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ゲームや映画、アニメなど、多くの作品に影響を与えた賢者の石とエリクサー。
ファンタジー好きならもはや知らない人はいないほど有名な万能薬。現実の世界でも錬金術師に求められた霊薬です。
そんなエリクサーと賢者の石の実態を探ります。
実際に所有していたひともいるってホント!?
錬金術から生まれた霊薬、エリクサー・賢者の石とは?
錬金術の歴史は古く、古代エジプトやメソポタミア文明にまで遡ります。
錬金術とは魔術に用いられるエセ科学的なもののようにも思いますが、長い歴史の中で、実際に様々な化学的知識の発展に貢献しているのです。
賢者の石・エリクサーはそんな錬金術によって生み出されました。
錬金術とは
錬金術(alchemy(英語)、al-kimīa(アラビア語))とは、狭義には「卑金属から貴金属(金)を精錬する」試み。
広義には、「人間の肉体や魂を含む、様々な物質をより完全な存在に錬成する」試みまでをいいます。
錬金術の発祥は古く、古代メソポタミアやエジプトにまで遡ります。
紀元1世紀ごろのエジプトから、アラビア、十字軍の遠征によって西欧ヨーロッパに広がってゆきます。
錬金術は古代ギリシャの哲学者アリストテレスの四元素という物質感も取り入れ、中世アラブに多大な影響を与えます。
そして、長い歴史を経て、多くの化学的知識が駆使され、様々な貢献を果たします。
ちなみに物理学者のアイザック・ニュートンの写本「業績と人物」にも賢者の石の材料となる「哲学者水銀」について記されています。
錬金術が生み出した主なものとして、硝酸、硫酸、塩酸などの化学薬品や火薬、磁器、合金、ガラス、蒸留技術、などが挙げられます。
錬金術は、魔術や哲学の領域も含みながら成長し、正統的な学問として18世紀に至るまで研究されつづけています。
賢者の石
賢者の石は、中世ヨーロッパにおいては「卑金属を金に変える触媒となる霊薬」と考えられた物質。賢者の石を作り出すことは錬金術の最大の目的でした。
当時は水銀になんらかの反応を加えることで賢者の石ができるとも考えられていたようです。
ちなみに、中国では霊薬を作る技術を錬丹術といい、仙丹という仙人になれる霊薬が作られています。それが賢者の石にあたるものと考えられます。
南インド、タミル地方には不老不死を目指す「シッダ」という医学が存在し、「ムップ」と呼ばれる薬が賢者の石に相当すると言われています。
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** 賢者の石の効果は **
- 鉛や錫などの非金属を貴金属(黄金)に変える、
- 薬として飲めば不老不死を得る。
- あらゆる病とけがを癒す万能薬(エリクサー)にもなる
というもの
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** 形状 **
西洋においては赤い石の形が一般的ですが、アラビアでは黄色で卵のような形。
ケシの花のような色、ざくろ石のような(暗い赤)色、光り輝く金色など、様々です。
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** 所有者 **
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錬金術の長い歴史の中で実際に「賢者の石」の生産に成功したといわれる錬金術師が存在します。
● ヘルメス・トリスメギストス
「錬金術師の祖」とされる錬金術の文脈に登場する神人。ギリシア神話のヘルメス神と、エジプト神話のトート神が融合された存在。中世の錬金術師に、賢者の石を手にした唯一の人物と考えられていました。
錬金術史上で実際に所有していたとされたのは
● パラケルスス
四大精霊を提唱。怪我の治療に賢者の石やそれによって作られたエリクサーを使用したと伝えられています。
● サン・ジェルマン伯爵
「ヨーロッパ史上最大の謎の人物」。18世紀のヨーロッパで活躍した画家で音楽家、優れた科学者。不死あるいはタイムトラベラーであると噂された人物。
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** 賢者の石の作り方 **
出典:Wikipedia
● 賢者の石の材料
賢者の石の製造のための材料については時代や国々、その時々で様々でが、主な物質としては次のようなものが挙げられます。
- 水銀(すいぎん)
- 硫黄(いおう)
- 鉛(なまり)
古代アラビアの錬金術では、賢者の石は「哲学者の硫黄」と「哲学者の水銀」でできているとされています。
古代エジプトの錬金術で鉛は変幻自在の金属として活用され、中世のヨーロッパの錬金術でも鉛は身近な物質で、賢者の石は身近な物資から作ることができるといわれていました。
● 作り方
賢者の石や貴金属は材料の純度を高めることでできあがると考えられ、製造過程でこれらの材料を純化するための精製作業がくりかえされます。
賢者の石を作る方法には「湿った道(湿潤法)」と「乾いた道(乾式法)」の2種類があったとされます。
■「湿った道」は材料を「哲学者の卵」と呼ばれる球形のフラスコに入れて密閉し、長い期間(40日以上)炉で加熱する方法。ヨーロッパの錬金術で通常行われていた製造法です。
