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サラマンダー、現存する(?)火の精霊

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サラマンダー、四大精霊の中の火の精霊。

けれど、このサラマンダー、実は紀元前の太古からさまざまに語り継がれる伝説的な生物。

かのアリストテレスやダヴィンチもその生態について言及しています。

 

毒薬になる?、媚薬になる?

ドラゴン?、人型の精霊?

 

サラマンダーの正体とは

 


 

サラマンダー、様々に語り継がれる炎の精霊

「ラムスプリングの書」16世紀

サラマンダーとは 

サラマンダー(salamander)日本語に訳せばサンショウウオ(山椒魚)

なぜ、川に生息するサンショウウオが火の精霊なのかの疑問も生まれてきますが。

中世錬金術では四大元素のひとつ、火を司る精霊・妖精(エレメンタル elementals)。

太古からヨーロッパの広い地域で語り継がれる火に耐えて生きる伝説的な生物です。

 

多様に語られるサラマンダーの正体

『動物寓話集』のサラマンダー(500年~1500年頃)

両生類としてのサラマンダー(サンショウウオ)は世界の至る所で生息していますが、伝説的な生物としてのサラマンダーの伝承はさまざまです。

炎を操る特徴からゲルマン人の伝承でのファイアー・ドレイクとも同一視され、羽の生えたドラゴンとして、紋章のモチーフにもなっています。

人間の姿をしているものも多く、しばしば「女性」の姿で民話の中に登場

猛毒を持つ、様々な薬効がある生物とされ、マルコ・ポーロの『東方見聞録』では石綿(アスベスト)が「サラマンダーの皮」として紹介されています

 

プリニウス(大プリニウス 紀元23年〜79年、百科全書『博物誌』を著した古代ローマの博物学者)サラマンダーをファイアサラマンダーと同一の可能性があるとし「大雨の時だけに姿を表す、体全体がまだら模様のトカゲに似た生物」としています。

 

イスラーム教圏のサラマンダーは「サマンダル」「鳥類、あるいは貂(テン)のような動物」とされます。

 

16世紀に入って、パラケルススはサラマンダーを人間に近い姿をした四大精霊中の火の精霊として提唱しています。

 

現代でも生息するサラマンダー

現代でもヨーロッパには皮膚からサマンダリンという神経毒を分泌する有尾類であるファイアサラマンダー「火蜥蜴(ひとかげ)」が生息しています。

サラマンダーは日本では『山椒魚』を指していいます。

これはサラマンダーがラテン語で「山椒魚」を意味するサラマンドラSalamandraであるところに由来するもの。

一説では、火に弱い両生類である「山椒魚」は古代には存在したと考えられた有翼の火トカゲ「ピュラリス」と重なって、火を司るトカゲ、サラマンダーと化していったものと考えられています。

 

炎への耐性

『ディオスクリデスの写本』6 世紀

サラマンダーが火に対して耐性を持つ生き物であるという伝承は、紀元前4世紀、古代ギリシャのアリストテレスが著書『動物誌』の中で言及しています。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452–1519)は「サラマンダーには消化器官がなく、火の中から栄養を吸収し、火の中で鱗状の皮膚を再生する」と語っています。

 

サラマンダーの繭で作った布は不燃性、どんなに汚れても火にくべることで汚れは燃焼し、表面は新しいものと同様になるとされ、中世では石綿(アスベスト)で作られた布がサラマンダーのものだとして実際に売り買いされていました。

 

余談ですが

江戸時代、蘭学者であり医師でもあった平賀源内は石綿(アスベスト)で布を織り、「火浣布」と名付けています。

『竹取物語』にも「火鼠の皮衣」が登場します。

かぐや姫が求婚者のひとり、右大臣阿倍御主人に結婚の条件として求めた品で「火にくべても決して燃えない布」と称されていました。

 

 

サラマンダーの猛毒と薬効

出典:deviantart

古来、多くの伝承でサラマンダーは猛毒を持つと伝えられています。

樹木に付くとその果実を、井戸に落ちるとその水を、窯に触れると窯で焼くパンを人を殺すほどの猛毒にするとされました。

そして実際に生息するファイアサラマンダー(火蜥蜴)やアルプスサラマンダーなどの多くのサラマンダーは、有毒な生理活性物質を排泄することが実証されています

 

プリニウス(大プリニウス 紀元23年〜79年、百科全書『博物誌』を著した古代ローマの博物学者)は、薬効と毒性についても言及。脱毛効果を語っています。

 

ニカンドロス(紀元前2世紀、古代ギリシャの医師)は、著書『アレクシファーマカ』の中で、摂取後の後遺症として「舌の炎症、悪寒、関節の震え、みみず腫れ」などの症状が現れるとしています。

