日本神話の大国主は、葦原中国(あしはらのなかつくに) (地上世界)を作った偉大なる神様です。
今回はその大国主のご紹介です。
大国主は大国様として聡明さや温厚な性格、ご利益のある神とイメージされていますが、実は波乱万丈な人生をおくる神。
そんな偉大なる創造神大国主の隠れた一面、ご覧ください。
目次
大国主とは
大国主命(オオクニヌシ)は、地上の国・葦原中国を造りその主宰神として、天照大神の孫であるニニギのミコトに国を譲るまで、天下を治めます。
父は天之冬衣神(あめのふゆきぬのかみ)、母は刺国若比売(さしくにわかひめ)。
『日本書紀』では素戔嗚尊(すさのおのみこと)の息子、『古事記』ではスサノオの六代目の子孫とされます。
スサノオの娘で須勢理毘売命(すせりびめのみこと)と結婚後、少名毘古那神(すくなひこなのみこと)と共に国造りを行います。
民に呪術、医薬などの道を伝え葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めます。
その後アマテラスの使者ニニギノミコトに統治を譲り、冥界の主宰者となります。
別称
国譲の際には杵築大神(きづきのおおかみ)。
その他、
- 大穴牟遅神(おおなむじのかみ)、大穴持命(おおあなもちのみこ)― 稚児幼少の頃
- 葦原醜男(あしはらしこを)― 根国訪問を侮蔑する呼称
- 八千矛神(やちほこのかみ)―多くの矛盾を持つ神
- 大国魂神(おおくにたま-)―偉大な国の神霊
- 幽冥主宰大神 (かくりごとしろしめすおおかみ) - 冥界を治める神
などをはじめ多くの別名を持ちます
神格
大国主命は多くの神格を持ちます
大地を司る神、水神、商業神、豊作神、酒神、医療神、武神、雷神。
また、「大国」はダイコクとも読めることから大黒天と習合し、商売の神様として広く信仰を集めるようになります。「因幡の素兎」で大国主命が大袋を担いでいる事から、大黒天も袋を担ぐ姿で描かれるようになったとも伝えられています。
家族
彼の上には八十神(ヤソガミ)と呼ばれる多くの兄神がいます。
主な妻
- 須勢理毘売命(すせりびめのみこと 正室)須佐之男命の娘
- 多紀理毘売命(たぎりびめのみこと) 須佐之男命の娘で宗像三女神の長女
男子 阿遅鉏高日子根神(あじすきたかひこね の かみ)
娘 下照比売(したてるひめ の みこと)
- 神屋楯比売命(かむやたてひめ の みこと)
男子 事代主神(ことしろぬし の かみ)
娘 高照光姫命(たかでるひめ の みこと)
- 八上比売(やがみひめ)
- 木俣神(きのまた の かみ)
- 沼河比売(ぬなかわひめ)
- 建御名方神(たけみなかた の かみ)
- 鳥取神(ととり の かみ)
- 鳥鳴海神(とりなるみ の かみ)
子供の数は『古事記』には180柱、『日本書紀』には181柱いると記されています
主な祀社
国津神の最高神、出雲大社の主として、現在でも多くの人々から信仰されています。
その他、奈良県の大神神社。東京都の大國魂神社をはじめ大國魂大神もオオクニヌシと同神として祀られています。
大国主神を扱った話として、
『古事記』には「因幡の白兎」、「根の国訪問、妻問い」、
『古事記』と『日本書紀』には「国作り」「国譲り」
神話が記載されています。
因幡の白兎
大国主命には、八十神 (やそがみ) と呼ばれるたくさんの兄弟がいました。
八十神は因幡に住んでいる八上比売 (やがみひめ) と結婚したいと思い、大国主命に荷物持ちをさせて、彼女の元に求婚に行きます。
その道中、気多の岬を通りかかると、身体の皮をむかれて泣いている兎がいました。
八十神は、兎に「海水を浴び、高い山の山頂で風にあたって寝ていれば傷が治る」と意地悪を言いました。兎は騙されたと知らず、言われた通りにしましたが、海水が乾いて傷は悪化してしまいます。
より痛みが増して泣いている兎を列の最後にいた大国主命が見かけ、「なぜ、泣いているのですか」と聞きました。
兎は、「私は隠岐の島からこの土地に渡りたいと思いましたが、渡る手段がありませんでした。
どうしようかと悩んでいたところに、ワニザメが現われたので、彼らを利用することにしたのです。
それぞれの種族の数くらべをしようと持ちかけ、私は数えるふりをしてこちらの岸まで渡りました。
しかし、うまく騙せたことが嬉しくなって、ネタばらしをしたのです。すると、ワニザメは怒って、私の皮をはいだのです」と言います。
その後、自分の兄弟に騙されたことを聞いた大国主命は、正しい治療法を教えてやりました。回復した兎は、感謝し、「八十神は、八上比売と絶対に結婚することはできません」と予言します。
すると、その通りになり、八上比売は大国主命を夫に選びました。
根の国の訪問
八上比売と結婚できなかった八十神は大国主命を恨み、2度に渡って殺害を図ります。
大国主命は、母親の助けによって生き返りましたが、「これ以上ここにいれば、八十神にまた殺される」と言われ、スサノオのいる黄泉の国である根の国に逃げるよう勧められます。
