日本では人は、死ぬと天国か地獄へ行くと考える人が多いのではないでしょうか。
しかし、日本神話には古来より地獄に似た「黄泉」という概念が存在します。
けれど、「隠り世」と「黄泉」そして「地獄」、これだけ種類があると、それぞれどんなところなのかよくわからない。
そこで今回は、「黄泉」に焦点を当てて探ります。
「黄泉」と「地獄」の違いとは?
目次
黄泉国とは
「黄泉(よみ)」とは、死後の世界。魂が死後に行くところ。
現世とつながったところにある、死者の住むとされる地下の国。
黄泉を「よもつくに」とも呼びます。
根の国(スサノオの治める国)、あるいは他界、罪や穢(けがれ)の集まるところとも考えられています。
「黄泉(よみ)」の語源については諸説ありますが、漢語で「黄泉(こうせん)」、「地下の泉」を意味し、それが「地下の死者の住む世界」をあらわすようになったとも考えられています。
「黄泉」は「蘇る」、「死んだ人が生き返る」ことの語源にもなっています。
「死者が黄泉から帰る」、本来は「黄泉帰る」と表したものが「蘇生」で使われる「蘇」という漢字が当てられ、「蘇る」となったもの。
日本神話における『黄泉の国』
仏教が日本に入ってくるより以前、死んだ人は黄泉の国に行くとされていました。
黄泉の国とは古事記や日本書紀などの日本神話において、死者が行く世界のことを指します。
死後には3つの世界が存在するとされていました。
- 高天原 天上界にあり神々が住む尊い世界
- 常世の国 人間の霊が住む他界
- 黄泉の国 地下にある「根の国」「底の国」を含めた冥界。
ちなみに「隠り世」とは「常世」。「現世(うつしよ)(げんせ)」に対(つい)する「永久」を意味する死後の世界。黄泉を含む、あるいは同一視されます。
古事記の中の「黄泉」
《古事記》に記述される黄泉の国には黄泉神という王がおり、黄泉比良坂という坂によって地上と繋がっています。
その黄泉比良坂には黄泉醜女(よもつしこめ)(一飛びで千里(約4,000キロメートル)を走る足を持つ鬼女)や八雷神(やついかずちのかみ)などの番人たちが出入りを固めています。
《古事記》によると,イザナギ は死んだイザナミを追って黄泉国へ行きます。「見ない」という約束を破り、醜く腐乱したイザナミの変わり果てた姿を見てしまいます。驚いたイザナキは黄泉比良坂(よもつひらさか)まで逃げもどり,追手を「千引石」(ちびきのいわ)でふさいで生還。
この時、追ってくるイザナミや黄泉の醜女(しこめ)達を退けるため、黄泉路をふさいだ大石を、道反の大神(ちがえしのおおかみ)といい、現代でも岐神(くなどかみ)(魔除けの神)として、日本各地で祀られています。
** 聖書の中の黄泉 **
死者が行く場所「黄泉」は英語で「Yomi」と表します。新約聖書では「ハデス」、旧約聖書では「黄泉」の原語である「シェオル」と表記されます。
仏教の伝来で広まった『地獄』という概念
「黄泉」が太古の日本で考えられていた死者が行く国であるのに対し、「地獄」は仏教が日本に入ってきたときに広まった概念です。
悪いことをした人が死んだあと、生きていた頃の罰を受ける世界とされています。
ちなみに、地獄と訳される死後の世界は仏教、キリスト教、イスラム教など各宗教に存在しますが、日本でイメージされる地獄は仏教の概念のものが主。
仏教における地獄は、三途の川を渡り、閻魔の裁きを受けたときに罪の重かった者がその罪に合った地獄に送られます。
なので、仏教における地獄はいくつも存在します。
その後、罰を受けて懲役を終えた魂は輪廻転生によって次の世界に生まれ変われるといいます。
意外に人気キャラになる、黄泉
スマホゲーム「モンスターストライク」で話題になったキャラクター、「黄泉」。その名の通り、日本神話の「黄泉の国」が元ネタになっています。旧帝国軍の青年が戦地で命を落とす寸前に黄泉に選ばれ、「黄泉」という存在そのものになったという設定のキャラクター。
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「幽遊白書」の黄泉は魔界都市「がんだら」を統べる者。何百人の手下を抱える御三家妖怪の一人です。
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アニメ「喰霊―零―」の諌山黄泉(いさやまよみ)は悪霊を除霊する秘密組織「超自然災害対策室」所属のエージェント。 神童と呼ばれるほどの剣の達人。宝刀「獅子王」と、それに宿る霊獣、鵺「乱紅蓮(らんぐれん)」を継承し使役する、17歳の高校生。
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黄泉国 まとめ
死後の世界として、イメージを混同しがちな「黄泉国」と「地獄」。
日本の宗教観は、日本神話と仏教などが絡み合い、何やらややこしい気がします。
けれどその成り立ちを追っていくと、この国の神話や伝承のおもしろさが見えてくるかもしれません。