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ジャック・オー・ランタンはハロウィンには欠かせないアイテム。
実は単なる装飾アイテムではなく、アイルランドやスコットランドで伝承される正真正銘のお化けです。
そこで、ハロウィンに登場するナルホドな由来のご紹介です。
ジャック・オー・ランタン、その正体とは
ジャック・オー・ランタン、ハロウィンには欠かせない存在
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ジャック・オー・ランタンとは
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ジャック・オー・ランタン(jack-o'lantern)(日本語では「提灯(ちょうちん)ジャック」)は、かぼちゃで作られたランタン。
怪炎、あるいは光る衣装をまとったかぼちゃ頭の妖怪をいいます。
元は泥炭地の上で発光する奇怪な光、イギリスの民間伝承にある『ウィル・オ・ザ・ウィスプ』、一種の鬼火をいう名として使われていました。
路地や湿地などに現れ、夜道を行く者を道に迷わせ、ドブや泥沼へと誘い込みます。
ハロウィンに現れるジャック・オー・ランタンはケルト圏で伝えられる物語「ケチなジャック」に由来します。
ハロウィンの日にカボチャを彫って作る習慣は、アイルランド、スコットランドなどで根菜を用いる伝統が米国に渡ったことで生まれています。
ウィル・オ・ザ・ウィスプ
ウィル・オ・ザ・ウィスプ( will-o'-the-wisp)は上空に光る大気の幽霊。
夜の湖沼や墓場などに出没する、日本でいう鬼火の一種です。
ラテン語ではイグニス・ファトゥース(ignis fatuus)「愚かな火」。
地域や国によって様々な呼称で語られ、「ジャック・オブ・ザ・ランタン」もそのひとつ。
その正体は、生前罪を犯したために現世(あるいは煉獄)を彷徨う魂であるといわれます。
ウィル・オ・ザ・ウィスプの伝承
悪人ウィルは遺恨で殺され、聖ペテロに地獄に落とされそうになります。
ウィルは言葉巧みにペテロを説得、再び人間界に生まれ変わります。
けれど、その生涯も悪行を重ねて死亡。
再び訪れた死者の門で聖ペテロに「地獄へ行くことも叶わぬ」と拒否され、煉獄を彷徨うことになります。
それを見た悪魔が、地獄の劫火から燃える石炭をひとつウィルに与えます。
こうしてウィルの光は鬼火として恐れられるようになり、ウィルは出会った旅人を沼地に誘い込む怪物となります。
ジャック・オー・ランタンの語源
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ジャックやウィルは不特定の男性を指す名。
17世紀の英国では、名前のわからない男性を総称して「ジャック」と呼んでいました。
つまり、ジャック・オー・ランタン(jack-o'lantern)は「ランタンを持つ見知らぬ男」を意味します。
「ジャック・オー・ランタン」はアイルランド伝説にある「けちなジャック」に由来しているとされます。
悪魔を騙したため地獄に入れず、くり抜いたカブを道しるべに地上をさまよう酔っ払いのけちなジャックの物語。
別名「スティンギー・ジャック・オー・ランタン」「ジャック・ザ・スミス」「酔っぱらいジャック」「フレーキー・ジャック」とも呼ばれます。
ジャック・オー・ランタンの起源
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けちなジャック
けちなジャックはアイルランドの民話です。
昔、ジャックという名のずる賢くけちな男がいました。
あるハロウィンの夜、悪魔が現れ彼の魂を取ろうとします。
酒好きのジャックは悪魔に「魂を渡すけれど、最期に酒を飲ませてくれ」と、最後の一杯の代金を払うコインに変身するよう頼みます。
悪魔がそれに応じると、ジャックはコインになった悪魔を十字架で財布に封じ込めてしまいます。
悪魔は解放される条件でジャックにさらに10年の命を与えます。
10年後悪魔は再びジャックの前に出現。
ジャックは観念し、「最後にあの木のりんごが食べたい」と持ちかけ、悪魔を木に登らせ、その幹に十字架を彫って降りられないようにします。
悪魔は十字架を取り除くことと引き換えに魂を取らないことを約束します。
そして死期を迎えたジャックは当然天国には入れず、地獄に行こうとしますが、そこでも悪魔に地獄に入ることも許されません。
悪魔は、暗く冷たい闇を彷徨ために地獄の炎のをひとつを彼に与えます。
ジャックはそれを彫ったカブの中に置き、ランタンにしました。
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スティンギー・ジャック(酔っ払いジャック)
スティンギー・ジャックは18世紀のアイルランド民話。
昔、スティンギー・ジャックと呼ばれる酔っぱらいがいました。
彼は詐欺師で策略家として知られていました。
悪魔はジャックの悪行を耳にし、ジャックがその悪名通りの人物であるかを確かめに行きました。
