ニニギノミコト(瓊瓊杵尊・邇邇芸命)はあまり知られていませんが、高天原(天界)から葦原中国(地上)に天降り(「天孫降臨」)、稲作をもたらし、3種の神器を皇室に授けた神です。
皇孫・天孫と称される、最初の天皇・神武天皇の曾祖父。
日本の原型を造ったともいえる神。
そのニニギノミコトに注目です。
日本の神話には疎いという方も多いのでは。
これを機に、意外なほどに面白い、日本の太古の物語にふれてみませんか
目次
ニニギノミコト、日本の原型を作った神
瓊瓊杵尊・邇邇芸命(ににぎのみこと)は、日本神話の天津神(あまつがみ 高天原にいる神)。
天照大神の孫の天孫として天照大神の命を受け、葦原中国に天降(あまくだ)り、これを統治した神。
最初の天皇となった神武天皇の曾祖父、皇孫(すめみま)天孫(あめみま)と称される皇族の祖先です。
名は「天地が豊かに賑わう神」を意味する、稲作を地上にもたらした稲穂の豊饒を司どる穀霊神。
御神徳には、五穀豊穣、商売繁盛、国家安寧などが挙げられます。
『古事記』では
- 天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命(あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)、
- 天津日高日子番能邇邇芸命(あまつひこひこほのににぎのみこと)
『日本書紀』では
- 天津彦彦火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)
- 火瓊瓊杵尊(ほのににぎのみこと)
など
一般的には邇邇芸命、または瓊瓊杵尊と表記されます。
ニニギの降臨によって葦原中国は天孫の統治する五穀豊穣の水穂国(みずほのくに)へと変貌を遂げます。
つまり、ニニギは日本の原型となる国を創造した神と考えられます。
ニニギノミコトに関する物語は、天孫降臨、木花開耶姫(このはなさくやひめ)、火中出産、などの神話として語り継がれています。
ニニギノミコトの誕生
ニニギノミコトはアマテラスの子の天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)と高皇産霊神(たかみむすびのかみ)の娘、栲幡千千姫(たくはたちぢひめ)(萬幡豊秋津師比売命(よろずはたとよあきづしひめのみこと))との間に生まれます。
《古事記》では
アマテラスは天忍穂耳(あめのおしほみみ)を高天原から降臨させようとしますが、その準備にかかる間に子〈天孫〉ニニギノミコトが誕生。
《日本書紀》では、
オシホミミが天降る途中の天空でニニギは生まれ,「創造」を神格化した神・高皇産霊(たかみむすひ)尊がニニギを真床追衾(まとこおふすま)で覆って天降らせたと記されています。
余談ですが、ニニギノミコトの父親のオシホミミは高天原を訪れたスサノオがアマテラスの勾玉から生み出した神。
アマテラスが「私の勾玉から生まれたから私の息子」として引き取ったので、父のオシホミミ、息子のニニギノミコトもアマテラスとの血の繋がりはありません。
祖母:天照大御神
父:天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと) ・正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊
母:萬幡豊秋津師比売命(よろずはたとよあきづしひめのみこと) ・栲幡千千姫命
兄:天火明命(あめのほあかり)
妻: 木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)
子供:火照命(海幸彦)
火闌降命
ひ孫:神武天皇
天孫降臨(てんそんこうりん)
古事記においての天孫降臨は
国津神(地上に現れた神)・オオクニヌシより国譲りを受けたアマテラスは、ニニギノミコトに葦原中国の統治者として天降るよう命じます。
その際
アマテラスはニニギノミコトに天孫を継承する証・三種の神器(八尺勾玉・八咫鏡・天雲剣)を授け、主たる5柱五伴緒(いつとものを)を伴わせます。
