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グレムリンはまず映画の中のギズモが変身した姿をイメージします。
けれど実はこの二匹の関係はあくまで映画の中での設定なのだとか。
グレムリンは機械にイタズラする伝承の妖精。
「ギズモ」と名付けられたモグアイは地球外生命体。
なので、やはりクリスマス映画の定番となった「グレムリン」に注目です。
ユニークでかわいい、憎めない妖精グレムリンとは
目次
グレムリン、機械にイタズラする伝承の妖精
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グレムリン (Gremlin) は英国に伝わるノームやゴブリンに似た、機械にイタズラをする伝承の妖精です。
原因不明の機械の異常は彼らの仕業と言われ、そういったトラブルは「グレムリン効果」と呼ばれます。
元々は人をフォローし、さまざまな発明のヒントを与え、人間界を産業革命に導いたと言われる妖精でした。
けれど、人間は彼らの存在に気づかなかった、あるいは軽視したために、怒ったグレムリンはさまざまなイタズラで故障や事故を引き起こすようになります。
自動車やミシンなどの身の回りの機械類に悪戯をして、故障させたり動かなくさせたり。
その存在は口伝えで広まって行きます。
第一次世界大戦(1914年~1918年)下、飛行機の需要が高まるとグレムリンの存在も重要視されてゆきます。
特に第2次世界大戦中、航空兵の間では説明のつかないアクシデントの原因としてグレムリンの存在が語り継がれてゆきます。
グレムリンの特徴
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英国の作家ロアルド・ダールは第二次世界大戦中にイギリス空軍のパイロットであった経験を元に、児童文学『The Gremlins』を発表。
それによると
グレムリンの種類
- ウィジェット(Widget) 男の子
- フリバティジベット(Flibbertigibbet) 女の子
- フィフィネラ(Fifinella) パイロットをくすぐって照準を外させる雌
- スパンデュール(Spandule) 高度3,000mより上の雲の中に住み、パイロットに冷気を吹きかけ凍えさせる
- ディングベル(Dingbel) 内輪のおしゃべりを拡声器で流したり、デート中に他の男の写真をバッグから落とさせる
などの種類がいるとされます。
グレムリンの知識
- 日本の英文学者井村君江は、科学や力学
- 超常現象の著作家ローズマリ・エレン・グィリーは、技術、気象学、工学、航空力学
などに精通していると述べています。
グレムリンの功績
功績についてもさまざまな伝承が残されているのです
- 米国の気象・物理学者ベンジャミン・フランクリンの、雷は電気であることを証明したライデン瓶実験の凧あげの手伝い
- 発明家ジェームズ・ワットの前でヘクター・オクライドという名のグレムリンが、ヤカンの蓋を動かすことで蒸気機関のヒントを与えた
- 機がグレムリンの声で誘導された
- 有事の際、機体が無事に基地に着陸できるように集団で手助けする
など
グレムリンのイタズラ
- エンジンや電気の故障
- 通信の障害
- 座標を狂わせる
- 滑走路を揺らす
- 機体に穴を開ける
- ケーブルを齧る
- 計器に指を突っ込んで狂わせる
- 燃料を飲んでしまう
- 整備したネジを緩める
- 計器類をくるわす
その他、機械に関するトラブルのほとんどすべてがグレムリンが悪さをしているため。
グレムリン対策
かつてはグレムリンのイタズラ対策のおまじないとして、好物を納入や飛行の際に機内に持ち込む習慣がありました。
🔸飴玉 それに気をとられ航空機に潜り損ねると考えられたため、完成した航空機を納入する際、飴玉を一緒に納入する風習がありました。
現在でも機内サービスで飴玉などのお菓子を配るのはその名残とか。
🔸ビール瓶 これもグレムリンの好物とか。かつてパイロットは飛行の際には機内にそれを持ち込む習慣があったようです
🔸チューイングガム グレムリンの好物
グレムリンの起源
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グレムリンは元々は身の回りの機械類にイタズラをして、故障させたり動かなくさせたりする妖精とされます。
人間界に機械類が浸透してからの存在であるため、誕生してから150年ほどの妖精です。
当初は家庭に住み着き、夜中に機械を壊したり、調子を悪くしたりすると信じられていました。
第一次世界大戦(1914年~1918年)、航空機が使用されるようになると、インドに駐留していた英国空軍の部隊の間でその存在が噂されてゆきます。
パイロット達の間で原因不明のエンジントラブルを引き起こす原因と考えられる様になります。
最古のグレムリンの記録は、1929年4月10日、マルタ島・英国空軍の隊内誌内。
その後、第二次大戦中に英空軍の間で噂が広まり、アメリカ空軍にもグレムリンの存在が広まりました。
グレムリンの起源については諸説存在しています。
そのひとつは、元々高い山の頂に暮らしていたグレムリンが、人類が高空飛行をするようになり、その飛行機械に興味を持ち、乗り移ったとされるというもの。
翼を持たない妖精グレムリンが空を飛ぶためには飛行機に乗る必要があるのです。
または、工場や格納庫内の航空機に忍び込み悪さをします。
そのため、航空機やそのほかの機械類、そのプロセスや、オペレーターの故障など原因が不明なトラブルを説明するための存在「グレムリンの仕業」とされます。
特に第二次世界大戦中(1939年~1945年)、戦闘中のエンジントラブルは撃墜に繋がるため、戦闘機乗りの間では死を招き寄せる存在として忌み嫌われています。
グレムリンの外見