根の国にやって来た大国主命は、スサノオの娘・スセリビメに出会い、2人はそれぞれお互いのことを好きになってしまいます。
これを気に食わないスサノオは、大国主命につらく当たります。
結果、大国主命は蛇のいる部屋で寝かされたり、野原に誘い込まれ、火をつけられて焼き殺されかけたりしました。ですが、スセリビメや野原にいたネズミの助けによって生き延びます。
ある日、スサノオは大国主命に頭のしらみを取るように命じました。
その最中、気持ちよくなったスサノオは眠ってしまいます。それに気付いた大国主命は、「これは好奇だ。この隙に逃げよう」と思い、スサノオの髪を部屋の柱にくくりつけ、入り口に大きな石を置いて部屋を塞ぎました。
その際に、スサノオの神器である生太刀・生弓矢・天の詔琴を持ち出し、逃げ出します。
昼寝から覚め、事態に気付いたスサノオは大国主命を追いますが、地上と地下の境目にある黄泉比良坂まで来たところで、追うのをやめました。
ついに、大国主命の男気を認めたのです。
「お前が持ち出した太刀と弓矢で八十神を倒し、立派な王となれ。この野郎め」と激励し、2人を見送ったのでした。
その後、大国主命は八十神を倒し、スセリビメを妻に迎えました。そうして、豪華な宮殿を建て、立派な王となるため、国造りを始めるのです。
国造り神話
出典:出雲大社
大国主命は因幡の白兎の助けにより、八上比売 (やかみひめ) と結婚し、スサノオの課す試練に打ち勝ちます。スサノオに認められた大国主命は、葦原中国を任せられ、国造りを始めました。
しかし、国造りはなかなか順調に行きません。そんなある日、とある岬にいた大国主命は、海の向こうからヒムシ (アリのようなもの) の皮で作った衣服を着た小さな神が船でやって来るところを見かけます。
大国主命は小さな神に名前を尋ねますが、本人も自分が誰なのか分かりません。そこで、物知りな神に質問したところ、小さな神の正体は創造神・神産巣日神 (カミムスビ) の子どもの少名毘古那 (スクナビコナ) だと判明します。
神産巣日神は、少名毘古那を自分の子どもだと認め、大国主命と一緒に国造りすることを命じます。2人は、人々にまじないや医薬などを教え、国造りに励みます。しかし、しばらくすると、少名毘古那は幽世 (かくりよ) に去ってしまいました。
1人で国造りができるかと悩んでいた大国主命の前に、大物主という神が現われます。
大物主は、「私は、あなたの穏やかな人格だ。自分を丁重に祭れば協力しよう」と持ちかけます。その後、もう1人の自分と協力し、国造りを完成させました。
国譲り神話
順調に葦原中国を治めていた大国主命ですが、それを高天原から見ていた天照大神が「葦原中国は、自分の子孫が治めるべきだ」と言い出します。
天照大神は葦原中国に使者を送りましたが、使者は懐柔(手なずけられてしまう)されてしまいました。その次に選ばれた使者は、葦原中国を乗っ取ろうとして天照大神に殺害されます。
3番目に選ばれた使者は、刀剣の神・タケミカヅチでした。大国主命に国を譲るよう迫りますが、大国主命はその選択を息子たちに委ねます。戦いを挑んだ息子たちですが、タケミカヅチに負けてしまいました。
大国主命は国を譲ることを決断し、その代わりに立派な社を建ててもらいます。この社が出雲大社です。
その後、葦原中国は天照大神の孫・瓊瓊杵尊 (ニニギノミコト) が治めることになります。
大国主 美少女にも変身
パラレルワールドで太陽を取り戻すために戦う女性向けアプリゲーム「茜さすセカイでキミと詠う」では、天の国の君主として登場します。聡明で民から絶大な信頼を得る美男子です。
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女体化した武将“戦姫”が織り成す戦国絵巻「戦国プロヴィデンス」、敵武将をなぎ倒す王道RPG。他のキャラ同様可愛い少女キャラとして登場しています。
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悪魔と科学が融合した世界観のゲーム「女神転生」では、悪魔の1柱として登場。武装した美男子として描かれており、日本神話の一部のエピソードが反映されています。
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パズルゲーム「パズル&ドラゴンズ」では、ヒゲがかっこいい渋いおじさんとして登場しています。攻撃に特化したキャラクター。
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大国主 まとめ
兄弟や祖先に殺されかける、散々な思いをしなければならない大国主命。けれど、結果的には、二人の女性両方共にゲット、おまけに神器までも手に入れてしまっています。
これは、不幸なのか、幸福なのかと問うなら、やっぱり幸運な神様、ですよね。
苦労しても確かな結果が得られるなら、そのご利益にあやかりたい神様です。