- 天児屋命(あめのこやね) 言霊の神、祝詞の神 中臣氏の祖神(おやがみ)春日権現(かすがごんげん)、春日大明神
- 天太玉命(あめのふとだま) 占いや神事の神 忌部氏の祖
- 天鈿女命(あめのうずめ) 芸能・鎮魂の神 猿女の祖
- 伊斯許理度売命(石凝姥命 いしこりどめ) 鏡作の祖
- 玉祖命(玉屋命 たまのおや) 玉作の祖
また、恩金神(おもいかね)・手力男神(たじからお)・天石門別神(あまのいわとわけ)の副えが随行。
さらに稲穂を授け、使命となる「三大神勅」(神勅とは「神のみことのり、神のおつげ」をニニギノミコトに託します。
- 天壌無窮の神勅(てんじょうむきゅうのしんちょく) この国の君主である自覚を持つ事
- 宝鏡奉斎の神勅(ほうきょうほうさいのしんちょく) この鏡で自身を見て、私欲にはしらぬよう慎むよう。
- 斎庭稲穂の神勅(ゆにわいなほのしんちょく) 稲を育て、この国を繁栄させるよう。
一行は日向国の襲国高千穂峰へ天降り。
途中、降臨の道案内として猿田毘古神(さるたひこ)が一行を待ち、随行しています。
木花開耶姫神話
ニニギノミコトはさらに国を探し求めて、吾田長屋笠狭岬へと至り、そこで大山祇神(おやまつみ)の娘の木花開耶姫(木花之佐久夜毘売)(このはなのさくやびめ)、あるいは鹿葦津姫(かしつひめ)に出会います。
ニニギノミコトとの出合いに喜んだ父・オヤマツミは姉の石長比売(いわながひめ)も共に嫁がせようとします。
けれど醜かった姉を嫌ったニニギノミコトはイワナガヒメを親元へ返してしまいます。
父・オヤマツミは「イワナガヒメを娶れば、ニニギノミコト様のお命は岩のように変わらないものになります。
コノハナサクヤヒメを娶れば、桜の花がさきほこるように栄えることになります。
けれどイワナガヒメを返されたことによって、あなた様のお命は桜の花のようにはかないものとなってしまいます」と嘆きました。
こうしてニニギノミコトの子孫である天皇は、神の子であるにもかかわらず、その寿命は人間と同じに儚いものになってしまいました。
火中出産神話
ニニギノミコトの妻となったコノハナサクヤヒメは一夜で身籠ります。
けれどそれを不審に思ったニニギノミコトは姫の不貞を疑い、国津神の子を宿しているのではないかと姫を責めることになります。
これに激昂したコノハナサクヤヒメは産屋に籠って入口を塞ぎ、「天孫(あめみま)の子であれば無事に産まれる、国津神の子であれば焼け死ぬ」と誓約(うけい)をし、産屋に火を放ちます。
三人の子供が無事に生まれ、天孫の子であることが証明されます。
三柱は火中出産であることから火照命(ほでり)、火遠理命(ほおり)、火須勢理命(ほすせり)と呼ばれ、このうち成長した兄の火闌降命は海幸彦に、弟の彦火出見尊は山幸彦となります。
その後ニニギノミコトは久しくして崩御。可愛山陵に葬られました。
ニニギノミコト、エピソードからの存在感も?
『鬼灯の冷徹』ではニニギの妻となったサクヤ姫と結婚を断られたイワ姫が登場しています。
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パズルゲーム『茜さすセカイでキミと詠う』のニニギは「天の国」の年齢不詳、じじい口調の見た目は可愛い少年。
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『火の鳥』、黎明編のニニギは馬賊高天原一族の長。ヤマタイ国へ侵攻をかけた冷酷な支配者です。
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ニニギノミコト まとめ
「天孫降臨」でイエスやアマテラスのような、神々しい神の降臨をイメージします。
けれどその神話を辿れば、醜いからとイワナガヒメを追い返し、一夜で身籠ったからと妻の不貞を疑う。
なんとも人間らしい神。
神勅を受けた神にしては思慮に欠けるようにも思うのですが。。。。