ゲームやアニメ作品、『美魔女』なんて女性の個性を表現する形容詞にも使われ、日本文化にも深く浸透する『魔女』、その生態を探ります。
ホントに魔女は悪魔の手先?
人間を食らい、箒で空を飛び、動物に化けることができる?
目次
魔女とは
魔女(witch)はヨーロッパの超自然的な力を持つ女性、あるいは人間。
ヨーロッパの俗信では超自然的な力、あるいは妖術を使って害を及ぼす存在とされていました。
古くは巫女や祈祷師、呪術などの霊的な能力を持ち、薬草などの民間医療に長けたシャーマン的な存在の女性でした。
起源としての魔女は旧石器時代の洞窟壁画にはすでに広義の「シャーマン」と思われる姿が描かれており、一説にはエジプト神話イシス、ギリシャ神話のデメテルにもつながるとされています。
魔女は世界中に存在していました。
その中で、ヨーロッパの魔女はローマ神話のディアナ神の地母神崇拝に系統。
北欧の魔女は森林を崇拝し、人里離れた森の奥に暮らすのを好みます。
白魔女
キリスト教以前の魔女には善い行いもあり、人々は魔女を特別な知識を持った賢者として畏敬の念を持って接していました。
魔女は「村はずれに住む知恵者」。
自然療法としての薬学を持って治療を行ったり「伝統的な知恵を継承する」存在だったのです。
このような善い行いの魔女は白魔女と呼ばれ、民衆の信頼を得ていたといわれます。
魔女の迫害と俗信
けれど、キリスト教において、教徒以外の知恵者である『魔女』は教会の威光を妨げる存在。
魔女は悪魔の手先として扱われ、迫害され、排除されてゆきます。
魔女は「悪魔と契約を結んで得た力をもって災いをなす存在」。
「サバト」と呼ばれた魔女や悪魔崇拝者の集会では、子供や処女、動物の生き血を捧げたり、淫行や乱酒に耽るなど異端的な行為が行われていたとされています。
中世の神学者トマス・アクィナスは「悪魔との性交渉」「空中移動」「動物への変身」「荒天術」「不妊術」という魔女の5つの特徴をあげています。
魔女の容姿や特徴
現代では若くて妖艶な魔女や、宅急便で自立する魔女など様々なキャラがイメージされますが、一般的にはやはり醜い老婆。鷲のように垂れ下がった鉤鼻。背骨も丸く曲がって、黒いマントに杖で身体を支え歩く姿が最も魔女らしい魔女だといえます。
女性の魔女witchに対して、男性は魔術師「Warlock(ウォーロック)」、魔法使い「Wizard(ウィザード)」、妖術師「Sorcerer(ソーサラー)」などが使い分けられています。
そして中世の魔女狩りの時代には性別を区別せず、男性も「魔女」として扱われていました。
魔女である特徴としては以下のものが挙げられていました。
- 悪魔と交わった女性が魔女になる
- 魔女は溺れ死しない
- 箒に乗ってサバトに参加
- 死に際の魔女に触れると魔力が触れた者に移る
- 身体のどこかに「契約の印」がある
- 鴉は『召使い』、黒猫は『使い魔』として魔女のそばにいる
魔女の能力
魔女は様々な能力を有していたと伝えられています。その主なものには
変身する
悪魔と契約を交わした魔女は自在に変身する能力が与えられると信じられていました。
魔女がよく変身する動物は犬・猫・兎・鳥・蛇など。魔女が全盛期だった頃にはそれらの動物は魔女が変身しているかもしれない動物として警戒されていました。
特に恐ろしいのは狼に変身した魔女。『狼男』や『狼憑き』となって人間を襲い、人肉を喰らいます。
天候を操る
魔女には天候を自由に操ることができる能力があると信じられていました。雷雨、雹、暴風、嵐、稲妻など。
魔女が起こした嵐として最も有名なのが1589年の出来事。
イングランド国王ジェイムス1世とデンマークのアン王女の婚姻のためアン王女が渡航しますが、何度も嵐に邪魔されます。
その原因が魔女が大規模な集会で邪魔したとされ多くの人が処刑されました。
その方法は、洗礼を施した猫に死んだ人間の肉片を結び、海に投げ込んで嵐を呼んだというもの。
そのほかにも悪天候を呼ぶ方法として、去勢した雄豚の剛毛を茹でる、火打石を西に向かって左の肩越しに投げるなどの方法があるなどが魔女裁判の記録として残されています。
空を飛ぶ
中世のヨーロッパでは魔女は箒に乗って空を飛ぶと信じられていました。
空を飛ぶための道具としては、箒以外、杖、糸巻棒など。動物に乗って空を飛ぶこともあります。
狼、犬、牡牛、牡山羊。飛行の際には身体に塗る軟膏が必要です。
魔女は高速で空を飛ぶことができますが、教会の鐘の音には魔力を無効にする力があるので避けなければならなかったようです。
媚薬・薬草の調合
魔女には様々な薬草を調合する能力があります。
その中でも媚薬は魔女が得意とするもののひとつ。
強烈な効果を期待するなら実在するといわれるマンドラゴラ(mandragora officinarum)を用いること。
ハリーポッターの映画にも登場するマンドラゴラは古来より強力な薬草として知られています。強烈な悲鳴をあげることで有名。
それをまともに聞いてしまうと発狂して死んでしまうとも伝えられています。
魔女、様々な作品に登場する、想像力を掻き立てる存在
アニメの中の魔女
「白雪姫」の中に登場する継母の魔女。名前は色々あるようですが、継母の時は「ウイックドクイーン」(悪い女王)、魔女に変身すると「ウイックドウイッチ」(悪い魔女)と呼ばれています。
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「それいけ!アンパンマン」では魔女の森に住んでいる、魔法のほうきに乗ると空を飛べる魔法使いのおばあさん。
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ホラー作品の魔女
「フレアウイッチプロジェクト」
1999年公開。映画制作のために森に入ったスタッフが魔女の呪いに遭遇する内容。魔女は登場しませんが、その恐怖がドキュメンタリータッチで描かれています。
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「ウイッチ」
A 24,2015年制作作品。敬虔なキリスト教一家の末の赤子が行方不明となり、それをきっかけに長女のトマシンが魔女という疑いをかけられ、一家は狂気の世界に追い詰めれれてゆきます
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「魔女がいっぱい」
2020年公開作品。アン・ハサウェーの名(怪)演が光る、楽しいホラコメ。
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魔女 まとめ
いつの間にか怪物のような恐ろしい存在に仕立て上げられた魔女ですが、『変わり者の知恵者』であるとすれば納得です。
中には『善い魔女』も数多くいたものと思います。
それらの多くの人々が『権威を脅かす存在になる可能性がある』ために怪物に仕立て上げられ無残に殺された。
やはり神は決して優しいだけの存在ではなさそう。