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バベルの塔、人間が異なる文化と言語を持つようになった起源の物語

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ピーテル・ブリューゲル(父)作 「バベルの塔」 (1563)

「バベルの塔」は旧約聖書の創世記で語られる、天まで届く高さを目指して建てられた塔。 

ノアの方舟の後、人間の文化や言語が異なる原因になった物語です。 

 

方舟で生き残った善良なはずの人間の所業、バベルの塔の詳細を探ります。 

 


 

バベルの塔、人間の傲慢が生んだ、天まで届く 

ピーテル・ブリューゲル作1568年

バベルの塔とは 

バベルの塔は旧約聖書の「創世記」で記される巨大な塔。 

人間の傲慢さの象徴として建築され、文化や言語が異なることになる物語です。 

 

バベルとはヘブライ語でバビロン 

アッカド語では「神の門」、聖書ではヘブライ語の「balal(混乱)」の意味で用いられます。 

聖書ではバベルの記載はなく、「塔」とだけ記されています。 

 

ノアの方舟の後、アブラハムのエピソードの前に位置する物語 

一般的には創世神話として扱われていますが、一説には紀元前6世紀バビロンのマルドゥク神殿に築かれたエ・テメン・アン・キという名のジッグラト(聖塔)が起源であるとされます。 

 

旧約聖書 創世記 11章

全べての地の民は、ひとつの言語であった

東から来た人々は、シンアルの平原に移り住んだ。

さあ、煉瓦を作り、火で焼こう。」と言い合い、煉瓦を石の代わりに、アスファルトを漆喰の代わりとした。

そして言った。「町と塔を築こう。塔の頂は天に届くほどに。他の地に散ることのないように。我々の名を上げよう」 

主は、人の子らが築いた町と塔を見ようと降られ、言われた。 

「彼らはひとつの民、ひとつの言語で、こうしたことを始めた。この業は彼らの行いの始まりであろう。
私たちは彼らの言語を乱し、互いが理解できないようにしよう。」

そして主は、人々を全ての地に散らされた 

こうして彼らは、その町と塔を築くのをやめ、この町はバベル(混乱)と呼ばれた 

 

高さ 

『創世記』の中では「その頂は天に届くほど」と表現され、具体的な高さについては記されていません 

『ヨベル書』紀元前2世紀、ヘブライ聖書の書物のひとつでユダヤ教の外典あるいは偽典)の塔は5,433キュビト2パーム(2,484メートル、8,150フィート、1.54マイル)と記されています。 

『バルクの第三黙示録』紀元後70年〜3世紀の偽典)の中で記される「争いの塔」は 463 キュビト (211.8 メートル、695 フィート) の高さとされます。 

 

実在した(?)、起源の建物 

ギュスターヴ・ドレ 作

バベルの塔は太古に実在した建造物をモデルとしていたとされる説があります。 

その代表的なものが紀元前6世紀、新バビロニアの初代王・ナボポラッサルネブカドネザル2世がバビロンの守護神・マルドゥクに捧げた聖塔・エ・テメン・アン・キ 

シュメール語で「天と地の基礎となる建物」を意味する、バビロンの中心部に築かれたジッグラト(聖塔) 

ヘブライ語ではバベルと呼ばれていました。 

 

その建築にあたり、マルドゥク神は王に「神殿の土台は冥界の奥深く、頂は天と等しく」するよう要求したとされます。 

 

その規模は 

底面約91m×約91m、高さ約90–91mの7層建て 

各層が七曜、1階が土星、2階が木星、3階が火星、4階が太陽、5階が金星、6階が水星、7階が月を表していたとされます。 

 

後の文献で語られる『バベルの塔』

作者不明 1897年

キリスト教、ユダヤ教の正典である『旧約聖書』以外にも、その後、外典や偽典の中で独自の視点の『バベルの塔』が語られています 

 

◾️ヨベル書 

「ヨベル書」は、古代ユダヤ教の外典。 

紀元前2世紀、ユダヤ人によって書かれたとされるヘブライ聖書のひとつです。 

 

彼らはアララテの地を去り、東のシナルへ移り住んだ。 

彼らは「これをつたって天にのぼろう」と言って塔のある都市の建築にかかった 

火で煉瓦を焼き、煉瓦が石の代わりとなり、塗り固めるための漆喰は海とシナルの泉の水のアスファルトで43年をかけて建てた 

間口は煉瓦が203個ならび、その高さは5433キュビト、壁の幅は13スタディオンあった 

主は言われた。「見よ、ひとつの民の彼らに不可能ということはない。ならば彼らの言語を乱し、話が通じないように。各地の都市や民族に散らばらせ、裁きの日まで意見の一致をみることのないようにしてやろう。」 

