出典:deviantart
日本でも古いものだと1978年には堺正章さん、2006年には香取慎吾さん主演でドラマ化された「西遊記」。
本場中国の西遊記は今だに人気の題材、様々な西遊記がドラマや映画化されています。
そこで西遊記の起源や、メンバーの知られざる過去、日本と中国の違いなどについても探ります。
意外な新事実があらわになるかも?
目次
西遊記とは
出典:deviantart
西遊記は、唐の法師、玄奘(げんしょう)三蔵が孫悟空・猪八戒・沙悟浄のお供を従えて、天竺(インド)までお経を取りに旅をする冒険譚。
中国で16世紀の明の時代に成立した伝奇小説です。
作者は当時の役人であった呉承恩と伝えられていますが、明確には不明。
「三国志演義」「水滸伝」「金瓶梅」と並んで、「中国四大奇書」の中の一作です。
西遊記の誕生
西遊記は7世紀の唐の高僧、玄奘による天竺への取経の旅という史実をもとに作られています。
玄奘は(602年生 - 664年没)実在した訳経僧(やっきょうそう 経典の翻訳に従事する僧)。俗名-陳禕(チンイ)、尊称-法師・三蔵。
629年にインドに旅立ち、645年に経典657部を持って帰還しています。
この史実は唐時代の末期には早くも伝説化され、宋代の講談や芝居の題材となります。
南宋末には西遊記の原型となる『大唐三蔵取経詩話』が編纂され、孫悟空の前身猴行者 (こうぎょうじゃ)や沙悟浄の前身深沙神(じんじゃしん)が登場。現存する最古のものは元代の西遊記、朝鮮の書『朴通事諺解』。ここでほぼ西遊記の物語が出来上がります。
明の中期には『西遊記傳』、『唐三藏西遊傳』のなかで、孫悟空を中心とするファンタジー大作が集大成されます。
西遊記の内容
出典:deviantart
西遊記は大きく分けて四つの部分から構成されます。
- 孫悟空の誕生、美猴王となり、天界で暴れ、五行山に封じられます
- 玄奘が取経の僧となり、観音より贖罪のために天竺へ参ることを約束させられていた孫悟空・猪八戒・沙悟浄・玉龍と共に旅立ちます
- 玄奘一行は天八十一の難と対峙。妖仙との戦いながら取経の旅を続けます。
- 苦難の末天竺にたどり着いた玄奘一行は、如来から経を取得。共たちも罪を許され、天界において三蔵は旃檀功徳仏(せんだんくどくぶつ)、悟空は闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)、八戒は浄壇使者(じょうだんししゃ)、悟浄は金身羅漢(こんしんらかん)、玉龍は八部天竜(はちぶてんりゅう)となります。
「西遊記」のあらすじ
出典:deviantart
花果山の石から生まれた石ザルは、美猴王(びこうおう) と名乗り、400年間、サルの王となって楽しく暮らしていました。
美猴王はある日「仏と神と仙人は死なない」と聞き、仙人に弟子入りし、仙術を学び、不老不死と孫悟空という名前を授かります。
孫悟空は、72通りの変化の術を覚え、長さが自由自在に変わる如意金箍棒 (にょいきんこぼう、通称:如意棒) も手に入れます。けれど力を得た孫悟空の傍若無人な振る舞いは天界の目にとまり、釈迦如来の5本の指を変えた五行山に閉じ込められてしまいます。
500年後、下界の乱れを感じた釈迦如来は自分が持っている経典を立派な僧に託したいと思い、観音菩薩にそれにふさわしい人物を選ぶように命じます。観音菩薩はその人物に「三蔵」という名前を与え、旅に出るように命じます。
そして、元は天界の役人だったものの、天界の宝物である瑠璃の杯を落としたことによって下界に追放された妖怪と、元は天界の軍人だったものの、女神に手を出したことで追放され、下界であやまってブタから生まれてしまった妖怪を選びます。
そしてそれぞれに「沙悟浄」「猪悟能」という名前を与え、経典を運ぶ者の弟子になるよう命じます
旅に出た三蔵法師は、道中で五行山に封印されていた孫悟空、元は天界を追われた龍であり、罪を償うために馬となった玉龍、沙悟浄、猪悟能 (八戒) を仲間に加え、天竺を目指します。
法師一行のメンバーは
出典:deviantart
三蔵法師玄奘
作中での呼び名は三蔵法師。実際に存在した玄奘がモデルとされます。
