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聖書の中のセトは弟を殺したカインと殺されたアベル、そのふたりの末の弟として登場しますが、エジプト神話のセトはセト自身が兄のオシリスを殺した、暴風と破壊の悪神。
けれど、太陽神ラーの舟を大蛇アポピスから守る重要な役目を担います。
最近では韓国のアニメでも人気の、そんなセトに注目です。
なんか日本の荒神スサノオともイメージが重なるセトってホントに悪神?
目次
セト、暴風と破壊、戦いの神
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セト(set)は古代エジプト神話の砂漠と暴風、戦いを司る神。
エジプトの創世神話に関わるヘリオポリス九柱神の一柱です。
原初の創造神ゲブと天空の女神ヌトの間に生まれた末の男神。兄は冥界の神オシリス、姉は豊穣の女神イシス、妹のネフティス。ネフティスはセトの兄妹で妻でもあり、葬祭と死者の守護女神。
別名はセトゥ(Seth)、セテカー(Setekh)、セティ(Seti)、ギリシャ語ではセス(swtẖ)。
有名なエジプト神話「オシリスとイシスの伝説」の中でセトは、兄オシリスの名声をねたみ、兄を殺害。一旦はエジプトの最高神となりますが、オシリスの息子ホルスにその座を追われます。
セトの神格
セトは、キャラバンの守護神、砂漠と嵐、異邦、戦いを司る神。
エジプトの国土は大半が砂漠。嵐、暴風という天候を司るセトは「砂漠の王」として崇拝されます。セトはその砂漠の化身として、絶対的な力を持ち、エジプトの民に畏敬の念を抱かれる神。
セトへの信仰は、エジプトで王朝時代が始まる以前から存在したといわれ、古代のエジプトでは高潔な最高神でした。
けれど、統一エジプト王国文明に入り、オシリスが主神として確認されるようになると、上下エジプト間で覇権争いを起こし、オシリスを謀殺した悪神。不毛の砂漠、暴風を人格化した破壊、策略を生む邪神となってゆきます。
オシリスとイシスの子、ホルスとの戦いでは、敗北を期し、片足と睾丸をもがれるという結末をむかえます。
けれどセトは、本来は勇猛果敢な戦闘神であり、闇と混沌を司る邪神アポピスからラーを守るため、ラーの飛行船ソーラバークでラーに同行するという重要な役割を果たす神でもあります。
セトの外見
セトを表現している動物は、すでに絶滅したか、あるいは空想上の動物ではないかと言われ、その正体は定かではありません。
その存在は最も初期には、先史時代のエジプト(紀元前3790–3500頃)のアムラティア文化にさかのぼるとされます。
セトの特徴は一見するとジャッカル、あるいはツチブタ。犬、シマウマ、ロバ、ワニ、カバなどとも結びつけられます。
壁面に描かれたセトが手にしているのは、アンク(Ankh)と呼ばれる生命を意味する護符(お守り)と、権力と支配を象徴するウアス(Ouas)と呼ばれる杖。
アンクは現世と来世の間にある境界を超えるための、通行証。アンクの力を信じる者は一度だけ生き返ることができると伝えられています。
ウアス杖は王の守護神や王が持つ、セトが象徴する混沌の力を制御するシンボル。
時代が下るにつれ,セトは悪神、一種の悪魔とみなされるようになります。
四角い耳、先の分かれた尾(パピルスの花)、大きく突き出し長く曲がった鼻を持つ動物、または肩の上に四足獣の頭を載せた人間の姿で表されるようになります。
この正体不明な動物は英語で「セト・アニマル」と呼ばれます。
神話の中のセト
セトの王座への執着は上下エジブト期の間オシリスとその子ホルスとの間で続き、その物語は「オシリスとイリスの伝説」の中で語り継がれています。
オシリスとセト
セトは王の座についたオシリスの殺害を企てます。
言葉巧みにオシリスの体に合わせて作らせた棺にオシリスを横たわらせます。
オシリスが入ったその瞬間に蓋を被せ、隙間を溶かした鉛で塞ぎ、ナイル川に流します。
オシリスの妻イシスは失踪した夫を探します。
棺は地中海にまで流れ、フェニキア人の地ビブロスに流れ着き、宮殿の柱となっていました。
それを知ったイシスは王子の乳母に変身して、宮殿に入り様子を伺っていました。ある日王妃に見破られ、元の姿に戻って自身の素性とこれまでの経緯を話し、棺の返還を求めます。
イシスは棺を取り戻し、故郷に帰り棺を隠します。
それを知ったセトは棺を探し出し、遺体を14の部位に切断し、エジプト中にばら撒いてしまいます。
