
ベルセブブ、「鬼灯の冷徹」にも登場する、7つの大罪では「暴食」を代表する悪魔。
名前からもあまり怖そうなイメージはありませんが、かつては「追放された偉大な王」「魂を支配するもの」とも呼ばれたこともある強面。旧約聖書と新約聖書に両方登場する数少ない悪魔です。
もとは太古の嵐と慈雨を司る大いなる神であったという説もあるベルセブブ、悪魔にまで堕ちた経緯を探ります。
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至高の王がハエの王になった、なんとも屈辱をたどるベルセブブ
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ベルゼブブは元はカナン人たちが崇拝していた最高神、「バアル・ゼブル(至高の王)」と呼ばれていました。
カナンとはアブラハムの子孫に与えるとされた約束の地、旧約聖書時代、カナンの地に入植してきたヘブライ人達はバアル信仰を嫌い、「バアル・ゼブル」をヘブライ語で「バアル・ゼブブ(蝿の王)」と呼び換えてしまいます。
ゼブルがゼブブになったその一言で至高の王だった神は蝿の王になってしまったのです。
さらに新約聖書の時代になると、「バアル・ゼブブ」は「ベルゼブブ」と呼ばれ、「悪霊の王」としてサタンと同一視されるようになりました。こうして悪魔ベルゼブブが誕生しました。
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新約聖書においてのベルゼブブは悪魔のなかではサタンに並ぶ実力者、地位では劣るものの実力ではサタンを凌ぐとも言われています。また、堕天使として天使時代のルシファーの右腕だったという説もあります。
サタンの地位が時代や文献によって野党の首領だったり、三級の悪魔であったりするのに対して、ベルゼブブは一貫して悪魔の首領格とされることから、サタンよりベルゼブブの方がキリスト教にとって邪悪な悪魔であったのかもしれません。
至高の王「バアル・ゼブル」
ベルゼブブの前身バアル・ゼブル、バアルとは主にカナン地域で崇められた嵐と慈雨の神。その名はセム語で「主」を表します。メソポタミア神話では天候神アダド、エジプト神話では嵐の神セトと同一視されています。
バアル・ゼブルは最高神イルの息子、勝利の女神アナトの兄にして夫。
海神ヤム(ヤム・ナハル)や死の神モートは兄弟。自然界の水を征する利水・治水の神であることから、慈雨によって実りをもたらし、命を養う糧を与える神として崇められています。
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ベルゼブブの外見と能力
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詩人ジョン・ミルトンは著書「失楽園」のなかで、ベルゼブブのことを「賢王にふさわしい威厳ある姿」と紹介しています。
一方パランジェーヌの「ゾディアコ・ヴィテ」では、「炎の帯を額に巻き、眉毛はつりあがり、頭には大きな角が二本、足はアヒル、尻尾は獅子」と表現しています。
ベルゼブブは蝿だけでなく害虫の多くを支配し 地獄の空軍を統括しています。また、人間に悪魔を信仰させて、性欲を刺激し、争いをそそのかし、嫉妬心を生み出させます。
ベルゼブブの肖像画
これまで描かれていた肖像画は、上の図のようにベルゼブブの高貴なイメージを崩さないものでした。
しかし、コラン・ド・プランシーが「地獄の辞典」でM・L・ブルトンの挿絵によって、羽根にドクロの模様がある羽虫の姿で紹介し、以降はそのイメージが定着してしまいます。
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美少女にもなるベルセブブ、実はご多忙
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漫画「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」ではなんとモフモフが大好きなゆるふわ少女として登場します。
しかし見た目とはうらはらに「暴食」を司る悪魔であるため、大食漢で怪力の持ち主であり、かつては魔界の反乱分子を撃退していたなど、数々の武勇伝をもっています。
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田季節氏原作の異世界転生を題材にしたライトノベル、「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」では魔族の国のキュートな「ハエの王」として登場しています。
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『聖☆おにいさん』では堕天使王ルシファーのフェイスブック友達。長い前髪とギザギザの歯を持つ小柄な少年として登場。
そしてお馴染みドラクエのベルセブブ。通称「ハエおとこ」、その最上位種は「ベルザブル」。
悪霊 ベルゼブブまとめ
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至高の王とまで称されて崇められた偉大なる神が、宗教の派閥争い(?)でハエの王、果ては悪魔にまで堕とされてしまう、なんとも可哀想としか言いようのないベルゼブブ。しかしながら、最近では色々な作品での登場でご多忙です。
慈雨の神が、真逆のキャラを演じる、これも化身としてアリかも。
すみません、バアル・ゼブル、バチが当たりませんように。。。