出典:deviantart
オーガはヨーロッパ伝承の怪物。
「長靴を履いた猫」や「ジャックの豆の木」の中で、ネズミになって猫に食べられたり、地上に落ちたりの巨人のヤラレ役。
彼らはこのオーガ族なんです。
そしてあのシュレックも実はオーガ。
オーガとはこんなにドジで間抜けた心優しい関西弁の怪物なのか、その実態に迫ります。
伝承の中の人食い巨人・オーガ、
シュレックファンには意外なルーツかも。
目次
オーガ、人食い巨人

ジョバンニ・ランフランコ作 オウガに発見されたノランディーノとルキナ 1624年
オーガ(ogre)は巨大な身体、驚異的な怪力の、人肉を喰らうヨーロッパ伝承の怪物。
女性はオーグリス( ogress)、フランス語ではオグル( ogre)女性はオグレス(ogresse)と呼ばれます。
日本語では『鬼』と解釈されます。
「長靴を履いた猫」や「ジャックと豆の木」の巨人など、様々な童話に登場。
あのシュレックも実はオーガ族。
人間の知恵に倒されてしまう。
いささか情けないような存在のようにも思われます。
ルーツ

テオドール・キッテルゼン作、1906年 スコグトロール(森のトロル)
オーガ(オグル)は、元々ははっきりとした名前がなかった人食い怪物。
オーガ(オグル)という名前はシャルル・ペローの小説『長靴をはいた猫』で与えられています。
名の由来は、
- ローマ神話の地下神オルクス
- 北欧神話の主神オーディンの異名ユッグ
- 遊牧民族オノグル族の名前から来ているともいわれます。
オノグル族は勇猛果敢な戦い方と残虐な性格で恐れられた東欧や中央アジアの種族。
オノグルの「恐ろしい種族」というイメージが合わさり、オグル、オーガ、「鬼」「人食い怪物」の名になったのではないかと考えられます。
スカンジナビア半島の地域でのオーガはトロールと関連付けられた存在。
莫大な財宝を蓄え、山奥の城に暮らしています。
外見

J・R・スケルトン作 グレンデル
外見は人型で、醜悪な大男。
身長は2~5m。
オーガの中には魔法を使うものもいて、巨大化したり縮小したり、動物や物に姿を変えることができるといわれています。
性格・生態
性格は凶暴で残忍、人間の生肉を好みます。
住処は大きな宮殿や城、地下や洞窟に居を構え、財宝を貯め込んでいたりする欲深かな性格。
丘や山にひそみ、しばしばふもとの村や人家を襲撃することも。
食糧としては若く美しく高貴な外見の女性を好み、金品財宝の略奪という非道の限りを尽くします。
伝承によっては魔法を使えるものもいますが、知能は獣程度。
引っ込み思案で臆病という面もあり、自分より弱い相手には強気な半面、自分より強いものや未知のものには怯え、従うといいます。
他の種族との交流は苦手で非社会的。
子供のとんちに倒されたり、不意を突かれて泣きながら逃げることもしばしばあるようです。
童話の中のオーガ

ギュスターヴ・ドレ作(1862年)『ホップ・オ・マイ・サム』
ヨーロッパの伝承の中に存在する邪悪な怪物を総称してオーガと種類付けると、
童話の中のオーガ
代表的なものとして
『ホップ・オ・マイ・サム』リトル・サム、リトル・プーセ

