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アビス、聖書で語られる深淵。混沌、奈落、あるいは地獄

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サンドロ・ボッティチェッリ 作

アビスは聖書で語られる深淵。 

旧約聖書の中では「創世記」で、世界が生まれる混沌。 

新約聖書の中では「ヨハネの黙示録」で、サタンが1000年の間幽閉され、イナゴの大群が放たれる地獄として語られています。 

 

そのアビスに注目です。 

多くの文面に見るアビスの持つ意味と、そこにある神の意図とは 


 

アビス、深淵、混沌から奈落、冥界になった「底知れぬ深み」 

ギュスターヴ・ドレ 作

アビスとは 

アビス( Abyss )は旧・新約聖書に記される深淵。 

語源はヘブライ語のテホム「tehóm」

ギリシャ語のアビュッソス「abyssos (無底)」からラテン語「abyssus」を経て英語のアビス「Abyss 」に至ります。 

 直訳すれば深淵、奈落、底なしの穴 

神の力が及ばない「絶望の淵」、底が見えない深い淵を指します。 

 

心理的には未知の恐怖や、抜け出すことのできない最悪の状況を強調する際に使われ、絶望、混沌、地獄、または計り知れない謎や危機的な状況を意味する言葉として用いられます。 

 

旧約、新訳で変わるアビスの意味 

『創世記』に記されるヘブライ語の「tehóm」の本来の意味では、深淵とは、秩序ある世界が創造された「原初の水」または「混沌 

海の深い源、または地球の内部を指すと解釈されます。 

 

後のユダヤ文学旧約聖書と新約聖書の間)では拡張され、深淵は「冥界」 

死者のシェオル(住処  地下世界)または堕天使の領域である「地獄」を意味しています。 

神の秩序から離れた「混沌(カオス)」や、死者の世界(冥界)の深い部分を指すと解釈されます。 

 

『ヨハネの黙示録』では、悪霊やサタンが1000年の間閉じ込められる冥界、あるいは地獄。 

アビスが開かれると、そこからイナゴや怪物が現れ、人類に災いをもたらす源である地とされます。 

 

旧約聖書のアビス 

ギュスターヴ・ドレ作『大魚に吐き出されたヨナ』

◾️『創世記』(古代ヘブライ語で記された、ユダヤ教、キリスト教の啓典の最初の書であり、正典の一つ) 

その第1章に 

初めに、神は天地を創造された。地は形なく混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を覆っていた。」 

と記されています。 

 

◾️『ヨナ書』(旧約聖書文書のひとつ) 

その内容は 

神の命に背いて敵国へ逃亡しようとした預言者・ヨナに神は怒り、嵐を起こし、ヨナは巨大な魚に飲み込まれてしまいます。 

ヨナは魚の中で神に祈り、悔い改め、敵国ニネベの悔い改めを促し、神の憐れみと深さを知るという物語。 

 「あなたはわたしを海深く、海の中心(レヴァブ・ヤンミーム)に投げ入れられたので、流れがわたしを囲み、あなたの波と波浪がみな、わたしの上を過ぎ去った。」 

「水はわたしを囲んで魂にまで達し、深淵(テホーム アビス)がわたしを巡り、海草がわたしの頭にまとわりついた。」 

ヨナは海に沈み、「山々の基にまで下り」「地がそのかんぬきで永久に閉ざされる」ような深海、すなわち死者の場所、奈落(シェオル)(深淵)まで下っていった 

とあります。 

 ヨナは自分を飲み込んだ魚の腹を「陰府 奈落(シェオル)の腹」と呼び、海に投げ込まれた状況を「深い淵(アビス)」の真っ只中と表現 

ここで描かれる「アビス(深淵・深い海)」は、海に投げ込まれ、陰府(シェオル)を体験したことの死の淵や混沌、あるいは神からの断絶を表しています。 

 

新約聖書のアビス 

ギュスターヴ・ドレ 作

◾️ルカによる福音書 

この中の『ゲラサの悪霊に取り憑かれた男の悪霊払い』はイエスが行った奇跡の一つ 

イエスが男に取り憑いた悪霊を豚の群れに入れ、豚は湖に飛び込み溺死する内容の物語。 

その8章に「イエスはガダラ人の豚を深淵に送った」と記されています。 

男に取り憑いたゲラサのレギオン(悪霊)は彼らが最も恐れる「底知れぬ奈落(アビス)」へ送らないよう懇願しています。 

 

◾️『ローマ人への手紙』(『新約聖書』中の一書) 

