イエスに関係する人物の中にヨハネという名を持つ者がふたりいます。
ひとりはイエスの使徒。
そして、もうひとりはイエスに洗礼を施した預言者。
ふたりはそれぞれを区別するため、使徒ヨハネ、洗礼者ヨハネと呼ばれます。
洗礼者ヨハネは、モーセの兄・アロンの孫(ルカの福音書では)であり、イエスの従兄弟という家系に生まれ、最後の審判を説き、救世主の出現を預言した聖人。
旧約聖書から新約聖書に橋渡ししたといえる洗礼者ヨハネの生涯をたどります。
目次
ヨハネ、メシアに先駆した大預言者
ヨハネとは
洗礼者ヨハネ( John the Baptist)は古代ユダヤの預言者。
その名は「ヤハウェが深く恵む」を意味します。
メシアの出現を告げ、その道を切り開いた、旧約聖書の最後で最も偉大な預言者とされます。
紀元前 6年〜前2年、ユダヤ教の司祭・ザカリアの子として誕生。
ヨルダン川を活動拠点とし、最後の審判が迫っていること、メシアの出現を説き、悔い改めた人々、そしてイエスに洗礼を授けます。
キリスト教においての洗礼者ヨハネはイエスの先駆者として崇められています。
カトリック・正教会・聖公会では聖人。
ローマカトリックでは、洗礼者、修道士、隠者、改宗者、囚人、その他の活動家の守護聖人。
そして、すべての宗教で神の預言者として信仰されています。
紀元28~36年(正確な年数は不明)、ガリラヤとペレアの統治者・ヘロデ・アンティパスによって斬首。誕生・斬首・首の発見のそれぞれが祭日とされています。
その生涯・活動はマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4つの福音書の中で語られています。
家系
「ルカの福音書」によれば、父はアビヤの系譜の祭司・ザカリア、母はエリサベト。
母エリサベトとイエスの母マリアは親戚の関係とされます。
父はモーセの兄・アロンの子エレアザルの子孫で、ダビデによって作られた祭司職、24の階級の8番目の階級の長アビヤの系譜の祭司。
母エリサベツはアロンの娘の一人。
ヨハネは父方と母方の両方でアロンの子孫、イエスとは従兄弟であったとされます。
ヨハネの洗礼
洗礼者ヨハネは紀元後 1 世紀初頭にヨルダン川流域でユダヤ教の説教者として活動。
最後の審判の時が迫り、メシアが出現するという終末の預言者でした。
4つの福音書はヨハネを「来るべきメシアのために道を備える荒野で叫ぶ声」としています。
その活動の中心は「洗礼」
「悔い改めよ、天の国は近づいた」と終末の到来を説き、人々に神への信仰(回心する)を求め、罪を悔い改めた人々にその回心を認証するものとして洗礼を施す「洗礼者」
この「悔い改め」が最後の審判に救われる唯一の手段だと説いています。
この「悔い改め」は道徳的な「改心」と言う意味ではなく、当時の生活に密着した実践的な「回心」だったとされます。
当時のユダヤでは宗教的な律法を厳格に守ることが重んじられました。
けれど、ヨハネはこの律法を守れなかった、その余裕もない貧しい人々を軽蔑し差別する風潮こそを罪とし、富裕層や高職の特権や汚職をなくすという具体的な言葉で表されました。
この活動は「罪の許しに至る回心の洗礼」と称され、民衆に絶大な影響を及ぼし、この活動に賛同したイエスも、ヨハネによって洗礼を授かります。
また、ヨハネのメッセージは、神の到来を告げるものでもありました。
洗礼はユダヤ教の儀式とは根本的に異なり、人間が神と再会し、天の家に戻ることを象徴する儀式であったとされます。
そうして、ヨハネは旧約聖書と新約聖書をつなぐ架け橋となり、その宣教活動によって、預言者としての400年近い沈黙が終結しています。
神に遣わされた証人
マタイ・マルコ・ルカの福音書には、まずエリヤ(メシアの前触れとして現れる、ヤハウェ信仰を勝利させた大予言者)、その後にキリストが現れると信じられていたと記されています。
けれど、ヨハネは、自分がエリヤの生まれ変わりであることを否定します。
マルコの福音書では『使者が先に遣わされ、荒野で叫ぶ声がする』と記されています。
ヨハネは罪の赦しのために悔い改めの洗礼を行い、その後、水ではなく聖霊で洗礼を授ける別の人が来ると言います。
ヨハネの福音書の洗礼者ヨハネは「神から遣わされた人」
「光ではなかった」が、光を証す者。
ヨハネは、自分がキリストでもエリヤでもないことを認め、「荒野で叫ぶ者の声」であると自らを語っています。
