中国神話の中で最高神とされるのは天帝ですが、実は天帝よりも位が高い神様がいることを知っていますか?
その名は元始天尊(げんしてんそん)、道教の最高神にして創造神。仏教や道教が織り交ざる中国神話の中では、いちばん偉い神様なのです。
今回は、その元始天尊のご紹介です。天帝の影に隠れがちな最高神の凄さが浮かび出てくるかも。
元始天尊、創造神にして最高神
元始(袁世)天尊は道教の最高神です。
真宗の天禧年間(1017年 - 1021年)に成立した北宋の道教類書『雲笈七籤』に記された元始天尊は万物の始めであり「道」の本質であるとされます。
元始天尊は宇宙が生まれる前、あらゆるもののエネルギー源となる「気」に触れて誕生しました。
混沌から天地万物を創り出し、宇宙の全てを統治します。
また、隋の時代の歴史書『隋書』「経籍志」でも、元始天尊は「太元」。
全ての物事よりも先に誕生した常住不滅の存在であり、幾度の天地の崩壊と再生のとき、道教の教えを示して地上の人々を救済します。
これを開劫度人 (かいごうどじん) といいます。
元始天尊と盤古の習合
中国神話と道教が融合してから、元始天尊は盤古という中国神話の創造神と同一視されました。
盤古は元始天王 (げんしてんのう) と自称し、四劫(宇宙の寿命の4倍の時間)を経て繋がっていた天地を分離します。
さらに二劫が経過し太元玉女(たいげんぎょくじょ)が誕生。
盤古は彼女と結婚し、天皇 (天上の皇帝) が生まれました。天皇は地皇 (地球上の皇帝) を生み、地皇は人皇 (人間の皇帝) や伏羲、神農などの神々を生みました。
これらの神々は道教誕生以前からいる中国神話の神々ですが、中国神話と道教が融合したことによって、元始天尊の子孫になったのです。
道教の最高神は、創成期は道教の創始者である老子を神格化した太上老君でした。
しかし、後に老子が説く「道」を神格化した太上道君追加され、その後に「太元」を神格化した元始天尊が追加され、最高神となります。
最高神の変遷
道教の最高神は、創成期は道教の創始者である老子を神格化した太上老君でした。
しかし、後に老子が説く「道」を神格化した太上道君追加され、その後に「太元(元号)」を神格化した元始天尊が追加され、最高神となります。
唐の時代に、元始天尊を中心とした道教の教理が完成しました。
そして、元始天尊・太上老君・太上道君の3柱を合わせて、三清と呼び、道教の最高神格としています。
宋の時代になると、人々の中で人気のあった天帝 (玉皇大帝) が最高神として扱われるようになります。
天帝は、『西遊記』で孫悟空に協力したり、七夕伝説の織姫の父親にして恋人たちを引き裂いたりする、中国のさまざまな神話や創作作品に登場する人気な神です。
これといった神話がない元始天尊は、その影に隠れてしまったのかもしれません。
元始天尊の住まう玉京の地
元始天尊は、36層から成っている天上世界の最上階にある大羅天の玄都という都市の中心部にある玉京という宮殿に住んでいます。
玉京の地は黄金が敷き詰められ、階段は純白の大理石でできています。
周囲は金銀宝石で飾られ、庭には霊獣である麒麟や獅子が遊んでいるといいます。まさに、天上界の楽園です。
元始天尊、創作作品では封神演義の知名度が圧倒的
漫画『封神演義』では、主人公である太公望の師匠として登場。
崑崙山と言う仙人界の教主で、3大仙人の1人です。悪の仙人を封印する封神計画を立案し、太公望に実行させた張本人です。
ちなみに、『封神演義』の元ネタである中国の明代に書かれた同題の小説では、同じく太公望の師匠として登場しましたが、自ら戦いに参加するなど、アクティブな側面を見せています。
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ソーシャルゲーム「ひめがみ神楽」では、美少女の姿で登場。
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元始天尊 まとめ
元始天尊は、天帝よりも位が高い神様なのにあまり知名度がないことが残念ですよね。
具体的な神話があれば人気が高まるのかもしれませんが、神話がないのは、人々が触れるには偉大すぎる神だという評価もあるようです。
偉大すぎたが故に、なかなか人気が出ないというのも困りものですね。