使徒パウロはこの中で、 

『誰が深淵(アビス)に下るのか』」と言ってはいけない。それは、キリストを死者の中から引き上げることです。 

と記しています。 

これは、申命記30章13節を引用し、神の命令が遠く難しいものではなく、すでに人々の身近(心や口)にあることを意味しています 

 

◾️『ヨハネの黙示録』(『新約聖書』の最後に配された聖典) 

その内容は 

戦い、飢饉、自然災害が世界を襲い、神による最後の審判が下されます。 

悪魔や偽預言者(獣)が放たれ、戦いを挑みますが、最終的にはキリストが勝利。 

「新しいエルサレム」が訪れ、神が人々と共に住む平和な世界が完成するというもの。 

 

第9章では、

七人の天使が第五のラッパを吹くと災いの中で、アビスから煙が立ち昇り、天から落ちてきた星(天使)にアビスに穴を開ける鍵が与えられます。 

底知れぬ淵の天使・アバドンを王とする「いなご」の群れが解放され、額に神の印のない人たちを襲います。 

ーちなみにここで語られる「神の印」とは7章で語られる、4人の天使が地球に災い(風)をもたらす前に、別の天使が「生ける神の印」を持って現れ、神の僕たちの額に付けるとされるもの。 

これに対し、13章では、反キリストが人々を惑わし、右の手や額に「獣の印(666)」を押させ、偶像崇拝を強要します。ー 

 

13章では 

12章で竜(サタン)が天から追放された後、海(アビス)と地から現れる2匹の「獣(反キリストと偽預言者)」がサタンの権威を受けて全世界を支配、欺き、人々を迫害します。 

 

第20章では、 

神によって悪魔(サタン)が1,000年の間、このアビス(底なしの淵)に投げ込まれ、閉じ込められ描写があります。 

 

概念としてのアビス 

オディロン・ルドン 作

概念としてのアビスとは、単なる「深い場所」ではなく、神の秩序や人間の希望に敵対する「混沌」「虚無」「理解不能な深淵」を指す比喩。 

 

プラトン以降の古代の哲学者は「アビス(深淵)」は混沌(カオス)の源泉、「無秩序な原素材」と解釈 

キリスト教神学ではこの概念を「神の秩序に敵対する否定的概念」へと転換。  

未知の恐怖や最悪の状況、抜け出すことのできない絶望や混沌、計り知れない謎や危機的な状況など、心の闇を表す言葉として用いられます。 

 

ドイツの哲学者・フリードリヒ・ニーチェは「深淵(Abyss)を覗き込む時、深淵もまたこちらを見つめている」と語っています。 

これは、理性と闇や混沌の対峙を示唆するものとして、哲学的な観点でアビスについて語る際に引用されます。 


 

アビス現代でも深淵や闇 

映画・ドラマ 

『アビス』1989年公開、ジェームズ・キャメロン監督作品。 

核潜水艦の救助に向かったダイバーが深海で未知の生物と遭遇する深海SFアドベンチャー。 

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ゲーム、アニメ 

人気アニメ『メイドインアビス』のアビスは中心が見えないほど深く巨大な大穴。そのアビスを舞台にリコの冒険の旅が始まります。 

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オープンワールド・アクションRPG『原神』のアビスは「天理」の支配する世界を崩壊を企てる、テイワットの地下や「虚界」と呼ばれる領域に潜む、謎の邪悪なエネルギー勢力。 

旅人は双子の片割れを探し故郷を復興させるために冒険の旅に出ます。 

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ダークソウル』シリーズのアビスは「ダークソウル」の断片から生まれた、すべてを吸収し拡大する闇の領域。 

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機動戦士ガンダムSEED DESTINYのアビスはザフトが開発した水中戦用モビルスーツ ZGMF-X31S 。 

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2025年発売のローグライトアクションRPG 『無双アビス』。 

「地獄の深淵(ダンジョン)」を舞台に、大量の敵をなぎ倒す爽快感と、遊ぶたびに変化するステージ構成、武将の育成・編成を組み合わせる「160億通り」のビルドが特徴です。 

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アビス まとめ 

フレデリック・キャザーウッド 作

アビスから話はそれますが、 

ホラー映画の金字塔『オーメン」の主人公で悪魔のダミアンは666の印が悪魔であることの証として描かれていますが、その着想は『ヨハネの黙示録』に記された獣の印に由来するというのは有名なお話。 

 

終末の時、アビスが開かれ、底知れぬ淵の天使・アバドンが放たれ、神が勝利した後はサタンが幽閉される。 

アビスはまさしく地獄。 

心に闇を抱える者にとってもその境地は地獄。 

不気味な深淵どころではない、耐え難い苦痛を伴う境地という印象です💦 

 

 

 

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