1931年『フランケンシュタインの怪物』ボリス・カーロフ
フランケンシュタインはドラキュラ、狼男と並ぶ三大メジャー怪物。
首をボルトで留め、両手を前に突き出し、唸り声をあげる知能の低い、飛び跳ねないキョンシーのような怪物というイメージがあります。
けれど、本家のフランケンシュタインは3ヶ国語堪能の知性派、感受性豊かなシャイな性格。
そこで、本来のフランケンシュタインについて探ります。
人造人間フランケンシュタインの誕生、物語の中で辿る運命とは
目次
フランケンシュタイン、名前のない人造人間
1831年版『フランケンシュタイン』の挿絵
フランケンシュタインとは
フランケンシュタイン(Frankenstein)は1818年、イギリスの小説家メアリー・シェリーが匿名で出版したゴシック小説の中で作られた人造人間。
『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』というタイトルで出版され、この作品の出版で小説家メアリー・シェリーはSFの先駆者、あるいは創始者という評価を得ています。
作品『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』の語り手は、ウォルトンという冒険家。
旅の途中で、ヴィクター・フランケンシュタインと出会い、彼の話を聞くことで物語は綴られてゆきます。
作者メアリー・シェリー
リチャード・ロスウェル 作
『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』の作者メアリー・シェリーはロマン派詩人パーシー・シェリーの妻。
「フランケンシュタイン」が出版された当時、なんと19歳という若さでした。
夫パーシーと16歳で駆け落ち結婚。
その後長女を生後12日で、次女も1歳の時赤痢で、長男は3歳の時マラリアで亡くし、義理の妹と夫の元妻も自殺。
身近な人間の多くの死を体験しています。
そんなメアリーが19歳のある日、詩人のバイロンやその他の友人たちが集い、長く降り続く雨に暇を持て余し、ひとり一作品ずつホラー小説を描くことをバイロンが提案。
1816年メアリーは執筆を始め、2年後に匿名での出版を果たします。
『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』あらすじ
1922年版『フランケンシュタイン』の挿絵
イギリスの北極探検家・ロバート・ウォルトンは姉に宛てた手紙の中でヴィクター・フランケンシュタインとの出会いを綴っています。
ウォルトンは北極点に向かう途中、遭難し衰弱している科学者・フランケンシュタインを救助。
フランケンシュタインはウォルトンに自らの体験を語ります。
フランケンシュタインは、「理想の人間」を創造を目論み、人間の死体をつなぎ合わせることで人造人間の創造に成功。
その人間は、人間の心と強靭な体、優れた知性を持って生まれますが、醜い容貌の怪物となってしまいます。
そのおぞましさにフランケンシュタインは絶望し、怪物を残したまま帰郷。
怪物はフランケンシュタインを追って彼の元にたどり着きます。
そして、自分を忌み嫌い迫害するフランケンシュタインの弟・ウィリアムを殺害。
その殺人犯として家政婦のジュスティーヌが絞首刑になります。
怪物は、二度と人前に現れないという条件でフランケンシュタインに自分の伴侶となる異性の怪物を要求。
フランケンシュタインは一旦はもうひとりの人造人間を作り出す作業に取りかかりますが、思い直し、怪物の要求を拒否し逃亡。
再び帰郷したフランケンシュタインは養女として一緒に育てられたエリザベスと結婚します。
けれどその夜、怪物に彼女は殺されてしまいます。
憎悪に駆られたフランケンシュタインは怪物を追ってここまでやって来たのでした。
全てを語り終えたフランケンシュタインは、怪物の抹消をウォルトンに託し、力尽き、亡くなります。
その後、創造主から名も与えられなかった怪物は船上に現れ、創造主の死を嘆きます。
そして、自ら死を遂げるため北極海に消えてゆきます。
怪物「フランケンシュタイン」の特徴
「フランケンシュタイン」という名前
『フランケンシュタイン』(1910年)チャールズ・スタントン・オーグル
ユニバーサル映画の公開以降は怪物の名は「フランケンシュタイン」となっていますが、その名は本来怪物を創造する若き科学者の名。
小説の中で、怪物はヴィクターとの会話で自身を「あなたの労働者アダム」と表現。