■「乾いた道」は土製のつぼに材料を入れ、4日間で完成させるというもの。
● 製造過程
最初材料は黒い色をしており、純粋な物質になっていくと、次第に材料は「白い霊石」または「白エリクシル」という物質に変化します。
賢者の石が完成するとその物質は「鮮烈な赤」へと色を変えます
赤く輝く粉末の姿で現れ、それを水銀や熱して溶かした鉛入れ、貴金属の塊にしたと伝えられています。
エリクサー
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エリクサー(elixir)とは 不老不死になれると伝えられる霊薬、
あるいは
服用することで如何なる病も治すことができる万能薬。
エリキシル、エリクシールとも呼ばれます。
賢者の石と同一のもの、あるいはそれを用いて作成される液体。
中世ドイツでは、パラケルススという医師がエリクサーで医療活動を行っていたといわれ、中国の仙丹もエリクサー(賢者の石)と同様のものであるといわれています。
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** 語源 **
語源については幾つかの説があります。
- エリクサーは乾いた粉と考えられていたことから、ギリシア語の "xerion"(乾いた)がアラビア語の"al iksir" となった。
- イスラム錬金術の祖ジャビル・イブン・ハイヤンが金属の四元素の四性質を変化させて作り出した「 al iksir 」元素。
- ラテン語のエリ(神)クシール(杯)
など
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** 現存するエリクサー **
エリクサーは現在も存在します
- 薬剤 エリキシル剤 エタノールを4~40%含む、甘味と芳香がある透明な内服液剤
- リキュール酒 ベネディクティンやシャルトリューズが製造する「エリクサー」。修道院内部でのみ製造されている薬草酒
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** サンジェルマン伯爵の不思議 **
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サン・ジェルマン伯爵とは「ヨーロッパ史上最大の謎の人物」。賢者の石やエリクサーの製法を修得していた人物としても知られています。
18世紀のヨーロッパを中心に活動。
一説にはスペイン王妃マリー=アンヌ・ド・ヌブール と貴族メルガル伯爵との私生児と言われます。
ギリシア語、ラテン語、仏・独・英・伊の他にアラビア語、中国語など、十数か国語を理解し、チェンバロとヴァイオリンの名手としても知られる作曲家。
化学と錬金術に精通し、不老不死の秘薬を有する人物とされています。
前世の記憶を持ち、自ら2000年とも4000年とも言われる驚異的な生命を維持していると称しています。
ソロモン王やシバの女王、騎士として加わった十字軍でリチャード1世とも面識があったと語っています。
普段は丸薬とパンと麦しか口にせず、「死ぬことのできない人間」、タイムトラベラーであるという説もある人物。
使うのがもったいないエリクサー、フル活用できちゃう賢者の石
賢者の石
賢者の石はワーナーブラザーズ制作のもと2001年に映画化された「ハリーポッターシリーズ」の第一作目に登場することで知名度がぐんと上がりました。
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「鋼の錬金術師」では、鉱石、液体、ゲルなど様々な姿をとる、紅きエリクシルなどとも呼ばれる深紅の物体。伝説の術法増幅器で、その正体は人間の魂そのものの集合体。
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「アトリエシリーズ」では最高レベルの調合品として第1作目から登場
エリクサー
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エリクサーは「ファイナルファンタジーシリーズ」をはじめとした多くのRPGに登場しています。ただ不死の薬と言われるだけに、「もったいなくてなかなか使えない」なんて思ってしまうことも多いアイテムのひとつです。
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『テイルズ オブ』シリーズのではエリクシール。HPとTPを完全回復させるファンタジアから登場した希少な回復薬品
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エリクサー 賢者の石 まとめ
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賢者の石とエリクサー、共に錬金術という視点でのお話になります。
で、錬金術、鉄や鉛を金に変えることは可能なのか、今だに研究を続ける科学者も存在するとか。
けれど、今の科学で考えれば、将来的には他の金属を金に変えることはあり得るような気もするのですが。。。
巨万の富、不老不死、欲しいけど、手にすべきではない諸悪の根源のような気もしますが。。。