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アスラ、阿修羅。釈迦を守護する神は、神に敵対する魔族

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各地の仏閣で目にする阿修羅像。

実は阿修羅は本来、ヒンドゥー教の神であることはご存知ですか?

 

ヒンドゥー教でアスラと呼ばれる彼らは、仏教では釈迦を守護する神ですが、元はデーヴァ・(神々)に敵対する魔族。

 

デーヴァ以上に時代や宗教によってその存在が異なっているのです。

 

 

アスラ、阿修羅、神になった魔族

インドラがヴリトラスーラに勝利する

アスラとは

ドゥルガーと戦うシュンバ、ニシュンバ兄弟のアスラ王

アスラは(Asura)、インド神話、ヒンドゥー教で伝えられる神々、あるいは魔族

仏教に取り入れられ、阿修羅として日本に伝えられています

光であるデーヴァ(神)に敵対する闇の存在

デーヴァ→

 

インド神話ではヤクシャ(精霊)、ラークシャサ(悪魔)ブータ(幽霊)とともに語られる超自然な存在

 

ヴェーダ理論の一つ『カイパー』では、空は神々の世界、地下はアスラの世界

アスラは地下にあるとされる黄金郷・ヒラニヤプラや7つの地底世界・パーターラに住むと伝えられています。

 

乳海攪拌においてアムリタを飲めず、不死になれなかった存在

けれど厳しい苦行によって神々をも超越する力を獲得

幾度となく神・デーヴァから天界を奪うことに成功しています

 

時代とともに神、悪魔、神に変貌を遂げるアスラ

インドラ

本来、アスラは神々 (ディーヴァ神族) と同等の地位を持つ存在でした

古代インド、ヴェーダ文献の初期では、アスラは「主」を表し、デーヴァ(神)の称号のひとつとして用いられていました。。

火の神・アグニや雷・英雄神インドラなども、その神格や能力の「支配者」という意味でアスラと呼ばれました。

インドラ→

 

けれど、バラモン教がヒンドゥー教に発展した際、ヴィシュヌを中心とする神々への信仰が高まるようになります

同時に、アスラはその暗黒的な能力によって「神々と敵対する魔族」と解釈されるようになります

 

後期ヴェーダ文献では、アスラは幻力・呪力を用い破壊的な性質を持つ種族。

悪意あるアスラは善なる神々・デーヴァの敵、魔族と見なされるよになります

 

善なるアスラ

イヴリンポール作 象に打ち勝つプラフラーダ

ただし、全てのアスラがデーヴァの敵対者ではありません

アスラは善と悪の両面を持つ超自然な存在

アスラ族の中にも善行を施す者や、神々と同等にその能力や精神的に卓越したアスラも存在しています。

 

初期のヴェーダ文献では

◾️   善なるアスラはアディティヤ

ヴァルナに率いられる女神アディティの息子たち

◾️   悪意あるアスラはダナヴァ

巨大な蛇の怪物ヴリトラに率いられる種族

とされます。

 

アスラの語源

アスラの語源には解釈がいくつかあります。

⚫︎神であったアスラは「存在する、ある」の「as」、「生気、活力」の「asu」

⚫︎悪神となったアスラは「神、神格」の「sura(スラ)」に否定の「a」を加えて「a-sura」「神ではないもの」を意味します。

⚫︎4つのヴェーダ聖典の中の一つ、サマヴェーダの『ジャイミニヤ』ではアスラは「生命の風(アス)」の「休息」(ラム)

 

ブッダゴーサ(5世紀の仏教哲学者)は、アスラの名は魔族(悪しきアスラ)がインドラ神に倒された際に生まれたとしています

その際彼らは二度と悪性の酔いをもたらす酒スーラを飲まないと誓っています。

 

アスラの誕生

アスラの誕生にも複数の説が存在します。

⚫︎   ヒンドゥー教の聖典『ヴィシュヌ・プラーナ』での、アスラは創造神・ブラフマーの太ももから生まれたというのが一般的です。

 

また『ヴィシュヌ・プラーナ』の中で、

サムドラ・マンタナ(乳海攪拌)の際、

⚫︎「アスラ族の祖と呼ばれるディティの息子たち)は酒の女神・ヴァルニを拒絶したためアスラと呼ばれるようになり、デーヴァは彼女を受け入れてスーラと呼ばれるようになった

と伝えています。

乳海攪拌→

 

代表的なアスラ

アスラは元々は呪力や幻力(マーヤー)を持つ法や天則を司る神々の称号

アスラの中には多くの善なるアスラも存在しています。

⚫︎ ヴァルナ(Varuṇa)

ミトラ(太陽神・契約の神)とならぶ最高神 天空神

⚫︎ルドラ(rudra) 暴風神

⚫︎ヴリドラ(Vṛtra) 蛇(竜)の怪物

⚫︎アグニ (agni) 火神

⚫︎インドラ(Indra)、

雷。英雄神 “アスラたちの君主”ともされます

⚫︎ディヤウス(dyaus) 天空神、雷、雨、豊穣を司る神

⚫︎ジャランダラ(Jalandhara) シヴァの破壊衝動から誕生

⚫︎アンダカ(Andhaka) シヴァの里子

⚫︎マヒシャ(Mahisa )

