クー・フーリンは太陽神ルーの子。
戦場では少年のような容姿が怪物に変貌する稀代の戦士。
半神の英雄として数奇な人生を辿り、その壮絶な死に様には驚愕です。
英雄としての最期が後々に語り継がれるクー・フーリンのその雄姿とは。
ご覧ください。
クー・フーリン、ケルトの大英雄
クー・フーリン( Cú Chulainn)は、ケルト神話の半神半人の英雄。
父は太陽神ルー。母はコンホヴァル王の妹デヒティネ。 幼名はセタンタ。
御者の王とも言われる名御者ロイグが駆る愛馬マハとサングレンの二頭立ての戦車に乗り、戦場をかけます。
勇猛果敢で誇り高く、「偉大な戦士となり、その名は遠い時代まで語り継がれる」と予言された、超人的な能力を持つ希代の英雄です。
クー・フーリンの容姿・人格
クー・フーリンは戦いを好む荒くれ者ではありません。人々を窮地から救うため、友や自分たちの名誉を守るために戦いに挑みます。
名誉と節度を重んじ、女を手に掛けることがなかったといいます。
一説には「背が小さく、ヒゲも生えていないくらい若く美しい容姿」と伝えられます。
頭髪は三色に染め分けられ、金の王冠のように結い上げた髪は百本の宝石の糸で飾られます。
胸には細かく散りばめられた黄金が輝き、左右の頬には両方に四つずつのえくぼ、左右の目には7つの宝玉が輝くという風貌。
けれど戦意で興奮が頂点に達するとまさに豹変。
髪は逆立ち、筋肉は巨大に膨れ上がり、1つの眼は頭にのめり込み、もう1つの眼は頬に突き出します。
まさに悪鬼のような姿に変貌し、大きな唸り声をあげ、敵味方の区別なく全てを破壊しつくし、コナハトの戦士を恐怖に陥らせたといいます。
クー・フーリンの生涯
誕生
ある冬の日、コンホヴォル王の妹デヒテラは太陽神ルーの夢を見ます。
ルーはデヒテラに「あなたはまもなく私の子を産むでしょう。生まれてくる子にはセタンタと名付けなさい」と告げます。
騎士になるクー・フーリン
成長したクー・フーリンはドルイド僧に「今日元服する若者は、エリンに長く語り継がれる偉大な戦士になるが命は儚い」と予言されます。
この言葉を聞いたクー・フーリは、騎士となるべく王の元へと向かいます。
王に謁見しますが、騎士になるにはまだ早いという王にクー・フーリンは槍をへし折り、剣をへし曲げ、自身の力を披露。
王はクー・フーリンが騎士になるのを許し、相応しい武器とチャリオットを与えます。
魔槍ゲイボルグの入手
クー・フーリンはスカサハから厳しい修業で武術と魔術を学び、魔槍ゲイボルグを授かります。
あるときスカサハと同じく魔術に長けたオイフェという女戦士との間に争いが起きます。
スカサハは、クー・フーリンを戦いに参加させまいと眠り薬を飲ませますが、丸一日寝てしまう睡眠薬もクー・フーリンには1時間しか効かず、目覚めたクー・フーリンはオイフェの6人の勇士を一打ちで倒してしまいます。
クー・フーリンは戦いでオイフェと一騎討となりオイフェを負かし、彼女を妻とし子供コンラを授かります。
― ゲイ・ボルグ(槍) ―
スカサハ、(あるいはアイフェ)に授かったとされる魔槍。
海獣の頭骨で作られた稲妻のような穂先をした従者が五人がかりで運ばなければならないほどの大きく重い槍。
投げれば30の鏃となって稲妻のような速さで降り注ぎ、敵軍に残らず刺さる、敵を逃さず命中し敵をまとめて貫く。
突けばどんな防具も貫通し30の棘となって破裂。
無数に枝分かれして刺さり、敵の全身に毒を与え、全身の内臓と血管の隙間に大釘を残すといいます。
この槍でつけた傷は治らない、刺された者は必ず死ぬといわれるもの。
英雄クー・フーリンの勇姿
クー・フーリンは戦の女神モリガンからも求愛されます。
それを拒みますが、モリガンの命を助けることもあり、それ以降モリガンはクー・フリンを助けるようになります。
『クーリーの牛争い』
あるとき隣国コナハトの女王メイヴがフー・クーリンの国に攻め入ってきます。
それはクーリーの牛争いと呼ばれ、7年間に渡る戦いが始まります。
アルスターの戦士たちは魔女の呪いにより満足に戦えない状態となりますが、神の血を引くクー・フーリンだけが呪いを受けず、たった一人で敵国と戦います。
