完治したランスロットはエレインの愛を受け入れることなく宮廷に戻ります。
悲嘆にくれるエレインは食事も睡眠も取らないまま衰弱死。
亡骸はランスロットへの想いを綴った手紙と共に小舟でキャメロットに流されます。
聖杯探求
ランスロットも他の騎士同様聖杯探索の旅にでます。そして、パーシヴァルの姉の遺体が安置されている船に乗り,その船旅の途中で,息子ガラハッド卿と再会。約半年ほどの期間父子は行動を共にします。
ランスロットも聖杯城に到ることが許されるものの、グィネヴィアとの不義が原因で聖杯が目の前に出現したにもかかわらず、聖杯のある部屋に入ってもそれを見ることができずにキャメロットに戻ります。
円卓の崩壊
ある日、ランスロットとグィネヴィアはついに不義の場をガウェイン卿の弟アグラヴェイン他、円卓の騎士達に踏み込まれてしまいます。
捕らえられたグィネヴィアは火刑。処刑場に乱入したランスロットはグィネヴィアを救出。
一連の騒動でランスロットは同胞の騎士たちを心ならず殺害してしまいます。
この時、警護にあたっていたガウェイン卿の弟ガヘリスとガレスの兄弟も亡くなります。
彼らはランスロットを慕い、救出に来るランスロットのために武器を持たずにいたのです。
三人の弟を失ったガウェインは激怒、ランスロット討伐を強く願うようになります。
けれど、ランスロットを慕う騎士も多く、円卓の騎士たちはふたつに分かれてしまいます。
ふたりを追うアーサーはその討伐に苦戦。けれどランスロット自身も多くの同胞を殺めた自らの行動を悔い、戦意もありません。
アーサーの一騎打ちの申し出にも応じず、アーサーが危うく見方の騎士に倒されようとするのを止め、王の命も救っています。
けれど、ガウェイン卿はランスロットとの一騎打ちで受けた怪我が原因で戦死。
そして、ロチェスター僧正の仲裁で休戦。グィネヴィアはアーサー王の元に、ランスロットはフランスの領地に戻ります。
アーサー王の死
その間、ブリテン島で留守を守るモードレッドが反乱。王位と王妃も我がものにするために戦を起こします。
その戦いは壮絶を極め、この時アーサーとランスロットは和議を結んでいます。
ランスロットはアーサーへの援軍を派兵しますが、モーガン・ル・フェイの妨害のために間に合わないまま、カムランでの戦いとなります。
アーサー王とモードレッドは相討ち。
死を悟ったアーサーは湖に聖剣を返し、自らもモーガン・ル・フェイと湖の乙女ヴィヴィアンに付き添われ、小舟に乗って去ってゆきます。
時を逸したランスロットはモードレッドの息子たちを討ち取り、 アーサー王の仇をとります。
道ならぬ恋の結末
アーサー王の死後、グィネヴィアは修道女となり王を弔います。
この時、ランスロットはグィネヴィアに別れを告げられ、それ以降、二人は二度と生きて逢うことはありませんでした。
ランスロットもまた僧となり、余生をおくります。
7年の後、グィネヴィア死亡。
その死が伝えられると、ランスロットは自ら食を絶ち、その生涯に終止符を打ちます。
ランスロット、現代でもまんま勇敢な騎士
『Fate/Grand Order』のランスロットは、『神聖円卓領域キャメロット』の敵、獅子王に仕える、黒騎士と呼ばれるセイバーのサーヴァント。
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出典:famitsu
『コードギアス 反逆のルルーシュ』では枢木スザクが搭乗する驚異的な戦闘力を誇るナイトメアフレームです。
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ソーシャルゲーム『クリスタル・オブ・リユニオン』のランスロットは美貌と智勇を併せ持つ、気まぐれで王にしか御せない女騎士。
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ランスロット まとめ
出典:deviantart
不義密通、円卓の崩壊、友の殺害、王への裏切り、この非道な行為のどれもただ、愛ゆえ。
そんなにも長く一途にひとりの人を愛せるということがすごい!
ラーンスロットはいかなる不義をはたらいたのか、アーサーは妻と親友を憎んだのか。
この物語の中には正義を正すこととヒトでいることには修復不可能な歪みがあるよう。
栄光を手にしたサクセスストーリーより、ヒトとしての感情ゆえの苦悩とその結果が劇以上に劇的です。