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象の頭に人の体の姿で描かれる怪物、あるいは、超巨大なカバのような怪獣として語られるベヒモス。
もとはレヴィアタンと共に旧約聖書に登場する由緒正しい悪魔。
イスラム圏ではバハムートとして語り継がれています。
今回はその、神の作りし傑作といわれるベヒモスのご紹介です。
ベヒモス、神の作りし最高の生物
ウィリアム・ブレイク作
ベヒモスは「旧約聖書」（ヨブ記）において語られる巨大な陸の怪獣です。
名前の由来はヘブライ語で「獣」を意味するbehemahの複数形。
あまりの大きさに一頭でも複数形で表したのではないかといわれています。
外見は古代においてはカバのことを指していたといわれ、サイや牛のような姿であるという伝承も。ミドラーシュ（聖書解釈）では角の有る獣として解釈されています。
「旧約聖書」（ヨブ記）には、「杉のような尾を持ち、骨は銅菅のようで、肋骨は鉄の棒のごとく、巨大な腹。日に千の山の草を食べ、川の水が口に流れ込んでも動じず、上半身にはなんとデンダインという砂漠が広がっている。温厚な性格で、全ての獣に慕われる」と記述されています。
デンダインはエデンの東側にあったとされる砂漠、この山々の草は一晩で元に戻るとされますが、神はベヒモスを殖やさないため牝を殺してしまいます。
一部文献ではべヒモスを「獣王」と記しています。
ベヒモスは神によって天地創造の五日目にレヴィアタンと共に創造されました。
本来はレヴィアタンと同様に海に住んでおり、レヴィアタンとは雌と雄の一対であるとみられていたこともありました。「旧約聖書」『エノク書』にレヴィアタンは雌でベヒモスは雄と記述。
けれど、巨大な2匹の怪獣が住むには海は狭すぎ、ベヒモスは陸地に上がり沼に茂る葦の下を住居とするようになります。
後世には空の怪物ジズを三頭一対とされることも。
相方であるレヴィアタンが最強の生物とされる一方、ベヒモスは最高の生物とされ、完璧な獣として紹介されています
ベヒモスとレヴィアタンは世界の終末には互いに殺し合い、亡骸は終末を生き残った「選ばれしものたち」の食料になるともいわれています。
ベヒモスはその角でレヴィアタンはその鰭で互いを突き刺し引き裂いて、最終的に両者とも死に至るというもの。
ジズを含んだ場合、三者ともが食物として供されます。
ユダヤ教のラビ（司祭）たちは救世主メシアの宴のための見事な食物とし、ユダヤ人はいつか救世主の宴でこの肉を食べられることを楽しみにしているといいます。
陸の怪獣ベヒモスは、海の怪獣レヴィアタン、そして空の怪獣ジズを加え三頭一対として扱われることもあります。
ジスは『ヨブ記』に登場。レヴィアタンが海、ベヒモスが陸、ジズが空を象徴する巨大な怪物。けれどジスは旧約聖書には登場せず、聖書の解釈の違いによって生まれたのではないかといわれています。
ベヒモス、イスラム圏ではバハムート
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また、ベヒモスはイスラム圏に伝わった際、「バハムート」と呼ばれるようになり、世界を支える巨大な鯨（ヌーン、またはフート）に姿を変えます。
イスラムの伝承では巨大魚バハムートは、その背に巨大な世界牛クユーサー（クジャタ）を載せ、牛には緑色の風信子（ヒヤシンス石）盤が載り、その上に大地を担ぐ天使が乗るとされます。
イスラムの宇宙誌には、「神は大地が揺れて安定しないので天使に背負わせ、天使の足元に岩盤を、岩盤の支えに巨大な牛を、牛を乗せるために巨大な魚を配置した」と記されています。
なぜベヒモスが巨魚になったかについては、牛をベヒモス、魚をレヴィアタンとすべきところを、あべこべにしたという指摘もあるとか。
ベヒモス、悪魔になった神の傑作
ルイ・ル・ブルトン 作
もはや脱帽するしかないような素晴らしい怪獣であるベヒモスですが、レヴィアタンと同様に、時代が進むにつれ悪魔として見られるようになります。
中世以降、ベヒモスは「旧約聖書」の「日に千の山に生える草を食べる獣である」という記述から暴飲暴食を司る悪魔とされ、象もしくは象頭人身の姿で知られるようになっていきます。
ただし、レヴィアタンは「七つの大罪」の一つ、嫉妬と結びつけられますが、ベヒモスは「七つの大罪」に中には存在していません。
けれど悪魔としての地位は高く、ルシファーの側近とも、陸軍と海軍を統括する元帥であるともいわれます。
性格は威圧的で、鈍重な大食漢。 地獄でソムリエ、酌人頭を勤めるともいわれます。
エリファス・レヴィ作
中世ヨーロッパでは魔王サタンの化身とみなされ、テンプル騎士団が信仰したともいわれる黒ミサを司る異教の神バフォメット、ヤギの頭の悪魔とも同一視されています。
ゲームで人気のベヒモス
「ファイナルファンタジー」シリーズにもベヒモスは登場します。主にストーリーの終盤に登場する強敵で、大きな体からくり出す強力な攻撃で主人公たちを苦しめます。
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『メギド72』のベヒモスは2つのヴィータ体を持つメギド。強い相手と戦うのを何よりも楽しみにしているラッシュファイター
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「べるぜバブ」のベヒモスは「ベヘモット34柱師団」の創設者兼初代団長ベヘモット。ジャバウォックの父親で、眼鏡をかけた小柄な老人
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ベヒモス まとめ
出典：deviantart
リヴァイアサンと同様に、世界的に有名な怪獣ベヒーモス。
人によっては悪魔としての印象の方が強かったりするかもしれませんが、どちらにせよ、創作のなかでも伝承と同じく威風堂々たる姿で親しまれているようです。
終末を生き残ればベヒーモスのステーキなんかも食べられるかもしれませんね。
