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ベルゼブブ、「暴食」の悪魔。至高の王がハエの王に成り果てるまで

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出典:deviantart

ベルゼブブ、「鬼灯の冷徹」にも登場する、7つの大罪では「暴食」を司どる悪魔。

名前からもあまり怖そうなイメージはありませんが、かつては「追放された偉大な王」「魂を支配するもの」とも呼ばれた、旧約と新約聖書両方に登場する数少ない大悪魔です。

もとは太古の嵐と慈雨を司る大いなる神であったとされるベルゼブブ、悪魔にまで堕ちた経緯を探ります。

 

 

至高の王がハエの王になった、なんとも屈辱をたどるベルゼブブ

ウイリアム・ヘイリー作

ベルゼブブユダヤ・キリスト教の悪魔

旧約聖書『列王記』ではベルゼブブ(Beelzebub) 、新約聖書『マタイ福音書』などではベルゼブル (Beelzebul) 、ベルゼバブ、ベルゼビュートとも表記されます。

その名はヘブライ語で「ハエの王」を意味します

コラン・ド・プランシーの描いた羽根に髑髏を描いた巨大な青蠅の醜悪な姿が有名ですが、前身は約束の地であるカナン・エクロンの民に信仰される神バアル・ゼブルとされます。

 

悪魔ベルゼブブ

ルイ・ル・ブルトン作『地獄の辞典』

ベルゼブブはミルトンの『失楽園』ではサタンに次ぐ罪深き悪魔」、新約聖書「マタイ伝福音書」では「悪魔の王」と記されています。

かつてサタンと供に堕天したセラフ(熾天使)あるいはケルビム(智天使)であった天使。

権力と邪悪さではサタンに次ぐと言われ、コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』ではサタンをしのぎ、地獄の最高権力者として君臨しています。

人間には召喚不可能とされる強大なパワーを持つ大悪魔

名を蝿の王とされると姿も巨大な 蝿の姿で記されるようになります。

古代、死体に取り付き白骨化させる蠅を「死の運び手」とみなした事から、ベルゼブブは死神、汚物や死の象徴となり、醜悪さの全てを表す存在として伝承されます。

死骸に卵を産みつけ孵化したウジが死骸を養分とし成虫する蝿は死と再生の象徴とされ、大地とむすびつき、死した魂の支配者として君臨します。

ベルゼブブは蝿だけでなく害虫の多くを支配し 地獄の空軍を統括しています。

また、人間に悪魔を信仰させて、性欲を刺激し、争いをそそのかし、嫉妬心を生み出させます

 

新約外典『ニコデモ福音書』でのベルゼブブはユダヤの民にイエスを処刑させ、冥王ハデスにイエスを永劫に幽閉するよう提言しています。けれどイエスは逆に冥界の死者を解放し、ベルゼブブを捉え、最後の審判の日まで幽閉するよう命じています

新約聖書では、奇跡を起こすイエスをエルサレムの律法学者は「ベルゼブルにとりつかれている」と罵倒、ベルゼブブはここでも悪魔の主として表されています。

 

ハエの王になった至高の王

出典:deviantart

ベルゼブブは元はカナン人たちが崇拝していた最高神、「バアル・ゼブル(至高の王)」と呼ばれていました。

カナンとはアブラハムの子孫に与えるとされた約束の地、旧約聖書時代、カナンの地に入植してきたヘブライ人達はバアル信仰を嫌い、「バアル・ゼブル」をヘブライ語で「バアル・ゼブブ(蝿の王)」と呼び換えてしまいます。

ゼブルがゼブブになったその一言で至高の王だった神は蝿の王になってしまったのです。

さらに新約聖書の時代になると、「バアル・ゼブブ」は「ベルゼブブ」と呼ばれ、「悪霊の王」としてサタンと同一視されるようになりました。こうして悪魔ベルゼブブが誕生しました

新約聖書においてのベルゼブブは悪魔のなかではサタンに並ぶ実力者、地位では劣るものの実力ではサタンを凌ぐとも言われています。また、堕天使として天使時代のルシファーの右腕だったという説もあります。

 

至高の王「バアル・ゼブル」

ベルゼブブの前身バアル・ゼブル「気高き主」あるいは「高き館の主」。バアルとは主にカナン地域で崇められた嵐と慈雨の神。その名はセム語で「主」を表します。メソポタミア神話では天候神アダド、エジプト神話では嵐の神セトと同一視されています。

バアル・ゼブルは最高神イルの息子、勝利の女神アナトの兄にして夫。

海神ヤム(ヤム・ナハル)や死の神モートは兄弟。自然界の水を征する利水・治水の神であることから、慈雨によって実りをもたらし、命を養う糧を与える神として崇められています

ハエは古代宗教において霊魂の象徴、ギリシャでは悪霊を運ぶ存在と認識されていました。そしてウガリットの文献に記されたバアルの権能のひとつが、ハエが運ぶ “病”を駆逐する力であったとされます。

 

ベルゼブブの外見と能力

フレデリック・バーナード 作

これまで描かれていた肖像画は、上の図のようにベルゼブブの高貴なイメージを崩さないものでした。けれど、コラン・ド・プランシーが「地獄の辞典」でM・L・ブルトンの挿絵によって、羽根にドクロの模様がある羽虫の姿で紹介し、以降はそのイメージが定着してしまいます

詩人ジョン・ミルトンは著書「失楽園」のなかで、ルゼブブのことを「賢王にふさわしい威厳ある姿」と紹介。

一方パランジェーヌの「ゾディアコ・ヴィテ」では、「炎の帯を額に巻き、眉毛はつりあがり、頭には大きな角が二本、足はアヒル、尻尾は獅子」と表現しています。

 


 

美少女・赤ん坊にもなるベルぜブブ、実はご多忙

ベルゼブブ嬢のお気に召すまま」は大食漢で怪力の持ち主のゆるふわ少女。

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『鬼灯の冷徹』のベルゼブブはEU地獄の王サタンの右腕、カッコつけのナルシスト

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べるぜバブ」ではやんちゃでキュートな魔王の息子ベル坊。

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そしてお馴染みドラクエのベルセブブ。通称「ハエおとこ」、その最上位種は「ベルザブル」。

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ベルゼブブ まとめ

出典:deviantart

至高の王とまで称されて崇められた偉大なる神が、宗教の派閥争い(?)でハエの王、果ては悪魔にまで堕とされてしまう、なんとも可哀想としか言いようのないベルゼブブ。しかしながら、最近では色々な作品での登場でご多忙です。

慈雨の神が、真逆のキャラを演じる、これも化身としてアリかも。

すみません、バアル・ゼブル、バチが当たりませんように。。。

 

 

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