「ハムレット」は「リア王」「マクベス」「オセロー」と並ぶシェイクスピアの四大悲劇のひとつ。
誰もが知るような有名な作品です。
けれど、その作品の元となった物語があることはあまり知られていないのでは。
そこで、「ハムレット」とは如何なる作品なのか
あらためてその魅力、見どころを探ってゆきます。
目次
悲劇の王子「ハムレット」
『ハムレットHamlet』の正式な題名は「デンマークの王子ハムレットの悲劇」。
モデルとなったのは北欧スカンジナビアの伝説上の人物アームレットとされます。
ハムレットは約4,000行に及ぶ、シェイクスピアの作品の中で最長の戯曲。
5幕の構成で1600年頃に書かれたものであると推定されています。
史上最高の演劇のひとつ、「ひとりの精神世界を描いた演劇史上最も優れた作品」であり、その物語は原作が見事にアレンジされた翻案であると評価されています。
ハムレットのあらすじ
デンマーク王が急死。
その後、王の弟クローディアスは前王の妻ガートルード王妃と結婚し、デンマークの王座に就くことになります。
前王の嫡子ハムレットは、父王の死を嘆き、母の早すぎる再婚を憂います。
そんな時、従臣から父の亡霊がエルシノアの城壁に現れるという話を聞き、自らも確かめることに。
そして父の亡霊に出会い、父から、死は現王クローディアスによる毒殺だったと告げられます。
復讐を誓ったハムレットは狂気を装います。
宰相ポローニアスは、娘オフィーリアへの想いが拒まれていることがハムレットの狂気の原因であると誤解。
その真相を確かめるようオフィーリアに頼みます。
けれどハムレットの変貌を気遣うオフィーリアをハムレットは冷たく扱い、オフィーリアを傷つけます。
ハムレットは一計を案じ、旧友である旅の一座に依頼し、現実と同じ王を毒殺する内容の芝居を王と王妃の前で上演。
取り乱すクローディアスを見てハムレットは王が父を暗殺したと確信します。
息子の狂行を案じる母ガートルードは真相を確かめようとハムレットと話し合います。
けれど、ハムレットは王妃との会話を隠れて様子をうかがっていた宰相ポローニアスを王と誤って刺殺してしまいます。
父の死を告げられたオフィーリアは度重なる悲しみのあまり狂い、溺死。
父を殺したのがハムレットであることを王クローディアスより明かされた宰相の息子レアティーズは怒り、クローディアス王と共に剣の試合で恨みを晴らすよう画策します。
ふたりは毒の塗られた剣と毒入りの酒を用意して剣術試合に挑みます。
けれど試合のさなか、ガートルード王妃が知らずに毒入りの酒を飲んで死亡。
ハムレットとレアティーズ両者とも剣で負傷。
死に際したレアティーズからこれまでの真相を聞かされたハムレットは、死の間際、元凶であるクローディアス王を殺して復讐を果たします。
なんと、全員死亡の結末です。
「ハムレット」の中の名言
- 生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ! To be, or not to be: that is the question
- 尼寺へ行け! Get thee to a nunnery.
- 愚かなる者、汝の名は女なり Frailty, thy name is woman!
原作とされる『デンマークの王子の物語』
『デンマークの王子の物語』は12世紀の歴史家サクソ・グラマティクスによるデンマークの歴史史書『デンマーク人の事績』の中の3巻〜4巻で語られています。
『デンマーク人の事績』は北欧神話を語る1巻〜9巻と、中世デンマークの歴史を語る10巻〜16巻で構成。
『ハムレット』の物語はその中の『デンマークの王子の物語』と酷似し、ハムレットHamletの名前も主人公アムレート Amlethのアナグラムと考えられています。
あらすじ
アムレートの父・ホルヴェンディルと弟のフェンギは共にユトランド(デンマーク)の代官として国を治めていました。
ヴァイキングであったアームレットの父は戦利品や略奪品の中から特に優れたものをローリク王に献上し、王の娘ゲルータを娶り、二人の間にアムレートが生まれました。
アームレットの叔父フェンギは彼らの結婚に憤慨し、ユトランドの支配権を握るために兄を殺害。
短い喪ののち、叔父フェンギはアームレットの母ゲルータを娶り、ユトランドの支配者となります。
叔父の悪行を知ったアムレートは一計を案じ、狂気を装います。
計らずしも、アムレートの異行を気遣う母親との会話を盗み聴こうとする叔父フェンギの従者を殺害。
これを知ったフェンギは、彼の殺害を依頼した書簡を持つ家来と共にアムレートをブリタニア王のもとに送ります。
けれど、アムレートはその手紙を家来の殺害を依頼する文に書き換えます。
ブリタニア王はアムレートの聡明さに気付き、王の娘をアムレートの妻とします。
一年の後、帰国したアムレートは自分の葬儀に汚物まみれで出席。
出席者からの笑いを誘い、会場を盛り上げ、皆を泥酔させたのち広間に火を放って全員を殺害。
そして、フェンギの寝室で復讐を遂げます。
その後、妻を亡くしたブリタニア王は、スコットランド女王に結婚を申し込む使命をアムレートに与えます。
けれど、女王はアムレートと結婚。
その結果、アムレートはブリタニア王と交戦し、王の死を持って勝利。
その後、アムレートは二人の妻を連れてユトランドに帰国します。
ハムレット、現代でも変わらぬ不朽の名作
歴代の名優・名監督が手がけるハムレット
1948年のハムレットはその功績によって貴族の称号を与えられたシェイクスピア俳優としても名高いローレンス・オリヴィエが監督し、自らハムレットを演じています。
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1964年グレゴリー・コージンツェフ監督による『ハムレット』はヴェネツィア映画祭で特別賞を受賞。イギリス版をしのぐと評価されています
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2000年には現代のニューヨークを舞台とした『ハムレット』が制作・上映されています。ただし台詞はそのまま、イーサン・ホークがハムレットを演じています。
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メイドインジャパンなハムレット
蜷川幸雄の80周年記念作品として2015年に上演。主演ハムレットを21歳で数々の演劇賞受賞の実力を持つ藤原竜也、オフェーリアを満島ひかりが熱演しています。
太宰治の独特の感性で翻訳されたハムレット、太宰治とシェイクスピアの融合。戯曲風の小説とも表現できる作品です。太宰ファンには必読!?
まとめ
シェイクスピアの魅力はやはり “舞台を観る”、“本を読む” をしなければ、ただストーリーを垣間見るだけでは理解できないものがあります。
独特の表現法は、確かに好みが分かれるかもしれませんし、読むタイミングも選ぶ作品だと思います。
けれど間違いなく素晴らしい洞察力と表現力。
食わず嫌いせずに入り込めばハマる可能性は大、かも。