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ゲルマン神話・伝説 神・英雄・怪人

ウートガルザ・ロキ、トール・ロキに勝利した巨人。

更新日:

ルイ・ユアール作

神話やおとぎ話の世界でも巨人はなんとなくトロくって、ヌケているヤラレ役なイメージがあります。

けれど、ゲルマン神話にはあの悪賢いロキを負かした知恵者の巨人がいるのです。

今回はそのヨトゥン(霧の巨人)の王ウートガルザ・ロキの武勇伝のご紹介です。

 

 

ウートガルザ・ロキ、トールもロキもかなわなかった策士

フリードリヒ・ルートヴィヒ・フォン・マイデル作(1842年)

ウートガルザ・ロキとは

ウートガルザ・ロキ(Utgarda-Loki)は北欧神話に登場する、知恵者としても知られる巨人族の王

1220年頃にアイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンが著した詩篇『スノッリのエッダ』第一部、『ギュルヴィたぶらかし』に登場します。

『スノッリのエッダ』第一部はスエーデンの王ギュルヴィとオーディンの会話という形で北欧神話の創造から再生までが語られた詩篇。

ウートガルザ・ロキは幻を操る術や奸智にたけた策を得意とする巨人族の王で、幻術を使って北欧の雷神トールを幾度も負かした策士です。

 

ウートガルザ・ロキ、愉快、豪快な英雄譚

『スノッリのエッダ』のウートガルザ・ロキ

ジョン・チャールズ・ドルマン 作

雷神トールがウートガルザ・ロキが治めるヨトゥンヘイムの都市ウートガルズを訪れた際の事

ウートガルザ・ロキは巨人族の中でも特に巨大なスクリューミルに変装し、遠くに見える山を自分の頭だとトールに思わせ、ミョルニルで殴打させるよう幻術でたぶらかしています

トールが、ロキ、従者のシャールヴィ、レスクヴァを連れて自分の城を訪れると、早速技比べを申し出ます。

そして、

  • 巨人族のロギ(正体は火)、
  • フギ(思考)、愛用の杯(海につながっている)
  • 灰色の猫(ヨルムンガンド)、
  • エリ(老い)

の順でトール一行を負かします。

 

ロキとの対決

最初の勝負はロキに対する巨人ロギ

ロキは「大食いなら誰にも負けない」と豪語し、ロギと大食い対決をします。

結果はほぼ同時に食べ終わりますが、ロキが骨を残して終わったのに対し、ロギは肉も骨も食器さえも全て平らげていました。

実はロギの正体は「炎」

ウートガルザ・ロキが幻術を使って「炎」を人間に見せかけた者、ロギは「炎」で皿までの全てを焼き尽くしていたのです。

 

従者のシャールヴィ

次の対決は従者のシャールヴィと巨人族のフギ。

シャールヴィは得意の駆け足で勝負に挑みます。

結果はシャールヴィの惨敗。

最初の結果に納得しないシャールヴィは幾度もフギに勝負を挑みますが、そのたび毎にその差は突き放されてゆき、ついにシャールヴィも敗北を認めます。

フギの正体はウートガルザ・ロキの「思考」を幻術によって人間に見せられたもの

瞬足が自慢のシャールヴィでも思考」の速さには勝てなかったのです。

 

トールとの対決

3度目の対決はウートガルザ・ロキと雷神トールの呑み比べ勝負

ウートガルザ・ロキは愛用の杯をもって「この杯の酒を一気で呑み干せれば大したもの。

巨人族でさえ3口で呑み干せた者はいない」と言います。

勿論、トールは受けて立ちます。

けれどどれだけ呑んでも、杯の酒はなくなりません。

結果はトールの惨敗。

実はこの杯の先は海につながっており、さすがの酒豪トールも海の水を呑み乾す事は出来なかったのでした。

 

そして猫を使ったトールの力試し。

ウートガルザ・ロキはトールに「俺の飼い猫を持ち上げてみろ」といいます。

トールは軽く「簡単だ」と答えます。

けれどこの飼い猫、ウートガルザ・ロキが世界蛇ヨルムンガンドを猫だと思わせていたのでした。

 

最後はトールとエリという名の老女との力比べ。

トールはプライドを賭けてエリとの勝負に挑みます。

けれどどれだけ攻めてもエリはビクともしません。

そしてついにトールはエリによって片膝を突かされてしまいます

もちろんこの勝負もウートガルザ・ロキの幻術、エリは「老化」の化身だったのです。

 

全ての勝負が終わるとウートガルザ・ロキはこの勝負が幻術であったことを打ち明けます。

トールは激怒し、ミヨルニルをウートガルザ・ロキに投げつけます。

けれどそれよりも早くウートガルザ・ロキと彼の砦は煙のように霧の中に消えてしまっていたということです。

 

『デンマーク人の事績』のウートガルザ・ロキ

ルイス・モー作 (1898年)

『デンマーク人の事績』は12世紀に歴史家サクソ・グラマティクスによって書かれた、デンマークの歴史書。

ウートガルザ・ロキはその第八の書、第14章と第15章に登場しています。

 

第14章ではゲルートの館を訪れたデンマークのゴルモ王は嵐に遭遇し、多くの乗員を餓死させてしまいます。

そこでウートガルザ・ロキに生贄を捧げ祈り、難を逃れます

その後老いたゴルモ王は死後の魂の行く末を案じ、ウートガルザ・ロキに使者を差し向けることにします。

けれど使者が遭遇したウートガルザ・ロキは洞窟の奥の暗く狭い牢獄で手足を重い鎖で拘束され暮らしていました

使者はウートガルザ・ロキと会ったことの証として異臭を放つ髭を1本持ち帰ります。

帰り着いた使者は旅の一部始終をゴルモ王に説明。

ゴルモ王は失意の中で死亡。持ち帰った証拠の髭の異臭によってそれを嗅いだ者も死亡したということです。


 

ウートガルザ・ロキ、現代では謎の戦士(?)

『転空ユグドラシル』ではラグナログから世界を救った巨人の王。

現在は‘天上にある地上’の支配者として君臨しています。

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とある魔術の禁書目録』では魔術結社「グレムリン」の金髪男子。

「五感の一つで得た情報を別の五感に移し替える」という幻覚系の魔術に長けています。

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聖闘士星矢』のスピンオフ作品『黄金魂』ではガルムのウートガルザ。

紫の神闘衣をまとった謎のアンドレアス派の神闘士として登場しています。

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ウートガルザ・ロキ まとめ

エルマー・ボイド・スミス作(1902年)

たとえ幻術でもトールを力で負かし、ロキを策略で負かしたとなれば、ウートガルザ・ロキ、やっぱりアッパレな巨人。

話は逸れますが、トールとロキのコンビ、巨人族を旅したり女装したり(ロキは雌雄同体)、

なんか映画そのまんまなイメージで、好感が持てます。

 

 

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