キリスト教の七つの大罪「強欲」を代表する悪魔・マモン。
低俗で非力とされながらも、強大な悪魔や神との関連性も主張されるこの堕天使は、一体どのような存在だったのでしょうか。
今回は、拝金主義・マモニズムの語源ともなった悪魔・マモンについてご紹介します。
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目次
最強か最弱か、強欲をつかさどる魔王・マモン
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マモン(Mammonはキリスト教で七つの大罪の強欲を司る悪魔。別名はマンモン、アマイモン(Amaimon,Amaymon)。
七つの大罪で色欲を司る悪魔アスモデウスを副将に置き、72の堕天使を支配する地獄の東方の王。
ゼウスとも同一視されるエジプト神話の最高神にして太陽神・アメンが起源であるともいわれています。
ジョン・ミルトンは著作『失楽園』でマモンを、最もさもしい根性の持ち主だと表現しています。
マモンの富への執着はとても強く、堕天前からも、神の祝福より神殿に敷き詰められた黄金に関心を持っていたとされるほどです。
神との戦争に敗れて地獄に落ちた後も、牛頭の異教の神にして残忍な悪魔・モロクが再戦を主張したのに対して、マモンは地獄の環境を受け入れて和平の道を探ろうと提案し、争いよりも財を優先する姿勢をとり続けました。
16世紀の魔術師、ハインリヒ・コルネウリウス・アグリッパの『隠秘哲学』では9つに分かれた悪魔の階級が記されており、マモンを君主とした悪の誘惑者または鬼神という意味のテンタトレス・マリゲニーという階級を最も位階の低い第9位に位置付けています。
中世のキリスト教神学とともに発展した悪魔学では、東西南北を支配する悪魔が存在すると考えられており、ダンテの『神曲』にも登場する13世紀の占星術師、マイケル・スコットはその四代悪魔の一人として、東の王・アマイモンを挙げました。
悪魔の種類や使役方法などが記された魔術書、『ゴエティア』や『ホノリウスの誓いの書』ではこのアマイモンは、他の七つの大罪を司る悪魔・アスモデウスらを従える強力な存在。『ゴエティア』でアモンはソロモン72柱序列7の悪魔で、40個軍団を率いる侯爵であると記されています。
マモンは悪魔の中でもっとも強靭な存在、ルシファーを助ける為だけに神との戦争に参加し、敗れた後も彼に付き添って堕天しています。
マモンの外見と能力
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『失楽園』におけるマモンは袋を抱えて座る老人の姿で描かれており、誇りの無い低俗な存在として他の悪魔とは程遠い外見をしています。
しかし現在は、先述したアメン等のエジプト神話との関わりや鳥の頭を持つアモンの影響もあり、人間の身体に、二つの黒い鳥(カラス)の頭を持つ悪魔。
16世紀の英国の詩人エドマンド・スペンサー著「妖精の女王」によれば、マモンは人間に大地から財宝を掘り出す方法を最初に教え、地獄の門の近くにある「富の館」に住まいます。
人間を強欲に駆り立て、「生命」を代償にその願いを叶えます。
ただし、マモンから与えられた財宝の類は後に馬糞や灰のようなものに変わってしまいます。
神と対を成す富の権化。誤訳が生んだ悪魔・マモン
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マモンは『マタイによる福音書』6章、及び『ルカによる福音書』16章にて“汝ら、神とマモンに兼ね仕えることあたわず”(神とマモン両方には仕えられない)とイエスに言及される存在です。
マモンとはアラム語で土地やお金といった財産を示す言葉。ラビ・ユダヤ教の聖典『ラビ文献』では不正な財を指す言葉として使われています。アラム語でのマモンは貪欲の擬人化としてそのまま残されることとなりました。
この表現を後世の神学者や教会が誤解し、堕天使と位置付けたことにより、悪魔・マモンが誕生したといわれています。
イケメンに美少女、モンスターまで!多種多様なマモン
「七つの大罪」のマモンは「強欲」を司る、シングルマザーの魔王。夫の残した莫大な負債を抱える不幸属性を持つ美女。
07th Expansionの作品『うみねこのなく頃に』では七つの大罪の悪魔に該当する煉獄の七姉妹の1人として登場。なんでも欲しがる“強欲”な少女として描かれます。
アニメ化したライトノベル『灼眼のシャナ』では引力と斥力を操る、冷静な指揮官として登場。紳士然とした強大な王という、本来のマモンとは違ったキャラクターとして描かれます。
ソーシャルゲーム「神姫プロジェクト」のマモンは女王の如き高飛車な態度ながらも、その鞭を弱者のために振るう妖焔なる女帝
マモン まとめ
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高潔から程遠い存在と卑下された悪魔・マモン。
しかし魔神や主神と同一視される、彼の実力は謎に満ちています。
お金が支配する現代の社会において、最も脅威と成り得るのは人の心に潜む強欲さ、マモンなのかもしれません。
by 二等軍曹