アムリタとはインド神話に登場する不死の霊薬
神ディーヴァと悪魔アスラが乳海をマンダラ山の擦り棒に大蛇・ヴァースキを縄にしてかき混ぜたことで生まれたというユニークで壮大な天地創造神話の中で誕生しています。
そのアムリタを巡ってのアスラとディーヴァが争い、日食・月食などの自然現象も誕生する霊験あらたかな甘露
アムリタに注目です。
目次
アムリタ、乳海攪拌で生まれた不死の霊薬
アムリタとは
アムリタ(अमृत、amṛta)は、インドの創造神話、乳海攪拌(サムドラ・マンタナ)で生まれた不死の霊薬。
サンスクリット語で「ない」を意味する「अa」と、「死」を意味する「mṛtyu」で構成される、「死がない」、「不滅」「不死」を意味します。
インド宗教の重要な概念で、古代インドの聖典のひとつ、リグ・ヴェーダでは神々の飲み物・ソーマの同義語とされます。
アムリタの誕生
神話の中で、ディーヴァ(神々)とアスラ(魔族)は争いを繰り返していました。
ある時、ディーヴァは聖者・ドゥルヴァーサスの呪いのため力を失い、天界をアスラに奪われてしまいます。
ディーヴァ(神々)はその力を取り戻すため、アスラと協力して不死の霊薬・アムリタを生み出します。
乳海と呼ばれる海をマンダラ山を攪拌棒に、ヴァースキ(竜王)を縄に、マンダラ山の樹木や生物のエキスも混入した乳海を1000年の間攪拌。
1000年の後、神々、宝物が誕生し、最後にアムリタの入った壺を携えた神々の医師・ダヌヴァンタリが出現します。
アムリタの効能
アムリタは、不死を与える霊薬と表現されていますが、正確には。それを摂取することでより高いレベルの知識と力を獲得することができる霊薬。
文脈においてのアムリタは、精神修行の究極の目標である解放(ヴィモクシャ)をいいます。
悟りを開いた人に平穏と明晰さをもたらす万能薬、あるいは概念。ニルヴァーナ(涅槃)を意味します。
修行者は、深遠な精神体験によって「不死の領域」精神の解放に到達するとされます。
アムリタで生まれた現象
日食・月食の誕生
アムリタの出現でそれを奪い合い、ディーヴァとアスラが争いとなります。
そのためヴィシュヌ神が女神モヒニに化身し、アムリタをディーヴァのものとします。
その際、ディーヴァになりすましたラーフ(あるいはスヴァルバヌ)というアスラがアムリタを飲み、太陽神・スーリヤと月神・チャンドラに気づかれてしまいます。
それを知ったヴィシュヌは右手に持つ武器スダルシャナ・チャクラ(円盤)でアスラの首を切り落としました。
そのアスラはアムリタを飲んだ首から上だけが不死となります。
告げ口したスーリヤ(太陽)とチャンドラ(月)を恨み、追いかけて飲み込みますが、体がないため太陽と月はすぐに外に出てしまう。インド神話の日食と月食の起源となります。
仏教においては怪物ラーフがアムリタを飲み、仏陀の守護神・ヴァジュラパーニの雷に倒されます。
ラーフは死ぬことはありませんが、その血が大地に滴り、あらゆる種類の薬草が誕生しています
ナーガの舌
その後、アムリタは神々によって保管されますが、ナーガ(蛇神)族に虐げられる母を助けるためにガルーダ(神鳥)が略奪。
ヴィシュヌ神の配慮でガルーダはナーガの天敵とされます。
またナーガはアムリタの壺(あるいは滴り落ちたアムリタ)をなめ、舌の先端が二つに分かれたとされます。
宗派によって違うアムリタの正体
アカル・タクト(寺院)のフレスコ画
古代インド宗教
古代のアムリタはソーマとも同一視される神々の飲料。
ヴェーダ祭祀の最も主要な供物です。
蜜のように甘い万病の薬。
『リグ・ヴェーダ賛歌』には「我らはソーマを飲めり、我らは不死となれり。」と記されています。
シク教(15世紀、インド・パンジャーブ地方の宗教)
ここではアムリットと呼ばれ、アムリット・サンチャル(洗礼に似た儀式)で使用される聖水。
5つの聖なる詩の朗唱の中、カンダ(聖なる剣)が用いられ、アムリットを飲料することで信者と認められます。
仏教
アムリタは仏典では阿密哩多と音写。漢訳では甘露。
ちなみに日本でもアムリタは甘い露、甘露と訳されます。
苦痛を治め、延命力をもつ甘い液。
不死、精神的な解放を象徴しています。
天界の「甘露」または「甘露酒」、「ダルマの甘い雨」(ダルマヴァルシャム・アムリタム)とも呼ばれます。
中国仏教では
マントラを唱える功徳によって生み出される祝福された水、あるいは食物と説明されています。
チベット仏教
チベット仏教では秘薬。
高位の僧侶のみが内服できる甘露丸
祝福の儀式に用いられます。
その成分は五つの仏と五つの要素を表す五つの肉と五つの甘露。
五つの甘露は、東に黄色の排泄物、西に白い精液、南に赤い血、北に緑の骨髄、中央に青い尿を配置。
4つの甘露丸は賢僧から、卵子は祝福された女性の初潮から採取。
5つの肉は、南東に黒い雄牛の肉、南西に青い犬の肉、北西に白い象の肉、北東に緑の馬の肉、中央に赤い人間の死体の肉を配置。
儀式の後これらは、至福・活力・不死・知恵を授ける髑髏杯(カパーラ)の供物となります
アムリタ、不死の霊薬は現代でも活躍?
『 モンスターストライク』のアムリタは不死の加護を与え、潜在能力を極限まで引き出す霊薬・アムリタの化身である水属性のモンスター
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『ペルソナシリーズ』ではペルソナ4では『アムリタ』、ペルソナ5『アムリタドロップ』『アムリタシャワー』の名のスキル。
『メガテンシリーズ』では魔法として登場。
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『ファイナルファンタジー11』でも不老長寿の効能があると伝えられる、幻のドリンクアイテムとして登場しています。
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アムリタ、まとめ
チベット仏教でのアムリタはまさに秘薬。
高僧の骨肉、処女の初潮を原料にするところなど、凡人の理解を超えた、ホラーな世界のようにも思えます。
けれど、考えれば人肉は食料としては栄養価でも味覚でも極上のタンパク源。
最良のアムリタにないそう💦