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ホルス、太古からのエジプト神。太陽と月の目を持つハヤブサの天空神

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出典:deviantart

ホルスはオシリスとイシスの息子というイメージが定着していますが、それ以前、紀元前の何千年に渡り、太陽と月を両目に持つ偉大なる天空神として崇められています。

その壮大な神々の概念はもう想像の域を超えてしまっています。

その偉大なるエジプト神、ホルスのご紹介です

ご覧ください。

 

 

ホルス、多様な神格を持つ太古からの偉神

ホルス(Horus)は多く神格を担った最も重要な古代エジプト神の一柱

特に王権、太陽、天空を司る神として知られています。

 

ヤブサの頭、太陽と月の目を持つ男神

最古から最重要視されるエジプト神の一柱であるため、時代と共に多様化され、多くの名と神格を持つ神として語られています。

「ホルス」(Hōrus)という語は、エジプト語の「顔」を意味する「ホル」や「上にあるもの」を意味する「ホル」が由来だという説があります。

他説、上・下両エジプトの大半を征服した民族の地域神の名前と姿であるともされます。

 

先王朝時代 (紀元前 6000 ~ 3150 年頃) から古代エジプト王朝の末期 (紀元前 600 年) まで崇拝される、戦争と狩猟の神でもありました。

 

最古のホルスは、上エジプトのネケンの氏神であり、ファラオの力と権威を体現した存在。

やがてシリス神話に取り込まれ、イシスとオシリスの息子となります

また、天空を司る女神ハトホルの子、あるいは夫ともなっています。

 

古代エジプトに作成された葬礼文書『死者の書』にはメジェドという名の冥界の危険から死者を守る神として登場、あるいは同名の同一視されるホルス神が語られています。

 

また、同名のホルスで神格と役割が異なる神が二柱存在したともされます。

太陽神ラーの息子とオシリスとイシスの息子、時代を経て同一視され習合されたものとも解釈されています。

 

ホルスの容姿

ホルスはハヤブサの頭を持ち太陽と月の両目を持つ成人の男神

生者の暮らす地上の王である象徴として上下エジプトの冠を被り、正装のファラオの姿をしています。

初期は、ハヤブサそのものの姿でしたが、後に人間の姿で表されるようになります。

母イシスと共に「幼児のホルス」として完全な子供の姿で表されるものも残されています。

けれど、その多くは王位の奪還者、あるいは地上の王として頭部がハヤブサの男性で表されます。

 

初期(太古)のホルス

古代、神の姿をしたハヤブサのホルスの右目は力を表す太陽であり、左目は癒しを表す月

ホルスは王朝時代の黎明期には既に存在していたと考えられています。

紀元前31世紀、エジプト第1王朝の創始者で最初の王ナルメルの遺品の中には王の傍らに鷹の姿が描かれており、これがホルスの原型と考えられています。

 

ホルスの目

ホルスは古代エジプトのシンボル「ウジャトの目」を持つ神

ウジャトは原初のエジプト神の一柱。太陽神ラーと深い関わりを持ち、その目はラーの力の延長であり、太陽の円盤と同一視されています

 

エジプト人はホルスは天空であるため、太陽と月も含まれると考えます。

太陽が右目で月が左目、ハヤブサであるホルスが翔るとき、太陽も月も空をめぐると考えます。

 

ウェジャトあるいはホルスの目は、「死後の世界で王を守る」 「悪を追い払う」ことを目的としており、後に雌ライオンの戦士の女神バステト、母なる女神ムト、天空の女神ハトホルとも関連付けられるようになりました。

 

エジプト神話の中でホルスはセトとの戦いで左目を失い、天空と豊穣の女神ハトホルの魔法によって修復されています

これによって、その目は治癒を象徴するもの、保護、健康、回復を表すシンボルとなります。

 

ちなみに月が太陽ほど明るくない理由は、上エジプトの守護者であるセトと下エジプトの守護者であるホルスが戦い、神々がホルスについたためと解釈されます。

 



ファラオとホルス

古代エジプトにおいてホルスはファラオの象徴

ファラオはホルスの化身、地上で生きる神と認識されていました。

ファラオはしばしば「生きたホルス」と呼ばれ、その守護者であるホルスと同一視されます。そのため、ファラオが様々な神の名前を自分の即位名とすれば、ホルスも同時に様々な姿に変わってゆきます

