獏は日本では悪夢を食べてくれる、本家中国では邪気を払うとされるありがたい幻獣。
初夢や、大切な日の前夜に見る悪夢は避けたいものです。
そこで、獏に悪夢を正しく食べてもらう方法についてご紹介。
下手をすると希望や願望も食べられてしまう獏の生態を探ります。
貘、悪夢を食べる幻獣
貘は中国伝来の幻獣。
中国ではその皮を敷いて寝れば疫病を避け、邪気を払うといわれます。
日本では人の夢を喰うといわれ、悪夢を見た後に「この夢を獏にあげます」と唱えると同じ悪夢を見ないと伝えられています。
俗説では、神々が他のすべての動物を造り終え、残った余り物から造られたものであるとか。
鉄や銅を食べ、その尿には金属を溶かす作用があるといいます。
獏は仏教と共に日本に伝来しています。
室町時代より日本での獏と夢の繋がりが語られており、枕に獏の図や「獏」と一字を書いたものを敷いて眠ったといわれます。
江戸時代には、元旦あるいは二日の夜に、『「宝」や「獏」と書かれた帆を上げ、七福神を乗せた宝船に、「なかきよのとおのねふりのみなめさめ、なみのりふねのおとのよきかな(長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな)」という回文の歌を記したもの』を枕の下に敷いて吉夢を願いました。
心理学者堀忠雄は著書「夢とこれからの夢研究のカルチャーノート: 悪夢からの解放と夢制御技術の開発」の中で獏の夢を食べる能力に触れています。
小泉八雲(ラフカディオ・ ハーン)の短編小説「夢を食うもの」では、漠がやって来て主人公の、一見悪夢のような吉夢を食べるのを断ったというお話が語られています。
獏に悪夢を食べてもらう方法
獏は悪夢を見る者の悪い夢を食い荒らし、安らかに眠りに戻れるといわれます。
眠りにつく前に枕元に獏の文字や絵を置けば、お守りになると伝えられています。
けれどもし、悪夢を見てしまったら「獏さん、私の夢を食べに来てください」と三回繰り返します。
ただし、獏を呼び出すのは最悪な夢に限ります。
悪夢を食べた後も空腹だと獏は希望や願望もむさぼり食ってしまいます。
獏の外見
貘の外見については中国唐の時代の漢詩人・白居易は「貘屏賛」序に、鼻は象、目はサイ、尾は牛、脚は虎に似ていると記述しています。
- 中国最古の語釈辞典『爾雅』では「白豹」
- 最古の漢字字典『説文解字』には「熊に似て黄黒色」
- 文学者・卜者郭璞は「熊に似て頭が小さく脚が短く、黒白のまだらで銅鉄や竹骨を食べる」と記しています。
また、17 世紀初頭の日本の写本「山海遺物」では、『象の鼻と牙、サイの耳、牛の尾、体を持つ内気な中国神話のキメラ』として説明しています。
獏の起源
中国の獏伝説では、獏の毛皮を座布団や寝具に用いると疾病や悪気を避ける、獏の絵を描いて枕元に置けば邪気を払う辟邪(魔除けとなる幻獣)のような存在。
中国ではかつて睡眠中に魂が遊離すると信じられていました。
そのため、浮遊する魂が悪霊に狙われないよう、寝室には辟邪などの神獣が置かれていました。
日本での漠の役割については、中国の「悪夢を払う」が「悪夢を食べる」と解釈されるようになったものというのが定説。
一説には人の心や悪夢を吞むことのできる巫女、伯奇(はくき)と混同されたものともいわれます。
中国・唐代を代表する詩人、白居易(はくきょい)は 『白氏文集』貘屏賛序の中で獏について語っています。
『南方の山谷中に生まる。其の皮に寝ぬれば湿を避け、其の形を描けば邪を避く。 予旧より頭風を病み、寝息する毎に、常に小屏を以て其の首を衛る。適々画工に遇ひて、偶々之を写さしむ。山海経を按ずるに、「此の獣鉄と銅とを食らひて、他物を食らはずと。」
南方の山地の谷で生まれる。その皮で寢れば湿気を避け、その形を絵に書けば邪鬼を避る。
私は昔から頭痛がひどく、寝る時にはいつも小さな屏風を立てて首を守った。そんな時、画工に出遇い、貘の姿を屏風に描かせた。
山海経には『この獸は鉄と銅を食べ、他の食物を食べない』とあった。
獏、現代でもコワカワユイ系妖怪?
『忍者戦隊カクレンジャー』のバクキは祈祷師のような衣装に、背中に赤い蝙蝠の翼、尻に悪魔の尻尾が生えた妖怪軍団の1体。ニンジャマンが封印された壷をつけ狙っています。
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『 妖怪ウォッチ』の バクは人の「夢」を食べる妖怪。とりついた人を眠らせて見ている夢をゆっくりとごちそうになる、コワカワイイプリチー族、
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『グランブルーファンタジー』の獏は星晶獣オネイロスのペット。「夢の回廊」で悪夢に囚われたカタリナとラカムを救う主人公たちの前に立ちはだかります。
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獏 まとめ
初夢に富士や鷹を見るなんて高望みはしなくても、せめて悪夢は見たくはないですよね。
夢の解釈なんて難しいことは置いといて、せめて楽しい夢で清しい翌朝を迎えたい。
元旦の夜は漠さんにお願いして睡りたいと思います。