彼らは互いの言葉が通じなくなり、都市と塔の建築は中止した。 

このことから、シナルの地はバベルと呼ばれた 

彼らはその言語、民族にしたがってそれぞれの都市に分散していった 

主はその塔を大風で壊された 

その塔はアッシリアとバビロンの中間、シナルの地にあった。 

人々はそれを「崩壊」と呼んだ 

 

◾️ ユダヤ古代誌 

ユダヤ古代誌(西暦 94年頃)はユダヤ系ローマ人の歴史家フラウィウス・ヨセフスの著書。 

ヘブライ語聖書に記された歴史、天地創造からユダヤ戦争直前までの全20巻から成るユダヤ史書です。 

ヨセフスは、民を神から引き離そうとした暴君ニムロデが塔を建設させたと記しています。 

 

人々を煽動して、神を貶めたのはニムロデであった 

ニムロデはノアの息子ハムの孫 

ニムロデは、人びとの幸福は神の恩恵ではなく、自らの勇気が勝ち取るのだと信じ込ませた 

また、ニムロデは専制政治を敷き、人々を神への畏怖から遠ざけ、ニムロデの力に依存させた 

民衆はニムロデに従い、苦労を惜しまず塔を建てた 

それは焼いたレンガで建てられ、モルタルで固められ、ビチューメン(アスファルト)で作られ、浸水にも耐えられるものになった 

神は彼らの行動を見て、しかし完全に滅ぼそうとはなさらなかった 

神は彼らの中に様々な言語を生み出し、彼らが互いを理解できないようにした 

彼らが塔を建てた場所は言語が混乱したために、今ではバビロンと呼ばれている。 

ヘブライ語でバベルは混乱を意味しているからである。 

 

◾️バルクの第三黙示録 

バルクの第三黙示録は起源2世紀頃に書かれた、紀元前6世紀のバルク・ベン・ネリヤに帰せられる偽典の一つ。 

幻視の中でバルクは「「神に対する争いの塔」を建設した者たちを目撃します 

「争いの塔」の建設者たちは、牛の顔、鹿の角、山羊の足といった表現で描かれ、彼らに塔の建設を命じた者たちは、別の地で永遠の罰として、犬、熊、あるいは猿の姿に生まれ変わります。 

 

塔の建設を助言した者たち、男も女も、煉瓦作りに携わったものたち。 

その中には、煉瓦作りの女がいた。 

身重の女は、煉瓦作りの最中に出産させられ、前掛けに子供を宿して煉瓦作りを続けた 

そして、彼らは塔を463キュビトの高さまで建た 

主が彼らに現れ、彼らの言葉を混乱させた 

彼らは錐を取り、天を貫こうとして言った。 

「天が粘土か、青銅か、それとも鉄でできているのか、見てみよう。」 

神はこれを許さず、彼らを盲目にし、言葉を混乱させた 

 

タロットカードになったバベルの塔 

パメラ・コールマン・スミス作  ライダー・ウェイト版  1910年

タロットカードの『塔』はこの「バベルの塔」がモチーフになっている、最も悪い事が起こるとされる札。 

突然の衝撃的な出来事を象徴し、積み重ねてきたものが崩れ去る様子や、そこからの 再生や 浄化を表すカードです 

 

正位置では 

物事の行き詰まり。 

計画の頓挫、人間関係の破綻など、安定していたものが崩れる出来事を暗示しています。 

逆位置では 

障害を乗り越えて道が開かれる過程や、困難の長期化を示唆します。 

 


 

バベルの塔、現代ではコンピュータ制御された宇宙船? 

『バビル2世』は1973年放送、横山光輝原作のアニメ。 

宇宙人・バビルの子で超能力者の浩一が三つのしもべと共に、世界征服を企むヨミと戦う物語。 

その中でのバベルの塔は父・バビルの遺産であるコンピュータ制御された宇宙船です。 

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バベルの塔 まとめ 

ヨース・デ・モンペル 作

『創世記』の中だけでも、人間は、 

生まれてすぐにアダムとイブはエデンの園を追放され、 

ノアの家族以外の人類は洪水で滅ぼされ、 

そしてこのバベルの塔で多言語・多文化を持つ種族にされた。 

なんとも、神に幾度も罰せらた種族です。 

 

そして今、黙示録で予言されている世紀末を迎えようとしている? 

 

人類は、自制心や良心が欠如した、地球に巣食うウィールスのような存在なのかもしれません。 

 

 

 

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