ギザのピラミッドの建造者クフの息子ジェドエフラーは「ラーの息子(太陽神ラーのごとく永遠なる者)」を名乗ったため、ホルスはラーの息子となります。

 

多数のホルス、ホルスの変遷

ホルス神は太古から重要視される神であったため、時代とともにその姿も異なるホルス神として変化してゆきます

また地域によってホルス神への信仰も異なり、別のホルス神として存在した。それが後世になり、全てのホルスが習合されたということもあり、多くのホルス神が存在、あるいは多くの名を持つ神として語られることになります。

 

王朝初期において、王はホルスの化身とされています。

その後太陽神ラーが最高神となり、ホルスはラーの息子、「神そのもの」から「神の息子」へと変化します。

そして、王がオシリス神と同一視されたことにより、ホルスはオシリスの息子となります。

オシリス神話の中でのホルスはオシリスの後継者で、オシリスを殺害したセトとの対決に至ります。

 

そのホルスの変遷は大きくは太陽と月の目を持つ大ホルス、オシリス神話で語られる小ホルスに別れます。

 

大ホルス

🔸ハロエリス「大ホルス」「長老ホルス」

地域の神と習合された初期のホルス

目に太陽と月を持つ天空神

大地の神ゲブと空の神ヌトの息子、あるいは天空の女神ハトホルの子、真実と正義の女神マアトの擁護者あるいは子としてその役割を果たします。

またはハルウェルという名の太陽の神格を持つ光の神でもあります。

 

🔸ホルス・ベフデティ「エドフのホルス」

上エジプト、ナイルの西岸の街ベフデトでのホルス。

ハヤブサの頭をもつ人間の姿をした神

敵と戦うファラオの守護神として信仰され、セトを倒すラーの息子となります。

 

🔸ホルアクティ「地平線のホルス」

この名のホルスは、ケプリ(日の出のラー)と創造神アトゥムの役割を担う、ハヤブサの頭をもつ男神

朝は東から昇り西に沈む、地平を渡るラーと同一視されています。

 

🔸ハルマキス「地平線を見下ろすホルス」

ケプリとも関連づけられる日の出の太陽、復活を象徴する神

人間の頭を持つスフィンクス、あるいは獅子の体とハヤブサの頭と翼を持つ神、獅子の頭を持つヒエラコスフィンクスとして描かれ、多くの知恵を備えた神として崇拝されます。



小ホルス

小ホルスはオシリス神話の中で語られるホルス

第 1王朝(紀元前2925 年頃〜紀元前2775 年頃) 以降、ホルスとセトは、永遠の敵対者として語り継がれています

 

紀元前2350 年頃オシリス信仰が高まる時代、ホルスは太陽神としての神格がオシリスの子となり、同化したものと考えられています。

ホルスはオシリスとイシスの息子、セトの甥となります。

セトがオシリスを殺害し、ホルスはセトの敵となりセトを撃ち破ります。

この戦いで、ホルスの左目(月)は損傷を受け、知恵の神トート神によって治癒されています。

 

🔸ハルシエシス「イシスの息子ホルス」

冥界の神オシリス、豊穣の女神イシスの間の子。..

父の仇を討ち、上・下エジプトの主神となります。

配偶神はハトホル、あるいはイシス。

ハトホルとの間に音楽の神イヒ、イシスとの間には「ホルスの4人の息子」イムセティ、ドゥアムテフ、ハピ、ケベセヌエフをもうけます

 

🔸ヘル・パ・ケレド(ハルポクラテス)『子供のホルス』

指をしゃぶり、頭の右側に若さの印である一束の髪を垂らし、上・下エジプトの王冠を被るホルス

昇る太陽、その最初の光を表します

また「子供の守護者」としての信仰も集めます

 

🔸ホルサイセ・ハルポクラテス

母神イシスの膝に乗った幼児のホルス

後に聖母マリアに抱かれた幼いキリストのイメージに転用されたと考えられています。

 

🔸ホルス・ベフデティ

セトと戦いに勝利したホルス

翼のある太陽神ホルスは永遠の魂の象徴となります。

 

🔸ラー・ホルアクティ「地上のホルスたるラー」

ホルス・ベフデティがラーの太陽円盤の姿で表現され、戦場のファラオの頭上を飛ぶハヤブサともされたことからホルスとラーは同一視されます

 

