天照大神は日本の総氏神として、日本人なら神の名でまず上がる女神様。
多くのゲームや漫画でも様々なモチーフになって描かれています。
けれどその実態は、驚くほどの謎に包まれた存在なんです。
そこで、今回は天照大神にまつわる謎と、有名な天岩戸のエピソード、天照大神という氏神様について探ってゆきたいと思います。
目次
様々な謎に満ちた天照大神(アマテラス)
天照大神(アマテラス)は、父イザナギ(伊邪那岐神、伊邪那岐命、伊弉諾尊)が禊(みそぎ)の儀(黄泉の国の汚れを落とすため)で洗った左の目から生まれたとされています。
高天原の最高神であり、太陽を神格化した女神様。日本の総氏神様にして、皇室の祖神。
つまり、日本で一番偉い神様です。
天照大神(アマテラス)、三貴子の誕生
父イザナギは亡くなった妻・イザナミ(伊弉冉尊、伊弉弥尊)に会うために黄泉国を訪れ、変わり果てた妻の姿を見て逃げ帰ります。
その黄泉国の穢れを落とすために「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原」(古事記)で禊を行ないます。
着衣を脱ぎ捨てる際に十二柱、身体を洗ったときには十一柱の神が生まれます。
最後に、
左眼からアマテラス(天照大御神)、右眼からツクヨミ(月読命、月夜見尊)、鼻からスサノオ(建速須佐之男命、須佐之男命、建素戔嗚尊速、素戔男尊、素戔嗚尊)が生まれます。
イザナギは自身が生んだ最も貴い神が生まれたことを喜び、三貴子または三貴神(さんきしん)の名が生まれます。
そしてそれぞれに
アマテラスには高天原、ツクヨミには夜、スサノオ には海原の統治を任せます。
天照大神(アマテラス)の謎
アマテラスは幾つもの謎に包まれた総氏神。
幾つの名前を使い分ける?
「古事記」では天照大御神(あまてらすおおみかみ)、「日本書紀」では天照大神。
大日孁貴神(おおひるめのむちのかみ)、大日女尊(おおひるめのみこと)、大日霊(おおひるめ)、大日女(おおひめ)もすべて天照大御神。
伊勢神宮では天照皇大神(あまてらすすめおおかみ)、皇大御神(すめおおみかみ)。天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)と唱える場合もあります。
本当の天照大神はダレ?
本地垂迹(ほんじすいじゃく)説(仏教が興隆した時代に発生した神仏習合思想の一つ)では十一面観音や大日如来が本地(本来の姿、本性の意味)。
両部神道では胎蔵界大日如来であると同時に梵天(ぼんてん)(仏教の守護神である天部の一柱)、日天子(にってん)(大乗仏教に取り入られた天部の神(デーヴァ))であるとされています。
(ちなみに両部神道(りょうぶしんとう)とは真言宗からの神道解釈をいいます)
男神か女神か
「日本書紀」の中で、須佐之男命が天照大神を「姉」と呼んでいることで女神であることが一般に認識されています。けれど神道において、男神は陽で、女神は陰。伊奘諾は陽神(をかみ)、伊邪那美は陰神(めかみ)となります。太陽は「陽」で、月は「陰」であり、そのため太陽神である天照大御神は「男神」であるということになります。
仏教においてもまず天照大御神は観音菩薩であったのが、やがて宇宙神である大日如来と同一視されるようになり、武士の台頭により中世神話では男神とされていたと伝えられています。
卑弥呼と同一人物?
