小林永濯作
イザナギ(伊邪那岐神)イザナミは(伊邪那美神)は日本の天地創造(天地開闢:てんちかいびゃく)に生まれた神々。 国産み、神産みの大役を果たした創造神です。
アマテラス(太陽)・ツクヨミ(月)・スサノオ(海)の三貴子を生んだ、今も様々なメディアに登場するメジャーな夫婦神。
その、イザナギ(伊邪那岐神)イザナミ(伊邪那美神)の誕生から、黄泉比良坂の決別までの物語を辿ります。
ハッピーエンドでは終わらないイザナギ(伊邪那岐神)イザナミ(伊邪那美神)の結末とは
目次
イザナギ(伊奘諾)イザナミ(伊邪那美)、その神功の結末は
伊奘諾尊と伊邪那美尊は「天地開闢」(てんちかいびゃく)(世界が生まれたさま)の最後に生まれた夫婦でもあり、末の兄妹。
高天原において国産み・神産みによって日本の国土を形づくり、森羅万象を司る多くの神々を造りました。
「天地開闢」(てんちかいびゃく)
尾形月耕 作
天地開闢(てんちかいびゃく)とは世界の始まりの時をいいます。
日本では最古の歴史書『日本書紀』の冒頭、「古(いにしえ)に天地未だ剖(わか)れず、陰陽分れざりしとき……」、同じ最古の歴史書『古事記』においては「天地初発之時」(あめつちのはじめのとき)と表現されています。
そののち、神々が住まう高天原、別天津神と神世七代の神々が誕生します。
これらの神々の最後に生まれてきたのがイザナギ・イザナミの二柱。
イザナギは『古事記』では「伊邪那岐神」、「伊邪那岐命」、『日本書紀』では「伊弉諾神」。イザナミは邪那美、伊弉冉、伊耶那美、伊弉弥と表記されています。
国産み・神産み
世界の最初に生まれた造化の三神・別天津神(ことあまつかみ)はイザナギとイザナミの二柱に、まず海に漂う国土を固め、大地を作るように命じ、天沼矛(あめのぬぼこ)を与えました。
イザナギとイザナミは高天原から地上へとつながる天浮橋(あめのうきはし)に立ち、天沼矛でどろどろした海をかき混ぜます。
その滴がぽたぽたと落ちてオノゴロ島(『古事記』では淤能碁呂島(おのごろじま)、『日本書紀』では磤馭慮島(おのころじま))になりました。
イザナギとイザナミはそのオノゴロ島に降りて夫婦の誓いの儀をおこなって結婚、最初の子・ヒルコ(水蛭子、蛭子神、蛭子命)が生まれます。
けれど、ヒルコは不具の子であったために海に流し、次の子・アワシマ(淡島神)が生まれます。けれど、またも正しく生まれてこなかったため、イザナギとイザナミは別天津神の教えに従い、正しく交わり、まず、淡道之穂之狭別島(淡路島)が生まれます。
次いで本州・四国・九州等の「大八島」(日本列島)と呼ばれる島々、石・木・海・水・風・山・野・火など30以上もの森羅万象の神々を次々と生み出してゆきます。
イザナミの死
けれど、イザナミは最後の火の神・カグツチ(軻遇突智)の出産で火傷を負い、それが原因で亡くなってしまいます。
ちなみにこれが日本神話の中の最初の「死」であると伝えられています。
イザナギはイザナミの遺体にすがり、泣き崩れます。この時イザナギの涙からナキサワメ(泣沢女神)が生まれます。
イザナギはイザナミの死の原因になったカグツチを殺し、(あるいは(他説)イザナミの亡骸を)比婆山(出雲と伯伎の国境)に埋葬します。
そして、イザナギはイザナミを失った悲しみに耐えきれず、死者の国(黄泉)まで会いにゆくことを決意します。
黄泉の国
深い地の底に続く長く暗い道を下り、イザナギはようやく黄泉の国の入り口にある門の前にたどり着きます。
扉の前に立ち、イザナミに共に帰るように呼びかけます。
けれど、「私はもう黄泉の国の食物を食べてしまいました」というイザナミの悲しそうな返答が帰ってきます。