ホルスの誕生

ホルスは、セトに殺害されバラバラにされたオシリスの体を女神イシスが回収した後、オシリスとイシスの間に生まれました

イシスは魔法の力を使って子を宿すのに充分な体を持ったオシリスを復活させ、ホルスを妊娠

その神話によって、ホルスは死を超える生の力の具現化として認識されます。

そして、父の跡を継ぎ現世の統治者となります

 

ホルスの家族

両親

  • オシリスとイシス
  • オシリスとミイラとオシリス神の守護者ネフティス
  • 愛と豊穣の女神ハトホル

兄弟

  • 冥界の支配者アヌビス
  • ラーと王の守護者バステト

  • 天空神ハトホル
  • 運命を司る女神イシス
  • 蠍を神格化した治癒の女神セルケト
  • ミイラとオシリス守護神ネフティス

  • 音楽の神イヒ
  • ホルスの四人の息子 死後の世界で死者を守るイムセティ、ドゥアムトエフ、ハピ、ケベフセヌエフ

 

ホルスの4人の息子たち

ホルスの4柱の息子たちはイムセティ「ディルの者ドゥアムトエフ「母親を称賛する者」、ハピ「速攻の者」、ケベフセヌエフ「酒によって弟を清める者」

後の世界で死者を守る、亡くなった王を助ける役割を担います。

エジプト史の第 1 中期、古王国時代の終焉後「暗黒時代」(紀元前 2181 年〜2055 年頃)と呼ばれた頃、死者の体から摘出された内臓を収めた4 つのカノプスの壺と関連して語り継がれています。

ムセティは肝臓、ハピは肺、ドゥアムテフは胃、そしてケベセヌエフは腸を保護しているといいます。

 

中王国時代(紀元前2055 年頃 - 1650 年頃)には棺文書(古代エジプトの棺に書かれた葬儀の呪文を集めたもの)の一節に、彼らがイシスの子孫であり、長老ホルスとしてのホルスの一種であると記載されています

 

新王国時代後期(紀元前1550 ~ 1070 年頃)以前は人間として描かれていましたが、以降、インセティが人間、ハピがヒヒ、ドゥアムテフがヒヒあるいはジャッカル、ケベセヌエフがハヤブサとして描かれ、空の星、方角と結びついた神として信仰さてるようになります。

 

ホルスとセトの対立

セトとホルスの戦いは、上エジプトの守護者であるセトと下エジプトの守護者であるホルスが王権を巡って戦うというものですが、この「王位争い」は歴史的にも実在しています。

上エジプトと下エジプトの有力者が争い、下エジプトのホルス側の勝利に終わっています。

 

物語の中でホルスは母イシスから、ホルスの父オシリスを殺した砂漠の神セトからエジプトの人々を守るよう命じられます。

 

その戦いでは、まずセトはホルスを誘惑し、性交することで自分の優位性を証明しようとします。けれど、ホルスは手でセトの精液を受け止め、川に捨ててしまいます。

その後、ホルス(あるいイシス)は、セトの好物のレタスに自分の精液を塗り言葉巧みにセトに進呈。

セトがレタスを食べた後、彼らは支配権の問題を解決するために神々にその採決を委ねます。

神々はまず、セトの主張に耳を傾け、彼の精液を呼び起こします。精液は川から答え、彼の主張を無効にしました。

そして次にホルスの主張を聞き彼の精液を呼び出すと、セトの体中から答えが返ってきます

 

けれどその採決に従わないセトは80年以上の戦いを続けます。

そして、最終的に両者は石でできたボートレースでその決着をつけることに同意。

けれどホルスの船は実は石に似せて塗装された木で作られていました。

セトの船は重い石でできていたために沈んでしまい、ホルスの勝利となります。

ついにセトは敗北を認め、ホルスにエジプトの王位を与えます

王になったホルスはオシリスを冥界で蘇らせ冥界の王とし、セトは依然として砂漠とそのオアシスの支配者として君臨しています。

 

ちなみにこの戦いで、セトは睾丸を失い、ホルスの目はくり抜かれました

 

 

女王になる、魔神になる、現代でも変幻自在なホルス

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ホルス まとめ

出典:deviantart

個人的には太古の人々が動物を神と崇め、自然を崇拝し、精霊の存在、死後の世界を信じたことが抵抗なく納得できます。

むしろ、人間が不自然に増えすぎ、傲り、他の生物や自然を破壊し絶滅に追いやる現代の方が不自然な状態なのだろうと思います。

そして近い将来そのことの罰を受ける、人類の世紀末を迎えるとしてもそれは無理からぬことなのかもしれません。

 

 

 

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