ギュスターヴ・ドレ作画、1862年
『ホップ・オ・マイ・サム』はシャルル・ペロー(グリム兄弟に影響を与えたフランスの童話作家)が1697年に著した『過ぎ去りし時の物語』の8つの童話のひとつ。
世界的に有名な作品のひとつです。
あらすじ
貧しい木こり夫婦は、子供達を養うことさえできなくなり、森に置き去りにしようと相談します。
その話を聞いていたホップ・オ・マイ・サムは、森に向かう途中、川から拾った白い小石を道しるべにして、兄弟たちを家まで連れて帰ります。
けれど、再び森に連れられ、そのときパンくずを道しるべにするのですが、鳥たちに食べられ、森で迷ってしまいます。
サムは木に登り、遠くの光を見つけ、そこへ向かいます。
けれどそれはオーガの家でした。
オーガは少年たちを迎え入れ、娘たちの部屋に寝床を用意します。
けれど夜中、目を覚ましたオーガは眠っている少年たちを殺そうとします。
けれど、それを恐れたホップ・オ・マイ・サムは、先に、娘たちの金の冠と兄弟たちのボンネットを取り替えていました。
それを知らないオーガは娘たちを殺し、再び眠りにつきます。
オーガが寝入った後、サムと兄弟たちは家から逃げ出します。
翌朝、事態に気付いたオーガは魔法の長靴を履いて少年たちを追いかけます。
オーガに追いつかれそうになったサムたちは小さな洞窟に隠れます。
オーガは疲れ、サムたちが隠れた洞窟の近くで休んでしまいます。
オーガが寝入っている隙に、サムは先に兄弟たちを家に帰し、そっとオーガから履いている一歩ごとに七リーグの歩幅で歩くことができる魔法のブーツを外します。
その『七リーグブーツ』は履くと魔法の力でサムの足にぴったりのサイズに変わりました。
サムはそのブーツを使って大金を稼いて家に戻り、ずっと幸せに暮らしました。
長靴を履いた猫

ギュスターヴ・ドレ作
『長靴をはいた猫』は1550年頃に出版された、イタリアの作家・ジョヴァンニ・フランチェスコ・ストラパローラの著作『ストラパローラの奇想天外な夜』に収録されている『コスタンティーノ・フォルトゥナート』(「幸運なコスタンティーノ」)が原題。
猫に変装した妖精が、コスタンティーノという飼い主が鬼の財産を手に入れ、王女と結婚し、幸せに暮らすのを助けます。
あらすじ
ある粉挽き職人が亡くなり、3人の息子にそれぞれ、粉挽き小屋、ロバ、猫が遺産として与えられす。
猫を相続した末の息子が嘆いていると、猫は主人に話しかけます。
「私に長靴と袋を下さい。そうすればあなたの相続が、そんなに悪いもんでもないことが近いうちに分かります」と。
長靴と袋をもらった猫はまずウサギを捕まえ、王様に献上。
幾度か王様に物品を献上し、王様に取り入った猫は主人を「カラバ侯爵」と紹介し、その居城に王様を招待します。
その居城はオーガの所有地でしたが、猫は道で出会う領地の百姓に『カラバ侯爵様の所有地です』と答えるよう脅します。
そして、言葉巧みにオーガを鼠に姿を変えさせ、捕まえて食べてしまいます。
猫が馬車を先導し、城に着きます。
王様は「カラバ侯爵」の領地の広さに感心。
猫は「カラバ侯爵の城にようこそ!」と迎え入れます。
姫も主人を気に入っているようで、王様は娘婿になってくれるよう申し出、二人はその日のうちに結婚。
猫も貴族の身となって、鼠捕りは趣味でやるだけになります。
ジャックと豆の木

アーサー・ラッカム 作
『ジャックと豆の木』は、古代のイギリスの童話
1734年、 J・ロバーツによって「ジャック・スプリギンズと魔法の豆の物語」として出版。
1890年、ジョセフ・ジェイコブズ修正版を出版。現代ではそのジェイコブス版が広く知られています。
あらすじ