三蔵とは経、律、論の教えに精通しているという意味。あらゆる経典を学び、人徳に優れ、人々から聖僧と敬われています。
かつては釈迦の二番弟子でしたが、釈迦の説法を侮ったために、下界に転生させられる罰を受けます。
人間界では生まれる前に父を殺され、母を奪われ、生まれてすぐに川に流され、金山寺で拾われ、成人します。
唐の皇帝の義兄弟となり、菩薩の命を受け天竺へ行くことを決意。
五行山で悟空を助け出し、鷹愁澗で玉龍、高老荘で八戒を、流沙河で悟浄を弟子とし共に天竺へ対立ちます。
孫悟空
孫悟空は傲来国花果山の仙石から生まれた石猿。400年間「美猴王」(びこうおう)と称し、猿の王として君臨します。
不老不死になるために須菩提祖師に弟子入り。孫悟空として修行し仙術七十二般の術と觔斗雲の術を習得。
妖仙達と義兄弟となり、自ら「斉天大聖」と称して天界で大暴れ。釈迦如来によって五行山に封じられます。
500年後、取経する玄奘のお供として、玄奘によって封印を解かれます。けれどこのとき、玄奘の企みで金の嵌った頭巾を被り、玄奘の指示に従わなければならなくなります。
猪八戒
猪八戒は豚の頭を持つ福陵山に住む妖仙。
元は天の川の水軍を統率する天蓬元帥でしたが、月の女神嫦娥(じょうが、こうが)をたぶらかしたために妖仙と化し天界を追われます。
人間界で雌豚の胎内に宿り、豚の妖怪となって人肉を食うようになります。
観音菩薩の慈悲を乞い、「五葷三厭」(野菜五種と犬・鴨・魚の肉)を食さない「八戒」を決意。
その後、商家に婿入りし、高翠蘭と結婚。
けれど、一行が立ち寄った際、孫悟空と戦う事になり、相手が取経者であることに気づき、二番弟子となります。
沙悟浄
沙悟浄は流沙河に住まう妖仙。天界では捲簾大将という軍人でしたが、天界の宝「玻璃の器」を壊して天界を追われ、流沙河で人を食らう妖仙となっていました。
飢えと寒さで人を襲うようなり、流沙河へやって来た三蔵一行に帰依し、三番目の弟子となります。
玉龍
玉龍は四海龍王の一人で西海龍王敖閏の第三子。父竜王の竜宮で宝珠を焼き、死刑にされるところを観音菩薩に救われます。空腹から玄奘の馬を食ってしまい、白馬に変身して玄奘の乗馬となります。
ここが違う!? 日本と中国の西遊記
出典:deviantart
沙悟浄は、河童じゃない!?
日本では河童として親しまれている沙悟浄ですが沙悟浄は、「川に住んでいる妖怪」と描写されているだけで、原作での容姿は、赤い髪に赤い瞳 (ただし、三蔵法師に弟子入りした後は剃っています) 、藍色は肌を持った妖怪です。
日本では、川に住んでいるという設定から、日本人にも分かりやすいように河童と解釈されたようです。
猪八戒は、ブタじゃなかった!?
今では、「猪八戒=ブタ」という共通認識がありますが、江戸時代などではイノシシと思われていました。
中国語では「猪」はブタのことを指しますが、日本では文字通りに解釈するとイノシシですよね。猪八戒をブタだと正しく訳されたのは、1931年が初めてでした。
世界観は受け継がれている? いろいろな西遊記
今だに人気の衰えない長寿マンガ「ドラゴンボール」では、「西遊記」をモチーフにした登場人物やアイテムが登場します。主人公の孫悟空はその名前の通りの孫悟空、ブルマが三蔵法師、豚のウーロンが猪八戒、ヤムチャが沙悟浄です。
ーーーーーーーーーーーー
禁じられた実験を阻止するために天竺へ向かう「最遊記」では、多くのキャラクターや設定が「西遊記」をベースにしています。ジープで移動していたり、現代のものが登場することも。
ーーーーーーーーーー
「西遊記 女人国の戦い」は2018年公開作品。本場中国の西遊記シリーズには、「はじまりのはじまり」や「孫悟空 vs 白骨夫人」、「妖怪の逆襲」など、アクション映画に定評のある面白み満載の大作がズラリ。どれも絶対におすすめの秀作です!
ーーーーーーーーーー
西遊記 まとめ
出典:deviantart
西遊記は、世界各国でさまざまなアレンジがされているそうです。
韓国では孫悟空がヌンチャクを武器にしたり、死亡したり、三蔵と恋愛したり。
ドイツとアメリカでは、美少女の観音菩薩と三蔵法師が恋愛しています。 ん? なんか想像しづらいけど、面白そう。