イザナミは一旦は夫の誘いを断ったものの、やはり帰りたい思いにかられ黄泉津神たちに願い出ようと考えます。そして、イザナミにその間は「決して覗いてはならない」ことの約束を交わします。
けれどいつまで待っても戻って来ないイザナミを心配に思い、イザナギはついにその約束を破り、中の様子を覗き見てしまいます。
そしてそこに見たものは、醜く腐り果てウジにたかられ八雷神(やくさのいかづちがみ)に囲まれた、変わり果てた最愛の妻の姿でした。
その醜さに恐れ、イザナギはひとり地上へと逃げ帰ります。
イザナギとイザナミの決別
約束を破り、醜い姿を見られ、ひとり逃げ帰るイザナギをイザナミは凄まじい剣幕で怒ります。そして八雷神や黄泉醜女(よもつしこめ)などの悪霊たちにイザナギを捕えるよう命じます。
イザナギは必死に地上へ続く黄泉比良坂(よもつひらさか)に向かいます。
凄まじい勢いで迫ってくる黄泉醜女に、イザナギはまず、髪に結んだ飾りを投げつけます。するとたちまち髪飾りから野ブドウが育ち、沢山の実がなりました。黄泉醜女たちは立ち止まってそれを食べ始めます。
けれどしばらくするとまた黄泉醜女たちは追いついてきます。そこで、今度は髪にさしていた櫛を投げます。すると今度は沢山の筍が生り、またも黄泉醜女たちは立ち止まってそれを食べ始めます
ようやく地上が見え始めた頃、またも黄泉醜女たちが追いついてきます。イザナギは黄泉の境に生えていた桃の木の実(意富加牟豆美命、おほかむづみ)を三つもぎ取り、黄泉醜女に投げつけます。
すると桃の実に宿る霊力を恐れた黄泉醜女たちは逃げ帰ってゆきました。
最後に追ってきたイザナミに対しては、イザナギは黄泉の国と地上との境・黄泉比良坂(よもつひらさか)の出口を大岩で塞いで逃れました。
岩の向こうからイザナミは「お前の国の人間を1日1000人殺してやる」といい、それに対してイザナギは「それなら私は1日1500の子が生まれるようにしよう」と言い返します。
この時より地上には亡くなる人より、生まれる人の数が多くなり、人間が栄えることとなったと伝えられています。
イザナギ(伊奘諾)イザナミ(伊邪那美)、国産み・神産みの二柱はご多忙
NARUTO
「日本神話大戦」に登場する以外、イザナギ、イザナミでイメージするのは「NARUTO」。イザナギ、イザナミは共に己にかける、たとえ死ですらなかったことにできる究極幻術。
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ペルソナ
ペルソナ4」ではイザナギは主人公である番長の初期ペルソナでもあります。
その他、「モンスト」や「パズドラ」にも登場する多忙なおふたり。やはり日本の国や神々の造り手。忘れてはならないメジャーな存在です。
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映画で見る伊奘諾と伊邪那美
映画で見る伊奘諾と伊邪那美の物語は2017年に上映されたアニメ「君の名は。」や「鎌倉物語」のストーリーの中に彷彿とさせるものが垣間見え、テレビアニメ「鉄のラインバレル」では二人が産んだ神々が名前の由来となっています。
イザナギ(伊奘諾)イザナミ(伊邪那美) まとめ
「見てはいけない姿を見てしまった」ことで破局を迎える神である伊奘諾と伊邪那美、禁断の木の実を食べたことで楽園を追われる人間であるアダムとイブ。
人間でも神でも衝動を抑えられないのは生き物としての逃がれられない性(さが)なのでしょうか。
ん、神は生き物なのかな?
まんが古事記 愛と涙と勇気の神様ものがたり [ ふわこういちろう ]