クー・フーリンの力は凄まじく連戦連勝、業を煮やした女王はクー・フーリンの親友フェルディアを差し向けます。
戦わざるを得なかった親友同士の戦いは四日の間続き、最後はクー・フーリンのゲイボルクによってフェルディアは死亡、クー・フーリンは友の遺体を手厚く葬ることになります。
クー・フーリンの死
親友の死から後もクー・フーリンに不幸が続きます。
オイフェの間に生まれた我が子コンラを、それと知らずに殺害。
『クーリーの牛争い』で敗戦に着したメイヴはクー・フーリンを抹殺するために罠を仕掛けます。
クー・フーリンは呪いをかけられ、幻影と狂気に取り憑かれてしまいます。
自分の名前についている「クー(犬)」を食べないというゲッシュ(誓い)を破らされ、呪いにより半身が痺れてしまいます。
その期に敵の吟遊詩人にゲイボルグを渡すように要求され、吟遊詩人には従うという誓いを立てたクー・フーリンはそれを投げ渡してしまいます。
狂気と半身麻痺の状態で単身敵軍に挑み倒しますが、敵に渡ったゲイボルグを投げ返され、愛槍は愛馬マッハ、そしてクー・フーリン自身を貫きます。
内臓が飛び出し、その内臓を水で洗って腹に戻し、最期を悟ったクー・フリンは石柱に自らの体を縛りつけ、直立に構えた状態のまま息絶えたと伝えられます。
クー・フーリンの首はコナハト軍の兵士によって切り落とされてしまいます。
けれど、その直後、一羽の鳥がクー・フーリンの肩に止まります。
女神モリガンが最後の別れを告げにきたのでした。
クー・フーリンの武器・宝物
クー・フーリンはゲイ・ボルグ以外にも多くの武器を所有していました。
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ルージーン・カサド・ヒャン(剣)
切り口が夜にはドクロのように輝き出すという光の剣。
刃先の鋭さはたとえ刃を折り、再びくっつ蹴ても元に戻る。
水に浮かべた毛髪に触れただけでこれを斬り、人を両断してもしばらくは気づかぬほどの鋭利であったといわれます。
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盾
Fuban あるいは Duban と呼ばれる盾
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空幻魔杖 デル・フリス
妙技を見せる投げ矢、または早業の杖。
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隠れ蓑
など。
現代でも現役戦士、クー・フーリン
『Fate/stay night』でのクー・フーリンは、高い白兵戦の技術とサーヴァント中でも有数とされる敏捷性を持つ槍兵のサーヴァント、物語開始当初から活躍しています。
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ソーシャルゲーム「神姫プロジェクト」でのクー・フーリンは伝説の槍「ゲイボルグ」を持つ神姫。愛犬クランを連れ、強くなるために修行に励みます
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山岸涼子作「妖精王」。少女アニメファンにはたまらない時代を感じさせない名作。妖精の王国を舞台とした、ライトエルフとダークエルフの争いを描いた、スペクタクルファンタジー。その中でクー・フーリンは赤枝の騎士団を率い、グィンとは深い信頼関係で結ばれた、妖精王の子グィンの第一の従者として登場しています。
【中古】 妖精王 コミック 全3巻完結セット (白泉社文庫) 価格:3,790円 |
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クー・フーリン まとめ
親友や我が子を己が手にかけ殺してしまう、英雄にありがちな不幸です。そしてクー・フーリン自身もまさに英雄らしい最期を遂げる。
多くの英雄が名誉ある死を選びます。
これが良いか悪いかは別として、クー・フーリンは死後ティル・ナ・ノーグに迎え入れられたとか。まあ、めでたし、めでたし、なのでしょうか