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グレムリンの容姿についてはさまざまな伝承があります。
🔳超常現象の作家R・E=グィリーは、身長6インチ〜1フィート(15〜30cm)の人間にそっくりな小人で、頭部に角が生え、皺くちゃの赤い上着と緑色の半ズボン、黒い皮の長靴を履いている。
または雄兎とブルテリヤー犬との混血のようにも見えたとしています。
🔳英国の作家キャロル・ローズは、身長50cm、体重8kgほど。角があり、ジャックウサギに似た外見。赤い上着、緑のズボン、皮の飛行ジャケットとブーツ。水かきのある足にひれのついたというものも報告されている、としています。
- 皮膜のある小型哺乳類やレプティリアン、赤い上着を着たウサギにそっくりな姿、ツノが生えていた
- 赤または緑のダブルブレストのフロック コート、羽のついた帽子、とがった靴を履いた小さな人型のエルフ
- 肌の色は、緑、金、ピンク、赤の間の範囲
- 毛むくじゃらの体、大きなとがった耳に角があり、輝く赤い目をしている
- 裸の灰色の肌、やや爬虫類のような外観、鋭い歯のある大きな口を持っている
- ジャックウサギ、ブルテリア、またはその両方の組み合わせに似ている
- 身体は霧や煙で構成されている
- 水かきのある手足やヒレなどのマーフォークの特徴を持っている
- コウモリのような翼を持っている
- 足裏に吸盤が付いた大きな足や、フックの付いた革靴を履いて飛行機の外側に逆さまにぶら下がったりできる
- トンカチ、のこぎり、手回しドリルを持っている
などなど
名前の由来
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名前の由来についてもさまざまな説が語られています。
最初に発見した空軍大尉のプルーンさんは士官食堂にあった本「グリムの妖精物語」「fremlin's elephant ale」と、唯一飲めた「フレムリン醸造所のビール」(イギリスで有名な瓶ビール)の合成語
キャロル・ローズは、著書『Spirits, Fairies, Leprechauns, and ゴブリン: 百科事典』の中でもその説を紹介しています。
その他
- 伝承『ベオウルフ』に登場する巨人の怪物グレンデルの転訛、
- Gremian(悩ませる)から作られた
- gremman(怒り、いらいらする)、+ lin(ゴブリンgoblin)
- gruaimin(不機嫌な小さい人)が由来
- 古英語の gremian (イライラさせる)+ Goblin (ゴブリン)。
などがあります。
作品の中のグレムリン
グレムリンはマスメディアでとりあげられ、映画やゲームなどの作品でも多くみられ、人々に浸透しています。
🔳 イギリスの作家、ロアルド・ダールは英国大使館の航空武官補としてワシントンDCに転勤。そこで最初の作品『The Gremlins』を書き上げます。
その中ではドリルで翼に穴を開けるグレムリンや、その家族も登場。
グレムリンは戦闘機に乗って生きている小さな人間のような存在として描かれています。
🔳作家で映画監督のリチャード・マシスンは短編「二万フィートの戦慄(Nightmare at 20,000feet)」を1961年に発表。
グレムリンを目撃した乗客の恐怖体験を描いています。
1963年にはドラマシリーズ『ミステリー・ゾーン』として放映。
1983年の映画では翼を持った悪鬼のようなグレムリンの姿が印象的です。
🔳作家チャールズ・グレイヴズは1941年の著作「薄い青色の線(The Thin Blue Line)」でグレムリンを題材にしています。
🔳ワーナー・ブラザースのアニメーションシリーズ、ルーニー・テューンズの短編『Russian Rhapsody(ロシアの狂騒曲)』にはナチスの爆撃機をめちゃくちゃにする様々な種類のグレムリンが登場。
ユニークな外見のモデルは当時の制作スタッフたちであるとか。
グレムリン、戦時下でも現代も無視できない存在
映画「グレムリン」ではギズモと名付けられたモグアイがグレムリンとなって大暴れする、クリスマス映画としても定番の迷作
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映画「トワイライトゾーン 超次元の体験」第4話の「2万フィートの戦慄」のグレムリンは空を飛ぶ悪鬼のようなクリーチャー
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『真・女神転生』シリーズ『ソウルハッカーズ』のグレムリンは、スパナを持って飛び回るエネルギー体のような氷結系の悪魔
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「遊戯王OCG」のグレムリンは闇属性を持った悪魔族。イタズラ好きの小さな悪魔
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『妖怪ウォッチ』では「グレるりん」として登場。まじめな人もワルにしてしまうリーセントが自慢のツッパリヤンキー
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グレムリン まとめ
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テクニロジーがまだ未熟だった時代、機械の原因がわからない故障をイタズラとされた存在として生まれたのがグレムリン。
精霊のせいにしちゃうのはずるいかもしれないけど、夢やユーモアがあって個人的には好ましく思います。
その存在もなんとも微笑ましい悪ガキ。
ギズモも可愛いけど、グレムリンも楽しい。
技術が発達し、夢の領域が狭くなり、いろんな弊害が起こる現代。
それでも妖精や精霊の存在を信じていたいと思います。