イシスは再び遺体の破片を探し回り、破片を繋ぎ合わせ、魔力で蘇生させます。
けれど、魚に飲み込まれた男根だけが回収できず、オシリスは不完全な身体で生き返ります。そのために現生には留まれず、冥界の王として復活することになります。
ホルスとセト
セトは王位継承権のあるオシリスの息子ホルスの殺害も企みます。イシスの助けも屈強なセトには敵わず、ホルスは殺されてしまいます。
この時、オシリスの治療を助けた知恵の神トートがホルスを生き返らせます。
そして、王位後継者を決める評定が開かれます。
最初はラーがセトに味方したためホルスは不利となりますが、イシスが魔法でセト自身に「父の財産は息子が継ぐべき」と発言させます。
この発言でセトは神々の信頼を失い失墜。怒ったセトは巨大な豚となってホルスを襲います。
次にはホルスとセトはカバとなってどちらが長く川に潜っていられるかを競います。
この時、イシスが誤ってホルスを攻撃したり、セトに言いくるめられたりした事に怒ったホルスに首を刎ねられてしまいます。
トート神はイシスの体に雌牛の頭を置いて蘇生させます。
ラーは母イシスを殺したホルスに罰としてホルスの両目を奪って山中に埋めます。この時は愛と美の女神ハトホルが雌アカシカの乳で眼球を再生。
また、イシスによってセトは両腕を切り落とされてもいます(これも後に再生しています)
最後の戦いでセトはホルスに石の船で勝負することを提案。ホルスはセトを騙し、杉の木を漆喰で覆った船で勝負を競い、セトの石の船だけが水に沈んでしまいます。
怒ったセトはカバに変身してホルスを襲いますが、逆にホルスの槍で睾丸と片足を失ってしまいます。
こうしてオシリスは地上の王位をホルスに譲ることが決まります。
善神か悪神か、戦闘神セト
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ホルスと王位をめぐって壮絶な戦を繰り広げたセト神は戦いに敗れ、悪神として世に知られますが、その存在は類をみない最強の戦士として必要とされる戦の神でもありました。
エジプト神話の太陽は、毎夕方に死んで地平線に沈み、翌夜明けとともに再び生まれ出る存在。
地平線の下にある危険な死の世界を太陽の船は航海しなければ、東の地平にたどり着くことが出来ません。そこには最大の敵であり太陽を飲みこもうとする巨大な蛇、アポピスがラーを狙います。セトは英雄的な神として、太陽神ラーの航海では邪悪な大蛇アポピスからラーを守ることが出来る唯一の神。
アポピスの「天敵」とされ、太陽を守護する頼もしい存在として変わりなく崇拝されます。
セト、現代でもキャラはまんま破天荒な暴れ者
「RADIANT-ラディアン-』のセトは頭に2本の角が生えた見習い魔法使いの少年。魔法使いにしか倒せない謎の魔獣「ネメシス」の巣がある秘境「ラディアン」を求め、世界を旅しています。
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遊戯王シリーズ「遊☆戯☆王」、「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」の海馬瀬人は童実野高校の生徒で主人公・武藤遊戯の永遠のライバル。現役高校生で大企業「海馬コーポレーション」の社長。頭脳明晰、権力と財力を駆使してやりたい放題な大胆な性格。
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韓国で大人気のWEBコミック『ENNEAD(エネアド)』はエジプト神話でもっとも有名なセトとホルスの対立を美しく描く一大叙事詩。待望の日本上陸です。
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「とーとつにエジプト神」はゆる〜くてシュールなエジプト神の日常をとうとつに描く人気アニメ。セトはホルスとは仲が悪く、しょっちゅう悪だくみをしてはいやがらせを仕掛ける破壊の神様。
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セト まとめ
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セトとホルスとの戦いについてはどっちもどっち。どちらが悪者なのかなんて決められない。
それにしてもバラバラに切り刻まれたり、両目をえぐられたり、首を切られてとりあえず牛の頭を代用したり、それでも再生する、なんとも、なるほど、シュールな世界です。