ある夜、酔ったジャックは道に倒れた死体に出会います。
その死体は悪魔。
ジャックは悪魔が彼の邪悪な魂を奪いに来たのだと悟ります。
そこで、「最後にたらふくビールが飲みたい」と悪魔に願います。
そしてコインに変身した悪魔を十字架の入ったポケットに封じ込めます。
封じ込められた悪魔は10年間の命と引き換えに解放。
10 年後、再び現れた悪魔に今度は最後の願いのりんごを所望。
リンゴの木に登った悪魔を根元を十字架で囲んで降りられなくします。
そして、悪魔はジャックの魂を奪わないという約束で解放されます。
その後、ジャックは飲酒が原因で死亡。
けれどジャックの魂は聖ペテロの門で天国に入ることを拒まれます。
神に「欺瞞と飲酒という罪を犯したジャックは天国に入ることは許されない」と告げらます。
仕方なくジャックは地獄の門に降り、冥界に入る許しを乞います。
けれど悪魔は、彼の魂を奪うことはできないと拒否。
ジャックに道を照らす地獄の残り火を与えます。
ジャックはくり抜いたカブに入れた残り火を頼りに、善と悪の間を彷徨う魂となります。
元はかぼちゃじゃなかった? ジャック・オー・ランタン
ハロウィーンの時期にジャック・オー・ランタンを作る習慣は、アイルランドやスコットランドで始まったもの。
ランタンのカボチャは本来は白いカブ、マンゲルヴルツェル、ルタバガの根菜などでも作られていました。
それも本来は、故人の白い頭蓋骨を使用していたと考えられています。
現在でも中南米には、故人の頭蓋骨の中にろうそくを灯します。
これは、頭蓋骨に光がともることで、故人の魂が宿ったとするというもの。
故人を迎え、家族で祝う風習が残されています。
カボチャを彫って作るジャック・オー・ランタンは、アイルランドやスコットランドの移民が、かぶなどの根菜を彫る伝統を米国に伝えたことで浸透してゆきました。
現在でもスコットランドなどでは、ジャック・オー・ランタンをカブで作る地域があります。
ハロウィンとジャック・オー・ランタンの関係は
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ハロウィンはケルト民族のサウィン祭が始まり。
冥界の門が開き、「この世」と「あの世」の境目がなくなる日。
日本でいう「お盆」行事です。
この日、あの世からたくさんの悪霊がやってくるといわれています。
ジャック・オー・ランタンは、その悪霊を追い払うためのもの。
玄関に灯したジャック・オー・ランタンの光は、悪霊が家の中に入ってこられなくします。
また同時に、ジャック・オー・ランタンの光は「あの世から帰ってきた祖先の霊が迷わないように」という祖先の霊を迎える「迎え火」の役割も果たします。
ジャック・オー・ランタン、現代では堂々の癒し系キャラ
映画の中のジャック・オー・ランタン
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は1993年公開、ティム・バートン制作のミュージカルアニメーション。
「クリスマスタウン』に憧れる主人公のジャック・スケリントンは外見は不気味でも明るくて優しい骸骨男。
「ハロウィン・タウン」の住民たちからは「かぼちゃ畑の王(パンプキンキング)」と呼ばれる人気者です。
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1986年公開の『オズ /Return to Oz』は1939年公開の『オズの魔法使い』の続編。
ジャック・ザ・パンプキンヘッドは再びオズの国を訪れたドロシーの新たな仲間として活躍します。
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お子ちゃまに人気の
『ポケットモンスター』のバケッチャは成仏できずに彷徨う魂を取り込んで、死者の世界へ運ぶカボチャのお化け。
取り込んだ魂のエネルギーを吸収して大きさが変わるのが特徴。
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『それいけ!アンパンマン』のハロウィンマンは空を飛び、魔法も得意なカボチャ頭に黒マントをまとったかわいいお化け。
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おまけ
ちなみに
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉は大の酒好きで天国からも地獄からも受け入れを拒否されている、ジャック・オー・ランタンのようなおっさん
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ジャック・オー・ランタン まとめ
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日本で観るハロウィン映画の家々は皆、美しい装飾で飾られています。
なるほどその主役はジャック・オー・ランタン。
悪霊を入り込めなくする必須アイテムなのですね。