ヴィクター(フランケンシュタイン博士)は怪物を「クリーチャー」「悪霊」「幽霊」「悪魔」「惨めな者」「物」「存在」「オーガ(人型の怪物の一種)」など、さまざまに形容する、名前のない怪物として扱っています。
「フランケンシュタイン」の知性
トーマス・チャールズ・ウェイグマン作トーマス・クークの怪物
フランケンシュタイン博士は「完全なる生命」を生み出すことを目的としており、生まれた怪物は雄弁に言葉を話します。
誕生してまもなくドイツ語とフランス語を理解するようになり、後に英語も話せるようになっています。
また、ヴィクター・フランケンシュタインから見放され、彷徨う中、道端に落ちていた旅行鞄を拾い中の3冊の本を読破します。
その3冊の本とは、イギリスの詩人ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』、ローマ帝国のプルタルコスが書いた伝記『プルターク英雄伝』、ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』。
原作で描かれた怪物は優れた頭脳の持ち主でした。
「フランケンシュタイン」の性格
フレッド・グウィンの怪物
ヴィクター・フランケンシュタインは怪物を自分と対等な存在として人生を分かち合うことをも目的としていました。
そのため、物語の中での怪物は人間と同じように悲しみ、怒り、そして傷つきます。
小説の中の怪物は豊かな感情を表現して、人間たちとコミュニケーションを取るよう試みます。
そして、自分と対となる恋人を切望する、非常に人間らしい性格の持ち主でもあります。
「フランケンシュタイン」の容姿
フランケンシュタイン(1910年)のチャールズ・スタントン・オーグル
作者は小説の中での怪物の容貌を、「身長8フィート(約2.4メートル)、怪しく光る眼、黒い髪と不気味な血色の唇、黄色い肌の醜い外見」と表現しています。
現在のフランケンシュタインのイメージ、「首をボルトで留めた四角い頭部、全身が縫い合わされた身体、会話と動作に障害を持つ」フランケンシュタインという怪物は、1931年公開のアメリカのユニバーサル制作映画『フランケンシュタイン』で出来上がっています。
フランケンシュタイン、ティム・バートンお気に入りのキャラ(?)
映画
1931年『フランケンシュタインの怪物』。この作品で今のフランケンシュタインのイメージが定着した名作。哀愁漂うフランケンが心に残ります。
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2012年公開 ティム・バートン監督長編アニメ『フランケンウイニー』。
学校で行こなった実験にヒントを得たヴィクター少年が死んだ愛犬を蘇らせますが。。。
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同じくティム・バートン監督、クリスマスの名作『ナイトメア・ビフォーア・クリスマス』のフランケンシュタイン博士はハロウィンタウンの科学者で、サリーの創造主。
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ビートルズのミュージックビデオ『イエローサブマリン』の中で、実験台から立ち上がったフランケンシュタインは試験管の中の薬を飲み、ジョンに変身。「嫌な夢を見た」と呟きます。
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アニメ・ゲーム
アニメ「ソウルイーター」のフランケンシュタインは死武専最強の職人でもあるマッドサイエンティストな天才科学者。
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『Fate/Apocrypha』のフランケンシュタインは黒陣営のバーサーカー。ウエディングドレスをまとった虚ろな瞳の美少女です
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フランケンシュタイン まとめ
1931年『フランケンシュタインの怪物』ボリス・カーロフ
フランケンシュタインを題材にした映画は、怪物キャラとしては最も多いのではないかと思えるほど、多くの作品が生まれています。
コメディーであったり、アニメであったり、個性的なキャラであるだけに扱い易いのであろうと思います。
けれど、本来のフランケンシュタインは人間との心の交流を求めた心優しい怪物。
なんでもアリな現代ならもう少し抵抗なく受け入れられていたかもしれません。