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神話の中では、自らが侵した罪ではないのに、花や星になってしまう悲しい運命をむかえた者たちがいます。
このミノタウロスもその中のひとり。人肉を食らう怪物ではありますが、経緯を辿れば可哀相としか思えない。そして、その最期も英雄に倒される末路をむかえます。
そんなミノタウロスの生涯とは。
目次
半人半牛の怪物・ミノタウロス
ミノタウロスはギリシャ神話に登場する、巨大な牛の頭と人間の身体を持つ怪物です。
ミノタウロスは、クレタ島のミノス王の妻・パーシパエの子どもで、その誕生は海神・ポセイドンがミノス王に美しい牡牛を贈ったところまでさかのぼります。
ミノタウロスの誕生
ミノス王は、先代のクレタ島の王が死亡すると、「次の王は、長子である自分だ」と主張しましたが、弟・サルペードーンは納得せず、争いになりました。争いには勝ったものの、ミノス王は不安定な王権を強化するため、ポセイドンに「海から牡牛を贈ってほしい」と願います。
ポセイドンはこれに応えたものの、「あとで生贄として捧げる」という条件つきでした。
しかし、牡牛があまりにも美しく、返すのが惜しくなったミノス王は約束を破り、牡牛を自分のものにし、別の普通の牡牛を生贄に捧げます。
これに怒ったポセイドンは、罰として、ミノス王の妻・パーシパエに「牡牛に欲情する」という呪いをかけました。
悩んだパーシパエは、ミノス王お抱えの発明家でイカロスの父ダイダロスにこのことを相談します。
ダイダロスは、内部が空洞の木製の牡牛の模型を作り、パーシパエはその中で牡牛と交わりました。
ミノタウロス、人肉を喰らう怪物
こうして生まれたのが牛の頭を持った、半人半牛の怪物でした。
子どもは、星や雷光を意味する「アステリオス」と名付けられましたが、「ミノスの牡牛」を意味する「ミノタウロス」と呼ばれることになります。
ミノタウロスは食人種であり、非常に凶暴でした。ミノス王はこの怪物を処分することができず、ダイダロスに命じて、迷宮 (ラビュリントス) を築かせます。
この迷宮は一度入り込んだら最後、生涯出られないような複雑に入り組んだ作りになっていました。
そして、ミノタウロスと不義を働いた妻・パーシパエ、パーシパエに協力したダイダロスを迷宮に閉じ込めました。
ミノス王は、食人種であったミノタウロスの食料のために、支配下にあったアテナイに9年ごとに7人の美少女と美少年を生贄として差し出すように要求します。
その3度目の生贄として志願したのが、英雄・テセウスです。
テセウスとミノタウロス
迷宮に入るにあたり、テセウスは自分に恋したミノス王の娘・アリアドネの協力をあおぎます。
迷宮の奥でミノタウロスを見つけたテセウスは、拳でこの恐ろしい怪物を倒します。
迷宮は糸をつたって脱出し、生贄に捧げられた少年少女たちを解放。
ちなみに、テセウスと結婚の約束をしたアリアドネですが、テセウスと共にクレタ島を出たあと、途中でナクソス島に置き去りにされます。
それを見ていた酒の神・ディオニュソスが彼女を見初め、アリアドネはディオニュソスの妻になりました。
また、ミノタウロスの父であるクレタ島の牡牛ですが、この牡牛はやがてヘラクレスによって捕らえられることになります。
ヘラクレスの12の功業の7番目の功業。美しいですが、極めて凶暴であった牡牛をヘラクレスは素手で倒し、やがて放たれました。
ミノタウロス、創作作品でも知名度はバツグン!
ゲーム「Fate/Grand Order」では、本名であるアステリオスとして登場。
何も知らないまま、生まれながらにして怪物として扱われたアステリオスは、初めて自分の名前を呼んでくれた女神・エウリュアレに信頼を寄せます。
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漫画『ONE PIECE』では、海底監獄・インペルダウンの獄卒として登場。騒ぎを起こした囚人には武器の棍棒で容赦ない制裁を下す、ホルスタインの外見を持つ能力者です。
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藤子不二雄の初の大人向け読切漫画『ミノタウロスの皿』。宇宙船の事故で地球によく似た牛に酷似した種族が支配する惑星に緊急着陸した主人公。その星は人間に酷似した種族を家畜として育てている、牛と人類が逆転したような惑星。この作品は短編漫画、アニメ化もされています。
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ミノタウロス まとめ
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この物語の中で誰が罪を犯し、罰を受けるべきなのかを考えました。
結論は、遡ってゆけばポセイドンとの約束を破ったミノス王。受けた罰は妻に裏切られ、失ったこと。
多分、ミノス王は不貞をはたらいた妻を愛していたのでしょう。そう思いたいです。
でないと、化け物に生まれて殺されてしまうミノタウロスがうかばれません。