「あまのじゃく」という言葉は今でもひねくれた人を表す意味で使われます。
その語源は小鬼の姿をした日本の妖怪、天邪鬼。
今回は、人間にいたずらをするという妖怪、天邪鬼についてご紹介します。
目次
天邪鬼、日本民話に登場する妖怪
天邪鬼とは悪鬼神もしくは小鬼、または妖怪の一種。
古くから伝わる民話などに多く登場します。
モノマネや人の心を読むのを得意としていて、意地悪く、相手の意と逆のことをして他人を不快にさせて喜ぶ、小鬼のことをいいます。
全国の民話に登場し、地域によって呼び名も様々。
あまんじゃ、あまねじゃく、あまぐしゃぐめ、あまんじゃこ、あまんぎゃ、などと呼ばれます。
天邪鬼の起源
日本古来の天邪鬼は『古事記』や『日本書紀』に登場する天稚彦(アメノワカヒコ)や女神天探女(アメノサグメ)に由来します。
天稚彦は国譲の中で天照大神の命を受けて葦原中国の平定に勤めます。けれど大国主命の娘を妻として勤めを忘れ長く音沙汰がありません。
天照大神は雉名鳴女を使者として使わしますが、天稚彦は仕えていた天探女にそそのかされ雉名鳴女を矢で射殺し、自身も天から射返された矢によって死んでしまいます。
天探女は、天の動きや未来、人の心などを探ることができるシャーマン的な存在とされ、この説話を元に人の心を読み取って悪戯をしかける小鬼へと変化していったものと伝えられています。
江戸時代に編纂された類書『和漢三才図会』では、スサノオが吐き出した体内の猛気が天逆毎という女神になったと記されています。
顔は獣のようで、高い鼻、長い耳と牙。これが天邪鬼や天狗の祖先とされます。
天邪鬼は誰ともまぐわず天魔雄(あまのさく)を出産。この天魔雄は九天の王となり、人々の心に取り憑き、心を乱す魔神となったと伝えられています。
仏教での天邪鬼
仏教においては人間の煩悩を表す象徴として四天王や執金剛神に踏みつけられている悪鬼を「あまのじゃく」と言います。
中国の水鬼・海若(かいじゃく)が日本古来の天邪鬼と習合され、四天王に足蹴にされる鬼類を指して言うようになったもの。
説話の中の天邪鬼
民間の説話では天邪鬼が神仏や、僧の行為を邪魔する存在として幾つもの物語が伝わっています
栃木県や岐阜県では「山姥(やまんば)」をあまのじゃくと呼び、岩手県の天邪鬼は灰の中の妖怪として伝わっています。
** 山姥と天邪鬼 **
山姥は奥山に棲み人を喰らう老女の妖怪を言いますが、地域によっては軽い悪さをする程度の山姥を天邪鬼ということもあるようです。
■栃木県や岐阜県の山姥も里の村の作物を荒らしては盗む、子供に悪さをして怪我をさせたり、病をはやらせたりします。
困り果てた村人は神社を建て山姥を神様に祭り上げます。すると山姥の悪さはぴたりと止まったとういことです。
この山姥は村人に敬遠されたために反発していたよう。
天邪鬼を「ひねくれた人」や「周囲に嫌がらせをする人」のことを言うのはここから来ているようです。
■鳥取県では平地や池を「アマノジャク」が造ったという伝承が残されています。
また、箱根の山に住んでいた天邪鬼が、富士山を削りこぼれた土が二子山に、富士山の土が伊豆大島になった。
上総の国から砂を運んで富士山を高くしようとしていた大尺坊(巨人)の邪魔をした、などの言い伝えが残されています
■東京都金森市天沼では天邪鬼が婚礼の新婦の行列へ水をかけるという伝承が残されています。
瓜子姫
天邪鬼が登場することで有名な民話です。
ある老夫婦が瓜を拾い、その中から生まれた瓜子姫は老夫婦に育てられて美しい娘に育ちます。そんな美しい瓜子姫の噂を聞いた長者が、瓜子姫をぜひ嫁に迎えたいと言うので老夫婦は輿入れの準備をしに街へ買い物に行きます。
その間、留守番をしていた瓜子姫の家の戸口に天邪鬼が現れます。そして、天邪鬼は瓜子姫という外敵に危害を加えらます。
その結末については瓜子姫は天邪鬼に縄で縛られたりするが無事に助けられる終わり方をする民話もあれば、殺されてしまうものもあるようです
天邪鬼 嫌われもの、敵としての登場が多い?
「ドラクエシリーズ」では、インプの上位種に当る、小悪魔系のモンスター。
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「学校の怪談」の天邪鬼は黒猫カーヤに憑依している人間の恐怖心を栄養とするオバケ。
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「ゲゲゲの鬼太郎」でも、ひねくれた性格の鬼として描かれています。こちらの天邪鬼は、大きな岩さえも持ち上げる怪力と、相手の妖気を読む能力を持ち、悪さを働いたため600年間封じられていた妖怪という設定です。
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「鬼灯の冷徹」では焦熱地獄の獄卒として登場。良識的なキャラクターの多い中で、数少ないゲスキャラとして描かれました
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天邪鬼 まとめ
昔ならひねくれ者の「あまのじゃく」な人は周囲を見渡せば結構いたように思いますが、最近はなんとなく少なくなったようにも思います。
なりを潜めているのか、SNSの浸透で万人が「良い人」「世渡り上手」になってしまったのか。
もし、今、思いっきり「あまのじゃく」な人が現れたとしたら、オモシロイと思ってしまうだろうと思います。
近づきたくはないですが。。。