出典:deviantart
イブリーズはキリスト教のサタンと同一視されるイスラム教の悪魔の王。
神(アラー)に抗ったため地獄に堕とされサタンになった、キリスト教のルシファーのような存在。
なんとなく凶暴な悪魔のイメージがありますが、伝承の中で天使ともジンとも称されています。
そこで、精霊(ジン)か、天使か、悪魔か
そのイブリーズのさまざまに伝わる由縁を探ります。
意外とも思えるイブリーズの正体とは
目次
イブリース、神(アラー)に抗った、天使でジン(精霊)の悪魔

1415–16年
イブリースとは
イブリ-ス(Iblīs エブリス)は超自然的な存在(精霊)とされる、イスラム教で最も重要視される悪魔です。
クルアーン(コーラン イスラム教の聖典)ではシャイターン(サタン)として語られるシャヤーティン(悪魔族)の長。
炎から生まれたジンの長です。
イブリース(إِبْلِيس)の名はアラビア語のbls(ب-ل-س)「悲しみにとどまる」に由来します。
コーランでのイブリース(シャイタン)の物語は、キリスト教の『アダムとイブの生涯』と並行。
アダムにひれ伏すことを拒んだ天使・イブリース(サタン)は神の怒りにふれ、地獄へ落とされることになります。
イブリースの誕生
イスラム教において、天使(マラーイカ)は光から、ジンは炎から創造された存在。
また、慈悲の天使は光から、懲罰の天使は火から創造されたともされます。
そして、イブリースは神が火から創造した天使。
アダムが創造される以前、ジンが地上に堕落を広めました。
イブリースはもとは火から創造された、アザジル(アル・ハリス)という名前の天使。
地上の悪しきジンの討伐のために遣わされ、ジンを山に追い払います。
勝利に酔うアザジルは、人間や全ての天使よりも優れていると確信するようになります。
イブリ-ス、神に逆らった天使

『アダムに顔を背けるイブリース』ファリード・アッディーン・アートール作『鳥たちの会議』1494年
コーランの7つのスーラ(章)でイブリース(シャイターン)が語られています。
アダムが創造される以前のイブリースは敬虔なジンであり、天使でした。
けれど、神は人間であるアダムを創造。
すべての天使とイブリースにアダムにひれ伏すように命じます。
イブリースを除くすべての天使が従いましたが、イブリースはそれを拒否。
粘土で造られたらアダムより、火で造られたイブリースの方が優れていると主張します。
神は怒り、イブリースを楽園から追放、シャハンナム(悪行者が罰を受ける地獄)に堕としました。
その後神はイブリースを許し、カーフィル(イスラムの神を信仰しない、恩知らずの不信心者)とし、人間を惑わす使命を与えました。
アル・シャイターン(サタン 悪魔)になったイブリースは、アダムとイブに禁断の果実を食べさせました。
イブリースは地獄で鎖につながれ、配下の悪魔たちを地上に放ちます。
審判の日、イブリースに惑わされた者はジャハンナムの業火に焼かれることになります。
ジン(精霊)か、天使か、悪魔か。 イスラム教のイブリ-ス(シャイターン)とキリスト教のサタンの違い

スラムの悪魔 シヤ・カレム作 トプカプ宮殿
イスラム神学では、天使(マラーイカ)、ジン、悪魔(シャヤーティン)の、目に見えない3種の存在を認めています。
アダムにひれ伏すことを拒み地獄に落とされたイブリーズは、イスラムの伝統においてもアッ=シャイターン(サタン)と同一視され、「アル=ラージーム」(呪われし者)という称号が与えられています。
けれど、この両者には
️キリスト教のサタンは、神と人間に敵対する存在になった
に対し
️イスラム教のイブリースは、後に神に許され、人間を惑わす使命を持った存在になった
という違いがあります。
そのため、神に許されたイプリースの存在についてさまざまな見解があります。
⚫︎人間を惑わす使命を持った天使である
⚫︎人間を惑わす存在であるジンの長である
けれど、イブリースは不死の存在であるのに対し、ジンは不死ではありません。
シャヤーティン(悪魔)は審判の日まで不死とされますが、完全なる邪悪な存在。
この見解において、ジンの父はアル・ジャンで、イブリースはシャヤーティンの父とされています。
⚫︎悪魔としてイブリース
イプリースはアブー・アシュ・シャヤーティン「悪魔の父」とも処されます。
これは悪の元凶ではないものの、「誘惑者の祖」を意味しています。
シャヤーティンは通常イブリースという存在に付けられる「誘惑者」の役割を示しています。
また
イブリースは
⚫︎悪魔ではなく、「真の一神教徒」(タウイード・イブリース)ともされます。
これは、イブリースは創造主にのみ頭を下げる存在(その創造物には頭を下げることはなかった)ことに由来しています。
イブリース、怪獣、天使、悪魔、神姫、現代でも多様なキャラで登場
2008年発売のライトノベル『イブリース―反逆の天使たち』のイブリーズは人間を滅ぼそうとする神に抗うために一人の少女に造られた人造人間。成人向け官能小説になっています。
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イブリーズはウルトラマンシリーズの怪獣としても登場しています。
『ウルトラマンコスモス』では角のある悪魔、まんまなウルトラ怪獣イブリーズが楽しめます。
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「青の祓魔師」のイブリーズは「光の王」ルシフェルに憑依体を与えられた、虚無界(ゲヘナ)の悪魔たちの王「八候王(バアル)」の一人である「火の王」
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『神姫プロジェクト』のイブリーズは組織を壊滅させたテスタメントへの復讐を目論む、一大組織を作り上げた神姫。
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イブリース まとめ
出典:deviantart
人間界にもイブリースのような、人を惑わす存在は有象無象に蔓延っています。
彼らあるいはそれらも、神の試練を与えていると解釈すべき?😅
審判の日、地獄の業火に焼かれないよう精進しなければ。
けど、まあ、軽い堕落なら改心すれば救われるようですが。。。
なんにしろ、イブリースには関わらないよう注意せねば💦


