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北欧神話最初の戦争といわれるヴァン戦争は、1人の女性によって引き起こされました。
彼女の名前はグルヴェイグ。
ヴァン神族の一員にして神々を堕落させた魔女。
フレイヤ・フレイがアース神族になった原因を作っています。
目次
グルヴェイグ、黄金と快楽の魔女
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グルヴェイグとは
グルヴェイグ (Gullveig)は、ゲルマン神話に登場するヴァン神族の女神です。
その存在は『詩のエッダ』で語られています。
名前は「黄金の力」を意味し、一説には神さえも堕落させる黄金の擬人化だとも言われています。
多くの学者たちは、グルヴェイグは女神フレイヤと同一人物であるとしています。
詩のエッダ『巫女の予言』のグルヴェイグ
ヴァン神族は魔術に長けた一族で、特にグルヴェイグは、性的快感を伴ながら、魂から肉体を解き放つことができるセイズ呪術の使い手でした。
ある時、グルヴェイグはアース神族が暮らすアスガルドを訪れ、アース神族の女神たちにセイズ呪術を教えます。
女神たちはセイズ呪術に夢中になり、堕落してしまいました。
アース神族の男神たちはこれを問題視し、グルヴェイグを捕らえて処刑します。
処刑はオージン(オーディン)の館の広間において身体を槍で貫き、火あぶりにするというものでした。
しかし、不死身であるグルヴェイグは蘇り、3度目にようやく処刑できました。
あるいは処刑できなかったともされています。
また、肉体は焼かれましたが、心臓は残り、アース神族のいたずらの神・ロキに食べられたとも伝わっています。
グルヴェイグが処刑されたことを知ったヴァン神族は怒り、アース神族とヴァン神族は戦争を始めます。
この戦争をヴァン戦争といい、ゲルマン神話最初の戦争となりました。
ヴァン戦争はお互いの一族が人質を交換することで終結し、これによってアース神族にフレイやフレイヤが加わったのです。
スノッリ・ストゥルルソンの『ユングリング家のサガ』では人質としてヴァン神族のニョルズと息子のフレイの二柱がアース神族に迎えられたとしています。
妹のフレイヤは父、兄とともに自らアース神族の仲間入りをしています
その理由として、フレイヤはグルヴェイグという名ですでにアースガルズにいたからと推測されています。
グルヴェイグという魔女は
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グルヴェイグは、同じくヴァン神族であった愛の女神・フレイヤであるという考えがあります。
フレイヤもセイズ呪術を使えたこと、ノルウェー王朝の歴史書『ヘイムスクリングラ』に「フレイヤがアース神族にセイズ呪術を教えた」という記述があることが理由です。
また、名前の由来でもある「黄金」は、古代ゲルマン人にとって非常に重要なものでした。
黄金はステータスの象徴でもありましたが、同時に、黄金に溺れることは堕落であり、恥ずかしいこととされました。
グルヴェイグ、神話の設定を忠実に引き継ぐ魔女
ゲルマン神話をテーマにしたゲーム「ヴァルキュリーコネクト」には、女神の1柱として登場しています。フレイヤに容姿が似ており、快楽が大好きな妖艶な魔女です。闇属性と水属性の攻撃が得意です。
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『ファイアーエムブレム ヒーローズ』のグルヴェイグは光の国ヴァナの女神セイズが、黄金の魔女となった姿。
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グルヴェイグ まとめ
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グルヴェイグが黄金の擬人化であるという説は興味深いです。
男神たちが女神を堕落させたグルヴェイグを処刑したけれど死なないというのは、黄金=欲を象徴していると思えます。
神々にも人間のような側面があると思えるエピソードではないでしょうか。