ヨハネの生涯
誕生
ヨハネは紀元前6年〜前2年、パレスチナ、エルサレム近郊で生まれています。
その日はイエスより半年前の6月24日。
その誕生は天使ガブリエルによって、エルサレムの神殿で祭司でヨハネの父ザカリヤに告げられています。
ザカリヤはアビヤ修道会の年老いた祭司。
妻は閉経を過ぎた高齢のエリサベト。
ヨハネもまた奇跡の子として誕生しています。
活動
洗礼者ヨハネは荒野での生活をおくった後、ヨルダン川流域で活動いています。
ヨハネはその教えと同様に「ラクダの毛皮をまとい、イナゴと野蜜を食料とする」質素な生活をおくっています。
それは、ユダヤの預言者としての厳格な行いを遵守するというものでした。
当時、洗礼は改宗者をイスラエルの一員として受け入れる儀式として行われていました。
けれど、ヨハネの洗礼は悔い改めた者に対する神の赦しの確証とし、すべての人に正義を求めています。
ヨハネの信奉者たちは、悔悟の断食と特別な祈りを捧げます。
洗礼者ヨハネの活動は徴税人に洗礼を施し、兵士たちに助言を与えます。
紀元27年〜29年には、ヨハネは預言者として高い名声を得ます。
ヨハネとイエス
ヨハネの福音書の中で、ヨハネは自身がキリストであることを否定し、「光の証人」であることを繰り返し語っています。
新約聖書の中で、ヨハネはメシアの出現を待ち望んでおり、福音書で、ヨハネはイエスの先駆者して描かれています。
マタイの福音書で、ヨハネは「私の後に来る方は、私よりも力のある方」と語っています。
紀元28年頃、ナザレのイエスはヨハネに洗礼を授かります。
そして、ヨハネの行っている荒野での洗礼活動(荒野の誘惑)に入ります。
マルコの福音書には、洗礼の際、イエスが水から出ると、天が開き、聖霊がイエスの上に舞い降り、天から「あなたは私の愛する子」という声が聞こえた。
ヨハネの福音書では、ヨハネ自身が「聖霊が鳩のように天から降りてきて、イエスの上にとどまる」のを見たと語り、イエスが「聖霊で洗礼を施す」方で「神の子である」と公言しています。
洗礼を授かった後、イエスはヨハネを「神の国の到来に備えた、最後で最も偉大な預言者」とし、ヨハネの宣教を継承し、発展させてゆきます。
そして、ヨハネは自ら自身の弟子たちがイエスに従うことを望んでいます。
ヨハネの最期
ヨハネは紀元30年頃、当時のガリラヤとペレアの統治者ヘロデ・アンティパスの命により斬首されています。
ヘロデ王は妻ファサエリスと離婚、兄弟ヘロデ・フィリッポス1世の妻ヘロディアと不法に結婚。
ヨハネはその結婚を非難したため捉えられ、死刑宣告されます。
名高いヨハネを殺すことらめらいう王に、王妃が画策。
王の義娘・サロメに「宴会で舞踏を披露する報酬に、ヨハネの首をねだるよう」と促します。
ヨハネは獄中で斬首。
その遺骸は弟子達に引き取られ葬られたとされています。
サロメ→
イエスはヨハネの死を知り、自らの定めを悟り、エルサレムを目指したとされます。
ヨハネ、洗礼者。意外なほどに出番が少ない
1964年公開『奇跡の丘』はマタイの福音書を忠実に再現された作品。
洗礼者ヨハネ(マリオ・ソクラテ)はイエス(エンリケ・イラソキ)に洗礼を授け、サロメの指示で、処刑されています。
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『聖☆おにいさん』の洗礼者ヨハネは泳げないイエスが川に入るのを嫌がるため、やかんで頭から水をかけて「洗礼」しています。
残念ながら、24年放映作品の中では出番がないようですが😂
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ヨハネ まとめ
正直なところ、
もしイエスが実在した人物だとすれば、イエスの生涯は、「マリアの処女懐妊で生まれ、奇跡を起こし、神に召された後、復活」という、人間とかけ離れたものということになります。
もしそれが本当なら、イエスは宇宙人が人間に宇宙人の遺伝子を与えたハーフ。
それなら処女懐妊も、奇跡を行ったことも、もしかしたら蘇生も可能なのかもしれない。
そうでないとすれば、福音書の中のイエスの生涯は色々と着色され、誇張されて描かれていることになります。
けれど、そのイエスと比較して、
ヨハネは神の子ではないためか、
質素な救済活動も、時の権力者を批判したために斬首されてしまったことも非常に現実味のあるお話に思えます。