「魏志倭人伝」で伝えられる邪馬台国の「卑弥呼」が天照大神であったという説は昔から伝えられていました。卑弥呼(卑彌呼)」とは「ひめみこ」の発音が魏の国にうまく伝わらず「ひみこ」となったとも推定できるというもの。そして「ひめみこ」=「皇女」。卑弥呼とは邪馬台国の皇女であるということになります。
そして卑弥呼と天照大神にある共通点として
- 生涯独身であった
- 弟がいる
- 「古事記」と「魏志倭人伝」に同じ高木神(たかぎのかみ)という存在が記されている
- 「魏志倭人伝」で伝えられる「倭の国」の倭が「古事記」にも記されている。
などがあげられます。
日本神話「天の岩戸」の天照大神(アマテラス)
ある時荒神・スサノオは母のいる根の国に向かう途中、姉アマテラスに会うために高天原を訪れます。
この時アマテラスはスサノオが高天原を奪いにきたものと思い、武装してスサノオを迎えますが、スサノオにその意思が無いことを確かめ、迎い入れます。
けれど荒神スサノオは水田の畔と溝を壊し、農作業を妨げ、神聖な御殿を汚物で汚し、機屋に皮をはいだ馬をなげこむなど乱暴の限りを尽くします。
そして1人の天の織女が梭(ひ)が陰部に刺さって死んでしまいます。
これを怒ったアマテラスは天岩戸に引き篭ってしまいます。
太陽神が隠れたことで高天原・葦原中国も闇に包まれ、さまざまな禍(まが)が生まれ出します。
困り果てた八百万(やおよろず)の神々が天の安河に集まり、対応を相談。
思金神(おもいかねのかみ)が提案し、策が講じられます。
天児屋命(あめのこやねのみこと)と布刀玉命(ふとだまのみこと)は雄鹿の骨とははかの木で太占(ふとまに 卜占(ぼくせん)(占い)の一種)を行います。
鍛冶の神天津麻羅(あまつまら)・伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)は、天の安河にある岩と鉄で八尺鏡(やたのかがみ)、玉祖命(たまのおやのみこと)は八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を創作。
そして、賢木(さかき)の枝に八尺瓊勾玉と八尺鏡をつるし、それを布刀玉命が持ち、天手力男神(あめのたぢからおのかみ)が岩戸の脇に隠れ、天児屋命が祝詞(のりと)を唱えます。
天宇受賣命(あめのうずめ)が岩戸の前で神憑りして胸を晒して踊り、それを八百万の神が一斉に高天原に響き渡るように笑います。
これを聞いたアマテラスは不思議に思い、天岩戸の扉を少し開け「自分が岩戸に篭っているのに、なぜ、天宇受賣命は舞い、八百万の神は笑っているのか」と尋ねます。
天宇受賣命が答えて「貴方様より貴い神が表れたので喜んでいるのです」といい、天児屋命と布刀玉命が天照大御神に鏡を差し出します。
アマテラスがその姿を見ようと岩戸をさらに開けたその時、隠れていた天手力男神がアマテラスの手を取って岩戸の外へ引きずり出します。
すかさず、布刀玉命が注連縄を岩戸に張り、入り口を塞ぎます。
こうしてアマテラスは岩戸から出て、高天原も葦原中国も明るさを取り戻します。
悪魔になる、狼になる、エロくなる、性格も風貌も変化する天照大神(アマテラス)
石ノ森章太郎氏「マンガ日本の古典」ではダメ息子や部下に振り回されるヒロイン役、水木しげる氏「水木しげるの古代出雲」では妖怪じみた悪役として描かれています。
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『女神転生』シリーズでは悪魔、18禁RPG「Izumo」、「ペルソナ4」では天城雪子の後期ペルソナとして登場。
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「大神」でのアマテラスは主人公である白い狼。森羅万象を操る神業「筆しらべ」をもって、蘇ったヤマタノオロチを封じ込め、再び世界に光を取り戻すために新たな旅が始まります。
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天照大神(アマテラス) まとめ
男神である、卑弥呼である、大日如来である、どれもなんとなく違和感がないように思います。
例えば天岩戸のエピソードで、アメノウズメの踊る姿を覗き見たために岩戸が開くきっかけになったという、それがもし天照大神が男神ならその姿はより容易に想像できそうに思います。
ともかく、天照大神とは卑弥呼であっても、大日如来であっても、わがままでも、白い狼でも、不自然に思わないほどに大きく柔軟な存在であると認識できるように思うのですが。。。