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ベオウルフは北欧の地、デンマークで古くから語られている英雄の物語。
英国最古の英雄譚とも呼ばれるゲルマン神話の勇者ベオウルフのお話です。
近年、映画やアニメでもお馴染みのドラゴンスレイヤーの原型ともいわれる英雄ベオウルフの物語のご紹介です。
ベオウルフ、英国最古の英雄譚
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ベオウルフ(Beowulf)はイギリスの英雄叙事詩。
その伝説が成立されたのは8〜9世紀と言われており、物語は二部に分かれ3000行という長大な古代英語の重要な資料の一つでもあります。
物語は主人公ベオウルフの若い時の勇士を描いた第一部と、老域に入ったベオウルフ王の最期までを描いた第二部に分かれています。
作者は不詳。
『ニーベルンゲンの歌』『ロランの歌』『わがシードの歌』と並ぶ中世西欧の記念碑的作品。
指輪物語で知られる言語学者J.R.トールキンもその研究者の一人で、ベオウルフの物語は彼の作風にも大いに影響を与えています。
ベオウルフ第1部
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このゲルマン神話は、デンマーク(デネ)国の王フロースガールの宴から始まります。ヘネオットという名の城を築いたことを祝う宴は、その騒めきに怒った謎の巨人(ドラゴンとも言われている)グレンデルによって襲撃されます。グレンデルは毎晩、城の人間を一人、また一人と食い殺していきます。
王はグレンデルを恐れながらも、何も出来ないまま12年が経過しました。そして、遂にその噂を聞きつけた英雄ベオウルフが海を越えて王の元へと馳せ参じます。
その夜、城の警備に当たったベオウルフに襲いかかるグレンデル。しかしその時、ベオウルフは丸腰でした。
素手での肉弾戦の末、ベオウルフはグレンデルの腕を引きちぎります。しかし、息の根を止めることには失敗します。逃げ帰ったグレンデル。息子を傷つけたことに怒った彼の母親は、翌日、王国を襲い、大勢の者が殺されました。
遂にベオウルフは二人の根城へと向かい、死闘の末に怪物を打ち倒します。
この時彼が使った剣が『フルンティング』とも言われていますが、結局戦いの中でその剣は役に立たず、投げ捨てられた末にベオウルフは素手で決着をつけたのだとか。
ちなみに、第1部悪役のグレンデルは一説には旧約聖書に語られる人類史上最初の弟殺しカインの末裔と伝えられています。
ベオウルフ第2部
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その功績を称えられベオウルフはデネ国の王となり、時は流れます。彼に治められた王国には平和が続きます。しかし、ある時財宝が持ち去られた事に怒ったドラゴンが王国を襲います。
ベオウルフは大きな盾を作らせ、仲間と共に、ドラゴンのいる岬へと向かいます。
ベオウルフと竜との戦いは相打ちに終わり、ベオウルフは仲間たちに見守られながら息を引き取ります。生き残った者たちは王を宝と共に埋葬します。
叙事詩「ベオウルフ」の編成は
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これかベオウルフ伝説の主なあらすじなのですが、 どうもこの第1部と第2部の繋がりが微妙で、第2部悪役のドラゴンの出現が唐突です。
これには、どうやら第1部と第2部はもともと別の話だったのが、伝承の過程で一緒にされたとの説があります。
第1部登場人物フロースガール王の祖父の名もベオウルフ(『ベーオウ』の誤記とされている)と表記されており、物語中にベオウルフが二人存在することになります。
それもあって、この第1部と第2部は元は別の時代、別の物語、また別の登場人物のものだったのが、いつの間にか混ざってしまったのだと考える学者もいます。
ベオウルフの登場するフィクション
ロバート・ゼメキス監督作品「ベオウルフ 呪われた勇者」は実写取り込みとCGアニメを融合させた映画。フルCGで描かれた迫力のあるアクションシーンと、実写の俳優の顔を高いレベルで再現したキャラクターが魅力の一作。出演はレイ・ウィンストン、アンソニー・ホプキンス、アンジェリーナ・ジョリー。
先に紹介した、第1部と第2部の繋がりの薄さを「ベオウルフの犯した罪」「王にかけられた呪い」という設定で無理なく繋げています。
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「Fate/GrandOrder」ではサーバントの一人として登場しています。クラスはバーサーカー、宝具は「源流闘争(グレンデルバスター)」、元のゲルマン神話通り肉弾戦を得意とするキャラクターです。
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ベオウルフ まとめ
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原作は長大な叙事詩のため、有名な部分だけをご紹介しています。
興味が湧いた方はJ.R.トールキンによる現代語訳もあるので、目を通してみるのもいいかと思います。
なんにしろ、勇者と怪物やドラゴンとの戦いは全世界共通の冒険物語。
その原型となるベオウルフが現代に語り継がれているのは興味深いところです。
トールキンのベーオウルフ物語<注釈版> [ J・R・R・トールキン ]