世界にはエデンの園や常世の国など、様々な楽園の伝説が存在します。
今回はケルト地方に言い伝えられる伝説の国「ティル・ナ・ノーグ」「常若の国」のご紹介です。
妖精ディーナ・シーになったダーナ親族の国「ティル・ナ・ノーグ」。
常若の楽園を訪れた人がたどる結末とは
目次
ケルト神話の楽園ティル・ナ・ノーグ
ミレー族との戦いに破れたダーナ親族(トゥアハ・デ・ダナーン)は追手を逃れ、妖精ディーナ・シーとなって海の彼方、西の地に新たな国々を造ることになります。それら国々の代表的なものは
- 常若の国ティル・ナ・ノーグ
- 喜びが原マグ・メル
- 至福の島イ・ブラゼル
- 波の下の国テイル・テルンギリ
その中の一つ常若の国ティル・ナ・ノーグは海の果てにあるとも、海の底、地下にあるともいわれる妖精(ダーナ親族)の国。
そこには全ての季節の良いものがなる楽園。常に花は咲き乱れ、植物は生い茂り、多くの果実が実ります。
木々には一杯の林檎が実る「不思議の林檎の木」、いくら食べても生き返る豚、いくら飲んでもなくならない永遠の若さを授けるエール「ゴブニュの饗応」があり、そこに住む者妖精たちは老いも死もなく毎日を遊ぶように暮らしているといいます。
そこでゆっくりと時間が流れ、妖精の国の1分が、この世の1年。人間の住む世界と、邪悪な者の住む世界との狭間に存在すると伝えられています。
海神マナナーン・マクリールがこの楽園の王、愛の神ミディールも美しい宮殿を構え、ケルトの民はクーフリンやアーサー王などの英雄やダーナの神々もそこに住まうと考えます。
フィアナ神話の中のティル・ナ・ノーグとオシーン
フィンは「銀の腕」ヌアザの孫娘マーナと、フィアナ騎士の団長クールの息子。
ある時フィンは森の中で妖精に求婚を拒んで子鹿にされてしまったサヴァという女性に出会います。ふたりは結婚、男子が生まれます。けれど母子は妖精につれ去られてしまいます。
何年か後、フィンは森で少年に出会い、その子が自分の息子であることを確信しオシーン(子鹿)と名付けました。
ニァヴとの出会い
ある日フィンはオーシンや騎士たちとレイン湖に近い森で狩りをしていました。すると突然、白馬に乗った金の王冠をつけ豪華な衣装を纏った美しい乙女が現れます。
父フィンに『私はティル・ナ・ノーグのニァヴ。オシーンに愛を捧げるために西の彼方からきました』と言います。オーシンは一目で彼女に心を奪われます。
ニァヴはオシーンに『一緒にティル・ナ・ノーグへお越しください。ティル・ナ・ノーグは永遠の若さと喜びの国、富にあふれ、食物や酒も絶えることなく、木々には果実が、大地には花々が咲き乱れているところです。
あなたはティル・ナ・ノーグの王となって、永遠の若さと喜びにあふれた国を治めるのです』と語ります。
父フィンはもう二度と会えないだろうと嘆きましたが、オシーンはすぐに帰ってくるからと約束し出発。
ティル・ナ・ノーグに行くフィン
ふたりを乗せた白馬は雲をこえ、海の上を駆け続けました。そうしている間に、日の光の彼方に美しい花が咲く緑の大地、そしてまばゆい宝石で飾られた豪華な宮殿が見えます。
常若の国に着くと王と美しい王妃、高貴な人々がふたりを出迎え、王は皆にニァヴの夫となるオシーンを紹介しました。
オシーンは3年その地で暮らしました。けれど父や友人たちに会いたくなったオシーンは一度故郷に帰りたいとニァヴに頼みます。
ニァヴは『フィアナの騎士団はすでになく、エリンはもうあなたの知っているエリンではありません。
この白馬がエリンへお連れしますが、どうか白馬からは降りないでください。足が地に触れた瞬間、二度とここへは戻ってこれません』と告げます。
オシーンはきつくニァヴに約束し、白馬に乗って再びエリンの海岸に辿り着きました。
故郷へ帰還
けれど懐かしい故郷はなく、館があったアレンの丘には見覚えのある廃墟が建っていました。
野や山も小さく縮んでしまったように見えます。そして見慣れない小さい人々が小さな馬に乗ってやってくるのに出会いました
。オシーンはその人たちに父フィンとフィアナの騎士たちのことを尋ねました。
すると『ずっと昔にいたフィアナという騎士団と英雄フィンのことは伝説で知っています。息子のオシーンは妖精の娘と常若の国へ行ってしまい、とうとう帰ってこなかったということです』と答えました。
悲しみの中途方に暮れていると、大きな磐石を動かそうと難儀している人たちに出会いました。オシーンは下敷きになった小さい人を助け出し、そのとき不運にも落馬して両足を地面につけてしまいます。その瞬間白馬は高くいななくと同時に去り、そのとたんオシーンの体に恐ろしい変化が起こります。
目がかすんで見えなくなり、若さが消えてしわくちゃの老人になってしまったのです。
その後再び白馬が現れることもなく、オシーンは老いた老人のまま、昔の仲間や優しかったニァヴのことを偲んで暮らしました。
ゲームの世界のティル・ナ・ノーグ
ソーシャルゲーム『テイルズ オブ ザ レイズ』ではナーザはティル・ナ・ノーグを「ダーナの揺り籠」と呼びます。罪を背負った人々は、罪を贖い、浄化しダーナの揺り籠に生まれ落ちたとされる広い海と大小無数の島々で構成された世界
「モンスターストライク」のティル・ナ・ノーグは水属性の妖精として登場しています
「ティル・ナ・ノーグ」シリーズは 無限にシナリオを作成できることが特徴のRPGゲーム。ティル・ナ・ノーグ(常若の国)で英雄妖精となった主人公がダーナ・オシーやエルフ、ドワーフ達と共に冒険の旅の中で成長してゆきます。
ティル・ナ・ノーグ まとめ
ティル・ナ・ノーグは海の中にあるともいわれる常若の国。日本の竜宮城と酷似しているようにも思います。そして、浦島太郎もオシーンも両方ともに時間の経過が人間の世界とは違うということを知らずに訪れています。人間社会に戻った後のふたりは行ったことを後悔したのでしょうか?
こうなる結末を知って、それでも行こうと思ったのかどうかも気になるところです。
そして、亀も王女様も、先にそれを告げずに連れて行ったのは、それってやっぱり反則ですよね
まあ、甘い話には大抵は罠があるものですが。。