ブラフマーを信仰し「如何なる男や神にも敗北しない能力」を授かります。デーヴァ神族の王インドラをを倒し、デーヴァ神族を追放、一旦は天界を征服しています。

⚫︎ヒラニヤカシプ(Hiranyakashipu)

プラフラーダの父ブラフマー神から「神にもアスラにも、人にも獣にも、昼夜、屋内外、地上。空中、どんな武器でも殺されない体」を授かり、天界を奪っています。

⚫︎ガジャースラGajasura)

ルドラあるいはシヴァによって退治された「象の悪魔」

⚫︎プラフラーダ(Prahlāda) ヴィシュヌ神を献身的に信仰

⚫︎バーナースラ(Bānāsura) シヴァ神の熱烈な信仰者で、加護を受けたシヴァ神の友、

⚫︎マハーバリ(Mahabali) ヴィシュヌに帰依して大悟を得て地底界を治め、優れた君主となった

⚫︎ジャランダラ(Jalandhara) 人間に善政を敷いたあらゆる種族を繁栄させる王

 

阿修羅になったアスラ

阿修羅とは

アスラは仏教に取り入れられ、仏教の守護神・阿修羅(あしゅらasura)となります

八部衆または二十八部衆に属する、六道の1つである修羅道(阿修羅道)の主

法華経では善趣の存在とされています

性格は闘争を好む鬼神。

三つの顔と六本の腕(三面六臂)の姿で知られ、日本では興福寺の阿修羅像が国宝に指定されています。

 

「起世経」によれば、

身長は1由旬(11.3km~14.5km)、

寿命は1日が人間の100年で1000歳(1,000,000歳)

「正法念処経」では5000歳とされています。

 

「阿含経」と「正法念処経」では、神通力を持つ餓鬼の阿修羅と、海底84000由旬に住まう畜生道の阿修羅がいるとされています。

 

阿修羅道(修羅道)

阿修羅道(修羅道)とは、人間が輪廻転生する6種の世界、六道のひとつ。

六道とは地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天道の6つの冥界をいいます。

そのうちの

天道、人間道、修羅道を三善趣(三善道)

畜生道、餓鬼道、地獄道を三悪趣(三悪道)

といいます。

 

修羅道は人間道の下。

心の迷い、邪気に苦しむ争いの世界。

 

「正法念処経」「大智度論」によれば、衣食は上質なものが得られますが、口にする食事の最後を食べ終わる時、口の中に泥が広がり、満足できないものになるとされています。

 

阿修羅と帝釈天

ヴリトラを倒すインドラ

ヒンドゥー教の多くの悪しきアスラも前なるアスラのインドラに倒されていますが、仏教においての阿修羅(アスラ)も帝釈天(インドラ)との戦いが諸経の中で語られています。

修羅場の熟語もそこから生まれたとされます。

 

仏教においての阿修羅は正義を司り、帝釈天は力を司る神とされる共に戦闘神

 

阿修羅の一族は、須弥山の頂上に位置する忉利天(とうりてん、三十三天)に住まいます。

そこは第二の天界とも呼ばれる、帝釈天が統治する天部や神々が住まう地。

 

阿修羅には舎脂という娘がおり、正義を司る阿修羅は帝釈天に嫁がせたいと思っていました

けれど力を司る帝釈天は舎脂を力ずくで奪います

それを怒った阿修羅は帝釈天に戦いを挑みます。

幾度となく阿修羅は帝釈天に倒されますが、その度ごとに蘇り、帝釈天との戦いは永遠に続くとされています。

 

 

一族の総称ではなく、個人の名前であることが多いアスラ・阿修羅

アクションゲーム「アスラズラース」では、主人公として登場しています。国を守るために仲間から裏切られ、1万2000年の時を経て、復讐を遂げるために復活します。

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キン肉マン』のアシュラマンはクモの化身超人アシュラ一族の王家の生まれで、悪魔六騎士の一人で“竜巻地獄”の肩書を持つ悪魔超人のエリート。

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『妖怪ウォッチ』のイサマシ族のあしゅら君は乙姫と対のテンプラ限定のレジェンド妖怪。

シャドウサイドではアシュラ豪炎丸に宿る剣武魔神になります。

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『NARUTO』の大筒木アシュラは六道仙人・大筒木ハゴロモの二人の息子の弟。兄は大筒木インドラ。

後継者争いが元で兄と弟の確執が生まれ、後世まで続く戦いとなってゆきます。

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人気ゲーム『桃太郎伝説』のあしゅらは人気の青鬼。シリーズ随一のイケメン(?)

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「マジンガーZ」のあしゅら男爵はマジンガーZに敵対する、右半身が女、左半身が男というミイラを組み合わせて作られたサイボーグ。

 

 


アスラ・阿修羅 まとめ

魚のマツヤに化身したヴィシュヌに倒されるダナヴァ

アスラは元々はその荒々しい性格と神格によって魔族とされた神。

怒りや憎しみは人間らしい感情。

個人的には、絶対的な善であるデーヴァより親近感や好感がもてます。

 

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