ドラクエで子供の頃から馴染みのグール。くさった死体の上級モンスターのイメージが定着していますが、元はアラブに伝わる人肉を喰らう怪物、あるいは悪魔。
正しくはゾンビ(死体)とは別モノ。雌雄や知性もあるモンスター。なので、今回はグールを徹底究明したいと思います。
グールの意外な生態や、ゾンビとグールの違いについても再考です。
目次
グールとは
出典:ウィキペディア
グールは、アラブの伝承に登場する怪物、あるいは悪魔の一種。女性のグールはグーラ。
死体を食べることから日本では屍食鬼・死食鬼(ししょくき)、食屍鬼(しょくしき)と呼ばれます。
グールの生態
本来はアラビアのジン(精霊)の一種、もしくは死体にジンが取り憑いたもの、サキュバスなどの夢魔に近い存在などとしても伝承されています。
砂漠に住み、体の色や姿も自由に変えることができる悪魔、特にハイエナを装うのを好みます。
人間の死体や、生きた人肉、旅行者や小さな子供を食べることもあります。グールが人間を食うのは、単に食欲を充たす為だけではなく、人肉、特に心臓を食らう事で性的快楽を得ることができるのだとも伝えられています。
グールは卵から生まれ、雌雄があり、雌は子供に授乳して育てます。
女のグーラは美女に化け男を誘惑して捕獲して食べる、ひとり旅の男性を狙って、奪える限りの精気を吸い尽くすともいわれています。
けれど、人間がグーラの乳を吸うとグールと仲間になるとも伝えられています。
グールはアラブでは、知能や社会性をもった存在として伝承されています。善良なグールも存在し、アラブの神アッラーフによって生み出されたジン(精霊)として扱われることもあります。
グールに親切にして丁寧な態度で接すると、助言や恩返ししてもらえることもあるとか。また、家族のいるグールもいて、家族と同様に扱ってもらえることもあると伝えられています。
グールは女をさらい、自分の城で世話をさせたりすることがあります。ある時、グールから助け出した娘がその後卵を産み、その中には半ば形のできた死んだグールが入っていたということです。
グールの変身能力は体色を保護色に自在に変える能力と、姿かたちを変えてあらゆる人間や動物などの生物人間に化ける能力があります。そのためアラビア語には「グールのように色を変える」「グールが色を変えるように気まぐれ」などの表現にも使われています。
そしてグールの大きな特徴のひとつは、彼らはきわめて高い再生能力を持つ存在であるというところ。首を切り取られても手足をもがれても、すぐに元に戻ってしまいます。
グールの外見
出典:pixiv
グールは自由にその姿を変えられるという能力をもつため、外見的な伝承については幾つかの説があります。生きた人間と変わらない容姿であることもあれば、見るもおぞましい怪物である場合もあります。
毛むくじゃらで、もじゃもじゃの髪、歯が顎まで垂れ下がった者。
犬のような顔立ち、カビの生えたあるいはカビ臭い皮膚、突き立った耳、血走った目。
手は骨ばって、鱗に覆われていて鈎のように曲がり、脚には蹄がある。
ちなみに、アラビアの絵画ではしばしば「毛深い黒人」のような姿で描かれています。
ただし女性については、ほとんどが絶世の美女。セクシーな姿で男性を物陰に誘い、その肉に食らいつきます。
グールの殺傷法
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グールは基本的には再生能力が高く不死身ですが、鉄が弱点で、特に偃月刀(シミター)で腹部を一撃で切り割ると呆気なく死に至ります。
けれど、一旦傷を負わせ、とどめを刺すためにもう一度切りつけると、逆に傷口が塞がって復活してしまいます。そして、首や手足であればいくらでも再生できるのに、なぜか腹だけはその傷口を塞ぐことができないのです。
これを防ぐには聖水か火を使って身体を焼き切ります。
グールの防御法
イスラム社会では実在の存在として恐れられ、グールに出会った時の対策方の伝承も数多く存在します。
出会った時、人間が先に「あなたに平安がありますように」(~サラーム)と挨拶すると食い殺されないということです。
預言者ムハマンドは言行録『ハディース』の中で、グールから逃れるにはアザーン(「神は偉大なり」という意の句「アッラーフ・アクバル」)を繰り返し唱えると良いと記しています。
ここが違う、グールとゾンビの比較
画像出典:pinterest
グールとゾンビはゲームや映画の世界では同じリビングデッド(生ける屍)として混同され、イマイチ違いがはっきりしないように思います。
けれど、もちろん両者はまったく違う存在です。
グールはアラビアの伝承に登場する怪物あるいは悪魔やジン(精霊)である場合もあります。
雌雄があり、意思や思考を持ち、会話もできて、子供も生まれる存在。
ゾンビは黒魔術ブードゥーによって蘇らせた死体。意思もなく善悪の判断もできず、雌雄もない、会話もできない。もちろん子供も作れません。
フィクションの中のグール
出典:pixiv
「クトゥルフ神話の中のグール」
クトゥルフ神話は小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが小説に登場させた事物をまとめた架空の神話。その中に登場するグールはゴムのような皮膚を持つ食屍鬼。犬のような前屈みな二足歩行で、かぎ爪を持つ不潔で不愉快な印象を与える怪物。
早口で、泣くような独特の話し方をします。 食料は人間や動物の死骸や排泄物。
グールは人間と交配して子供を作ります。また、しばしばグールは人間の赤ん坊と自分たちの赤子を入れ替える(所謂チェンジリング)ことがあります。取り替えられグールに育てられた人間の子供は、屍肉を食べて育ち、グールに成長することになります。
また死んだ人間がグールになったり、生きた人間でもグールに変身することができるといいます。
グールは生物であり、単独の種族です。
元々は魔法で姿を変えられた人間なのではないかという説も存在しています。
クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
「ダンジョンズ&ドラゴンズの中のグール(食屍鬼)」は
出典:hobbyjapan.
生者の肉を求めてやまず、飢えにかられて時を選ばず獲物を狩る。彼らは敵を動けなくしておいて、まだ生命のぬくもりに満ちた肉を食らうのである。
人食いをした人型生物は、死後にグールになるのだという。また、グールは儀式によっても作られる。ひとたびグールとなった者は、生前の心配や関心や目的を忘れはて、アンデッドの飢え餓えた衝動にのみ動かされる。 公式サイト
ドラゴンクエストでのグール
『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』で初登場しています。グールの仲間には「くさった死体」や『どくどくゾンビ』がおり、『ギラ』を連発するのが特徴。
比較的初期段階に登場し、勇者たちの仲間として活躍した経験も有します。
「東京喰種トーキョーグール」
出典:pinterest
現代の東京に生存する、人間の肉を喰らう喰種(グール)と呼ばれる怪人をテーマとした作品。主人公カネキは喰種に襲われ、喰種の臓器を移植されたことで半喰種になってしまいます。
東京喰種トーキョーグール リマスター版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
グールまとめ
出典:pinterest
こうして改めてグールを見てみると、リビングデッド系、死者(Dead)ではないですよね。
ドラクエのグールはかなりダンジョンズ&ドラゴンズに影響されているようです。
知性があって善良なグールもいる、ジン(精霊)の一種って、どちらかといえば狼男やヴァンパイアに近い存在のように思います。
そうしてみるとグールのイメージがかなり違って見えてきます。