人日(じんじつ)の節句とは、五節句のひとつ。
正月明けの7日、七草粥を食べ、邪気を払い、一年の無病息災を願います。
けれど、意外と知らない、うっかり忘れてしまいがちな「人日の節句」に注目です。
その起源や作法とは
目次
人日の節句とは
もとは旧暦1月7日(新暦2月18日)に行われる最初の節句。
近年では松の内(正月を祝う期間)が開ける7日に七草粥を食べる、新年最初の五節句のひとつ。
「七草の節句」「七種(ななくさ)の節句」ともいいます。
これは、古来日本の宮中で行われていた「若菜摘み」と、中国から伝わった「人日(じんじつ)」、そして元々日本で伝わっていた七種の食材で作った粥を食べて健康を願う風習が組み合わさったもの。
** 人日の節句の起源 **
古来、中国では1月7日を「人日:じんじつ」といいます。
太古、中国では元日から6日までの各日に動物を当てはめた占いが行われていました。
元日には鶏、2日に狗(いぬ)、3日に羊、4日に猪(豚)、5日に牛、6日に馬を占います。それぞれの日にはその動物を敬い、殺さない日とされていました。
そして7日目には人。人を占い、犯罪者に対する刑罰も行わないとされました。
以来新年の7日目は、人を大切にする「人日(じんじつ)」という節句とされました。
この「人日の節句」の風習は、奈良時代に日本へと伝わリます。
これが日本古来の「新年の若草摘み」の風習と結びつき、「七草囃子」を歌いながら七草を刻み7日の朝に食べる「七草がゆ」という風習となります。
江戸時代には、人日は「五節句」の一つに数えられる公式行事となり、以降武家や庶民にも定着してゆきます。
** 若菜摘み **
古来日本には「新春に若菜を食べると邪気が払われ、病気が退散する」と考えられていました。
そのため古くから年の初めに雪の間から芽を出した若菜を摘む、「若菜摘み」という風習が行われていました。
若菜は初春の若返りの植物。若菜は正月初子(はつね)の日に摘まれ、羹(あつもの・熱い吸い物)にして食し、邪気を払います。
これらの風景は万葉集や枕草子など、多くの古書に記述されています。
これが邪気を祓い、万病を除く七草の原点と伝えられています。
春の七草「七種の節句:ななしゅのせっく」
平安時代、当時は米・粟・黍(きび)・稗子(ひえ)・みの・胡麻・小豆の七種。
現代の七草は、芹(せり)・薺(なずな) ・御形(ごぎょう) ・繁縷(はこべら) ・仏の座(ほとけのざ)・菘(すずな) ・蘿蔔(すずしろ)、の七種となっています。
芹(せり) | 全体をゆでて食べます。
β カロチン、ビタミンC、鉄分も豊富 |
薺(なずな)ぺんぺん草 | 天日で乾燥したもの煎じて飲み物や塗り薬として使用。
ビタミンA、C、Kが豊富。肝蔵や目薬、解熱や止血効果。 |
御形(ごぎょう)母子草 | 平安時代、草餅はこの若菜を使って作られていました。
風邪、解熱効果。 |
繁縷(はこべら)はこべ | ビタミンA、B、Cが豊富。
目病、腹痛、天日で乾燥させたのを皮膚や痔の薬としても使用。 |
仏の座(ほとけのざ)田平子 | 抗酸化作用、鎮痛、解熱効果。 |
菘(すずな)蕪(カブ) | 萌え出たばかりの蕪(カブ)の若菜。
ビタミンA、C、カルシウムが豊富。 美肌効果。 |
すずしろ(大根) | 萌え出たばかりの大根の若菜。
ビタミン、ミネラルが豊富。消化吸収、風邪予防。 |
** 調理法 **
摘んだ若菜を、6日の晩、年神棚(としがみだな)の前に用意したまな板の上で音をたてて叩きます。(「刻む」は忌み言葉とされ、「叩く」と表現)。
七草を刻む動作に合わせて、各地で様々に伝えられている“唱え言葉”で囃します。
そうすることで、農作物の天敵である鳥を追い払う、あるいは、人日の夜にやってくる鬼車鳥(きしゃどり)と呼ばれる妖鳥を追い払います。
人日の節句 まとめ
最近では季節になればスーパーなどで簡単に手に入る「七草」
それでも、おせちに飽きた胃袋には新鮮野菜は清しい刺激です。
熱々の湯気のたった粥をすする、日本人にとっては間違いなく「贅沢なご馳走」です。