 

セクスティウス・ニゲル(紀元元年頃のローマの薬理学者)は 、頭を切り落とし、内臓を取り除いて蜂蜜で保存したサラマンダーは食物と混ぜると媚薬効果があるとしています。

 

ディオスコリデス(紀元40-90年 古代ギリシアの医師、薬理学者、植物学者 )『薬物学』の中で「サラマンダーには食物あるいは物品を腐敗させる性質があり、ハンセン病の治療に有効」としています。

 

宗教・伝承の中のサラマンダー

マンリー・P・ホール作 16世紀

ユダヤ教の聖典『タルムード』の中でも[サラマンダーについて語られています

その中でのサラマンダーは火から生まれた生き物。

『ハギーガ』には「その血を塗られた者は火に耐性を持つようになる」。

『ミドラーシュ』には、火のサラマンダーは7日7晩燃え続けた炎の中に現れるとされます。

 

キリスト教でのサラマンダーは「熱情を抑えた信仰心」「貞節」を象徴しているとされます。

 

中世のアーサー王伝説では、アグリモントの火に住むサラマンダーは、チノトゥランダーという人物が持つ盾の中に「生きたまま」収められています。

 

ファイアー・ドレイク

フリードリヒ・ヨハン・ユスティン・ベルトゥフ作1806年

サラマンダーはファイアー・ドレイクとも同一視されます。

 

ファイアー・ドレイクはケルト(北西ヨーロッパ)やチュートン(デンマーク)の伝承に登場するドラゴンの一種

財宝を守る役割を持ち、他のものを寄せ付けません。

ファイアー・ドレイク(「火の竜」)の名の通り、全身が炎で覆われ、火を吐き、空を飛びます。

「火の精霊」であるのと同時に「死者の魂」と同一視されることもあり、他の説では、熱い雲と冷たい雲が交わって誕生するともいわれています。

夜に見える不思議な光は、ファイアー・ドレイクが空を駆けている姿であると伝えられています。

 

象徴としてのサラマンダー

象徴としてのサラマンダーは、中世では信仰心や貞節の象徴

近世では第9代のフランス王フランソワ1世(15〜16世紀)サマンドラ紋章」として正義の象徴とされました。

紋章としてのサラマンダーはトカゲやドラゴン、火を吹く猛犬のような姿で描かれているものもありました。

 

火の精霊

出典:deviantart

ヨーロッパの伝説に登場するサラマンダーは、燃えない皮膚をもち、灼熱の火の中に住む、火を司る精霊

炎を自在に操ることができますが炎から離れて生きることはできません

怪我をしても火を食して再生すると信じられており、キリスト教では教会や騎士のシンボルともなっています。

サラマンダーは人間、怒りっぽい女性の姿で表されることも多くあります。

18世紀の詩人アレキサンダー・ポープ著書『髪盗人』では、情熱的な女は死後、火の精霊サラマンダーになると記されています

 

錬金術とサラマンダー

中世の医師であり錬金術師であったパラケルススは著書「妖精の書」で『四元論』を唱えています。

これは「世界は地・水・火・風の4つの元素からなり、その元素にはそれぞれに対応する精霊がいる」というもの。

サラマンダーは錬金術には欠かせぬ元素「火」を司るところから、錬金術そのものの象徴とされました。

錬金術師は火の精霊であるサラマンダーを崇め、その存在を信じていました。

 

四大精霊

四大精霊とは地・水・風・火の四大元素の中に住まい、司る精霊たち。

火のサラマンダー以外、土の精霊ノーム、水の精霊ウンディーネ、風の精霊シルフが存在します

サラマンダーを含む4大精霊は通常、魂を持ちませんが、人間と結婚することで魂を得て、子どもを持つことも可能になるといわれています。

 

 

サラマンダー、現代でも変幻自在

ポケットモンスター』では「ひとかげ」として登場。

オレンジ色の直立するトカゲ。第一世代から登場しているポケモンです。

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タカラトミーが展開する玩具シリーズゾイドではヘリック共和国軍が開発した翼竜型大型戦闘爆撃機。

第一次中央大陸戦争時代の飛行ゾイドとしては最強クラスの能力を誇ります。

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『ファイナルファンタジーIX』のサラマンダーは天涯孤独の武闘家。

断章クエスト「焔色のサラマンダー」で仲間に加わります。

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サラマンダー まとめ

実在する生物であっても、架空のドラゴンであっても、

ゾイドやポケモン・FFにも登場するサラマンダーはある意味動物園にしかいない珍しい珍獣なんかよリもずっと実在感があるかも。

我々、FFやポケモンで大きくなった世代にはサラマンダーと聞くだけで炎を操る何者かを連想しますもんね。

 



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