平等院鳳凰堂、金閣寺、1万円札など、名だたるところに飾られている鳳凰。
それもそのはず、鳳凰は良いことが起こる前触れとされる霊鳥。
徳の高い王の治世や優れた知性を持つ者の前にしか現われない特別な鳥なのです。
今回は、その鳳凰をご紹介です。
知名度は高くとも、意外と知られていない鳳凰の実態、ご覧ください。
目次
鳳凰、五色に輝く鳥の王
鳳凰は、中国神話に登場する聖鳥です。
中国、儒教の経典『礼記』で麒麟・霊亀・応竜とともに「四瑞」「四霊」として尊ばれた瑞鳥(ずいちょう めでたいことの起こる前兆とされる鳥)。
雄が鳳、雌が凰。
古代中国の薬学書『本草綱目』には羽蟲(羽毛のある生物)360種の王。
徳の高い王や優れた知性を持つ者が出現したときに現われると記されています。
仏教とともに伝来。日本でも瑞祥 (吉兆) として崇められています。
鳳凰の生態
鳳凰は、前部が麒麟、後部が鹿に似て、黒・白・赤・青・黄の5色の模様の羽根を持つといわれます。
その姿は五色に輝き、飛べば鳥達が後に従うところから鳥王と呼ばれました。
中国太古の地理書『山海経』(紀元前5世紀 〜3世紀)「南山経」では鶏に似ており、頸には「徳」、翼に「義」、背に「礼」、胸に「仁」、腹に「信」の紋があるとされます。
背丈は6尺 (約1.8m) ほど。
中国最古の詩篇『詩経』には「鳳凰鳴けり、彼の高き岡に。梧桐生ず、彼の朝陽に」「鳳凰は梧桐にあらざれば栖まず、竹実にあらざれば食わず」。
鳳凰は、霊泉だけを飲み、60-120年に一度実を結ぶ竹の実のみを食し、梧桐の木にしか止まらないといわれます。
鳳凰の卵は不老長寿の霊薬と伝えられ、鳳凰は沃民国(よくみんこく『山海経』に記される国)、また仙人たちが住んでいる崑崙山(こんろんさん中国古代の伝説上の山岳)に棲んでいると伝えられました。
中国の神話では、盤古が混沌とした卵の中身のような状態から生まれた時、麒麟・霊亀・応竜・鳳凰の四霊達も共に生まれ、盤古の天地創造の力とされたと伝えられています。
また、鳳凰は、死者の魂を迎え天上と運ぶ役目を担っているとされています。
中国の鳳凰と日本の鳳凰の違い
容姿も現代の中国や日本では違った解釈をされています。
現代の中国では
- 背丈は12-25尺 (なんと3.6m〜9m)
- 容姿は 頭が鶏、くちばしはオウム、首は龍、胴体の前部がおしどり、後部が麒麟、足は鶴、翼は燕、尾は孔雀とされます。
日本では
- 背丈は4-5尺(1.2m〜1.5m)
- 容姿は 頭とくちばしは鶏、首は蛇、胴体の前部が麒麟・後部が鹿、背は亀、アゴは燕、尾は魚であるとされます。
鳳凰と龍
中国において鳳凰と龍は共に幸福の化身であり、共に描くことで至福、吉祥、長久が増大するとされ、昔は天下太平に及ぶように常に龍と鳳凰が伴って描かれています。
「龍鳳呈祥」とは龍と鳳凰がもたらす以外には考えられないような繁栄を意味し、「人中龍鳳」は、人間の間に龍と鳳凰がいるかのような、優れた才能のある人を指します。
朱雀と鳳凰
朱雀は、古代中国で天の四方を司るとされる四神獣、玄武・青龍・白虎・朱雀の一神獣で、南方を守護する聖なる鳥。
五色の音色で鳴き、五色に彩られたウズラのような姿。 その翼は災厄を祓い、福を招くと伝えられています。
長生の神とされ、赤い翼を広げた鳳凰のような姿で表されます。
鳳凰の眷属として同一起源とする説もあり、同一視されることもあります。
その違いは鳳凰は四霊、朱雀は四神のひとつ。
朱雀は神格のある鳥で信仰の対象となるとされます。
鳳凰とフェニックス
鳳凰は西洋では「東洋のフェニックス」とも呼ばれるように、フェニックス (不死鳥) としばしば同一視されました。
しかし、
- フェニックスはオスのみで単独で生殖すること (鳳凰は雌雄存在)、
- 1度に1羽しかいないこと、
- 寿命を迎えると自ら火の中に飛び込んで焼死して新たによみがえること (鳳凰は卵から孵化、死亡したらよみがえらない) 、
などの違いがあり、全く同じ動物ではありません。
作品に描かれる鳳凰
鳳凰は、吉兆や愛情、権力、調和の象徴とされ、中国の芸術作品や調度品のいたるところでモチーフになりました。
日本には、古墳時代末期に中国から伝来し、その特別な意味合いから、中国と同じく絵画などに登場しています。
代表的ものが、平等院鳳凰堂や金閣寺の屋根にある飾りで、特に平等院鳳凰堂のものは、現在使われている1万円冊の裏にも描かれています。
創作作品では、鳳凰=フェニックスが定番
漫画『火の鳥』では、鳳凰をモチーフにした火の鳥が登場。さまざまな時代の登場人物たちの前に姿を現し、彼らに試練や助言を与えます。火の鳥は100年に1度、自らの身体を火で焼いてよみがえることで永遠に生き続けることができるため、フェニックスの要素もあることがうかがえます。
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漫画『聖闘士星矢』には、鳳凰星座の一輝という人物が登場しています。史上初の鳳凰星座の聖闘士で、実力は聖闘士の中でもトップクラスの不死身の男です。ちなみに、鳳凰星座と書いて「フェニックス」と呼びます。
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「陰陽師本格幻想」の鳳凰火はSRの式神。鳳凰火のパッシブスキル「烈火」の効果が絶大。
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「喧嘩番長 乙女」では伝説のヤンキー鬼ヶ島鳳凰として登場。
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「幽遊白書」の鳳凰は浦飯幽助の心をエネルギーとして生きる霊界獣「プー」
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「鬼灯の冷徹」の鳳凰は子供の姿で麒麟と一緒に薬局にやってくる中国の伝説上の瑞獣
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鳳凰 まとめ
鳳凰を含む四霊、龍、亀、麒麟達も紀元前から語り継がれる聖獣。
今更ながら中国の壮大な歴史に驚かされます。
けれど、鶏、蛇、麒麟、鹿、亀、燕、魚などといういろんな部位が一体になったその姿は、正直想像の域を超えていて、なんとも表現しがたいもののようにも思います。
徳の高い人の前にしか現れない鳳凰、お目にかかれそうにないのが残念です^^