ユニコーンは太古から伝えられ、聖書にも登場した一角獣。
自分より強大な獣に立ち向かい、人に捉えられるなら死を選ぶ誇り高い獣。
純潔の乙女に魅せられた、最も美しい幻獣。
ノアの方舟に乗らなかったために絶滅してしまったのだとか。
いかにも聖獣と思えます。
目次
ユニコーン、様々な伝承が残る聖獣
伝承の中のユニコーン
聖書の中のユニコーン
ユニコーンは「レ・エム」という名の動物として旧約聖書にも登場しています。
『民数記』第23章他、様々な場面に記されていましたが、残念ながらユニコーンを表す「一角獣」という表現は現在では「野牛」と記されています。
ノアの方舟に乗れなかったユニコーン
聖書の中に登場するユニコーンは傲慢な野獣。
そのためポーランドやロシアの民話ではユニコーンはノアの方舟に乗れなかった大洪水以前の動物とされています。
🔳 ポーランド民話では
方舟に乗り込んだユニコーンが他の獣をその角で突いたので、ノアはやむなくユニコーンを水中に落としたとされています。
🔳 ロシア民話では
ユニコーンは自力で生き延びると方舟に乗りませんでした。
洪水の最中、長い時間を泳ぎ切ったものの、止まるところを無くした鳥たちがユニコーンの角に押し寄せたので、その重みでユニコーンは水中に沈んでしまったとされます。
そのため、ユニコーンは絶滅してしまったのだということです。
乙女を慕うユニコーン
ユニコーンはうら若き乙女を慕うと伝えられています。
森の中、ひとりでいる生娘の香りを嗅ぎつけたユニコーンは、その香りに魅せられ、近づいて来るといいます。
そうして、ユニコーンは純真無垢な乙女の膝に頭をもたげ、眠りにつきます。
その時に捕獲するのが唯一のユニコーンの捕獲法であると伝えられていました。
麻痺したユニコーンは身を守る術もなく捕まってしまうのだとか。
ただし、その乙女が生娘でない場合、ユニコーンは激しく怒り、その娘を八つ裂きにして殺してしまうと伝えられています。
ユニコーンとは
ユニコーン(Unicorn)は額の中央に一本の角を持つ、白馬に似た伝説上の生物。
主に中世ヨーロッパで伝承された幻獣です。
角には浄水や解毒などの効果があるといわれ、人間が殺すこともできる生物。
気性の荒い聖獣で、捕獲され、人間に飼育されることを嫌いますが、乙女に寄り添うことでおとなしくなると伝えられていました。
ヴォルテール(フランスの文学者で思想家)は著書『バビロンの王女』の中でユニコーンを「この世で最も美しく、最も誇り高く、最も恐ろしく、最も優しい動物」と記しています。
―起源― 未知なるインドに生息した幻獣?
角が一本の生き物は、紀元前2000年頃、インダス(南アジア北西部)文明の印章のモチーフとして描かれています。
ユニコーンを記した最古の文献は古代ギリシアの歴史家クテシアスの「インド誌」。
古代の博物学者たちはユニコーンの存在を確信し、インドという遠く離れた想像世界に生息していると考えていました。
―外見― さまざまな動物の部位を持つキマイラ(?)
ユニコーンのイメージは「ライオンの尾、ヤギのような顎髭、中央に一本の大きな角を持つ白馬」というものが一般的です。
けれどその外見については様々な説があります。
角が曲線を描くものや弓なりに後ろに伸びたもの。
翼のあるもの。
大きさも乙女の懐に抱かれることのできる小動物であったり、山のように巨大なものもありました。
体毛も白から黄褐色、シカのような茶色となり、最終的には、再び白色と変化しています。
その姿もヤギやシカ、ヒツジに似たものや、プリニウスの『博物誌』ではさまざまな動物の集まったキメラ(キマイラ)であるとされています。
ー様々な伝承ー 俊足、インドロバ?
🔳 ヨーロッパにユニコーンを最初に伝えたクテシアスはその見聞録『インド誌』の中で
「その体は白く、頭は暗赤色で、目は紺色、額に縦約 45cmほどの長さの一本の角を持つ。
非常に力が強く、俊足、いかなる動物にも追いつかれることはない」と記しています。
🔳 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは『動物部分論』の中で
ユニコーンを「頭の真ん中に角が生えているインドロバ」と称しています
🔳 プリニウス(古代ローマの博物学者・政治家)は『博物誌』の中で
「馬の体、象の肢、シカの頭を持つ怪物。額にある鋭い一本の角は一撃で刺し通す武器となる。
人間には殺すことはできても、捕まえることはできない。」と述べています。
―角、その効用―
ユニコーンの角には水を浄化し毒を中和するという効果以外にも、あらゆる病気の治癒効果があるとされていました。
ヨーロッパにユニコーンを最初に伝えた歴史家のクテシアスはその著書『インド誌』の中で
『角で作った杯を用いて水分を摂れば、痙攣やてんかん、解毒にも効果を発揮する』と記しています。
また、ドイツ中世の詩人ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの『パルチヴァール』には
聖杯王アンフォルタスが毒を塗った槍で傷を負った際、角の下、前頭骨の上部にある「ざくろ石」で王の傷を癒したと記されています。
特に毒殺の恐怖に怯える中世の貴族にとっては、解毒効果に優れたユニコーンの角は何としても手に入れたい貴重な品でした。
そのため角は教皇パウルス3世や貴族の間で高値で取引されていたと伝えられています。
ただし、売買された角は北海に生息するイッカク(ウニコール)の角やセイウチの牙でした。
―性格― 人には飼われない、勇敢で獰猛
ユニコーンは見た目の美しさとは反して、勇敢でどう猛な性格。
多くの敵や巨大な敵に遭遇してもその角を武器に立ち向かって行きます。
極めて誇り高く、人間に飼われることを拒みます。
追い込まれると崖からでも身を投げて逃げる道を選び、捕獲できたとしても怒りのために狂い死に、または自害してしまいます。
人間に接触することを嫌い、森の奥深くに住まい、孤高を保ちます。
童話の中のユニコーン
『グリム童話』『勇ましいちびの仕立て屋』
この物語は、屋根裏に暮らす知恵者でちびの仕立て屋が、その知恵をもって国王にまでなるというお話です。
その中で、仕立て屋は王さまから森の巨人やユニコーン退治を命じられます。
ユニコーンに対する仕立屋は、わざとユニコーンを怒らせます。
怒ったユニコーンは仕立屋めがけて突進。
仕立て屋は素早く樹の後ろに隠れます。
そのため、ユニコーンは角を樹に突き刺してしまいます。
こうしてユニコーンは仕立て屋に捕縛されてしまいます。
ユニコーン、現代でも聖なる存在?
「ユニコ」は手塚治の少女向け作品の主人公。主人公は可愛いユニコーンでもその内容には手塚治の世界観が反映されている作品として評価されています。
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「機動戦士ガンダムUC」に登場するモビルスーツ『ユニコーンガンダム』は物語の鍵を握る重要な存在となっています
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ゲーム「アズールレーン」に登場するユニコーンは、空母ユニコーンが擬人化された美少女
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ユニコーンは『ドラクエシリーズ』にも鋭い角を持つ魔獣としてしばしば登場しています。
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ユニコーン まとめ
今時代を先駆するキーワードとなったユニコーン。紀元前の太古から存在した聖獣であることに納得です。
けれど、ノアの方舟に乗れなかったことで絶滅してしまうのはなんとも残念な結末。