アンドリュー・ラング作『赤い妖精の本』(1890年)
貧しい田舎の少年ジャックは、市場に牛を売りに行き、その代金の金貨を一握りの魔法の豆と交換してしまいます。
怒った母親は豆を家の庭に捨ててしまいます。
豆は雲まで届く巨大な木に成長。
ジャックは豆の木を登り、大きな家にたどり着きます。
そこで背の高い女性と出会い、ジャックは朝食をご馳走になります。
その女性は「うちの旦那はオーガでトーストで焼いた男の子がいちばんの好物。見つかったら自分が朝食になってしまうよ」と警告。
まもなくオーガが帰ってきます。
女房はジャックをオーブンの中に匿います。
オーガは「フィーフィフォファン、イギリス人の血の匂いがする。その骨をパン粉にしてやる!」と叫びます。
そこで女房は「昨日の夕食の少年の匂いだよ」とごまかします。
朝食の後、オーガは金貨の入った袋を取り出し、金貨を数えながら、眠ってしまいます。
ジャックはオーブンから抜け出し、袋の一つを持って、豆の木を降りて逃げ帰ります。
二人はしばらく幸せに暮らしますが、ほどなく金貨は使い果たされてしまいます。
そこで、ジャックはまた豆の木を登ります。
オーブンに隠れているとオーガは「金の卵を産むめんどり」に「産め!」と命令。
めんどりは純金の卵を産みます。
オーガが眠りに落ちているすきに、ジャックはめんどりを連れて逃げ帰ります。
ジャックと母親は雌鶏の産んだ金の卵で裕福になりますが、ジャックは満足せず、三度目の豆の木登りに挑戦。
オーガの家に忍び込み、銅の炉に隠れます。
帰宅したオーガは少年の匂いを感じ取り、「フィー・フィ・フォ・ファン」、誰かがいると疑います。
妻は金とめんどりを盗んだ小さな悪党がオーブンに隠れているかもしれないと二人はオーブンを探します。
けれど、オーブンが空っぽだと分かり、オーガは朝食の後、今度は女房に「金のハープ」を持ってくるように頼みます。
そのハーブにオーガは「歌え!」と命じ、ハープは美しい歌を奏でます。
オーガが眠るとジャックはハープを持ち帰ろうとします。
けれど、その時ハープは「ご主人様!ご主人様!」と叫び、オーガは目を覚まし、逃げるジャックの姿に気づきます。
オーガに追われ、ジャックは豆の木を降り、なんとか家にたどり着きます。
そして、豆の木を斧で切り倒します。
豆の木を降りようとしていたオーガは落ちて死んでしまいます。
ジャックと母親はその後ずっと幸せに暮らし、ジャックは王女と結婚します。
オーガ、今もまんまオーガ
映画
2001年公開「シュレック」はウィリアム・スタイグの絵本『みにくいシュレック』が原作。その後「シュレック2」や「長靴を履いた猫」などのシリーズも放映されています。
シュレックは外見とは反対に心優しいオーガ。
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2011年公開ドリームワークス制作『長靴をはいた猫』は、『シュレック』シリーズのスピンオフ作品。2022年には『長靴をはいた猫 最後の願い』も公開されています
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『スパイダーウィックの冒険』のオーガは「妖精図鑑」を手に入れ、妖精界と人間界の支配を企むマルガラス。
様々な姿に変身し、主人公たちに敵対する 、強欲、暴力的、大食漢な悪の妖精たちのリーダーです。
アニメ・ゲーム
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のオーガは大きく、醜く、欲の皮の突っぱったクリーチャー。身長は9フィート。分厚い皮膚には一面に黒いイボ状の突起があり、乱れて脂じみています。 なまけものの上にかんしゃく持ち。
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対戦ゲーム『鉄拳』シリーズでは『闘神』と呼ばれるエンシェントオーガやトゥルーオーガがボスキャラとして登場
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オーガ まとめ
出典:deviantart
童話って、子供を諭す物語なので、
子供を食らう恐ろしい存在のオーガが、子供に財宝を盗み取られ、ネズミになって喰われ、殺される、情けない末路をたどる。
因果応報なのだと教えているのだとわかります。
けど、オーガの視点から見れば情けない。
ちょっと味方したくなる気もします。


