日本各地に伝わる河童伝説、その河童の起源や正体を探ります。
日本で最も有名な妖怪のひとつ、河童は実在したという説が今も残る伝説の生物です。
人に害を与えることも少ない、罪のないキャラなイメージ。けれど、実は恐ろしい妖怪であるという言い伝えも残されているんです。
河童の作る不思議な妙薬は実在するの?西遊記の沙悟浄は河童?そんな疑問も解消です。
出典:deviantar
河童とは、その起源や生態。河童の妙薬は実在する?
河童は実在したという説もある、日本各地の川、湖、沼、海にも住まう妖怪。「かっぱ」の名前は、「かわ(川)」に「わらは(童)」が組み合わされた「かわわっぱ」が変化したもの。
日本全国で伝承される水神、またはその依り代として扱われることもある、日本で最も有名な妖怪のひとつです。
河童の起源
河童の起源についてはいくつかの説があります。
◾️式神、護法童子、藁の人形
陰陽師・安倍晴明の式神、または役小角(えんのおづぬ)(役行者 えんのぎょうじゃ)の護法童子が川に放たれたもの。あるいは大工職人・左甚五郎が仕事を手伝わせるために、藁で編んで作った人形が生命を吹き込まれて河童になったなどの説があります。
この河童は両腕が体内で繋がっており、これは元は人形であったからと伝えられています。
◾️渡来した河伯
中国黄河の神・河伯が渡来し、転じたものとされる説。
渡来の河童は猿猴と呼ばれ、その性質も中国の猴に似ているといいます。彼らは多くの同族を増やし、その族長は「九千坊」と呼ばれました。
◾️水神
水神が零落して河童になったという説。
河童の方言として、メドチ(東北地方 青森県))、メットゥチ(岩手県)、ミンツチ(北海道 アイヌ)などがあります。これは龍神の異名である「ミヅチ」がなまったものだと言われています。
ちなみに、河神が秋に山神となるように、河童も一部地域では冬になると山童(やまわろ 山の神の使い)になるといわれます。
◾️間引きされた子供
河童は、間引きされた子供の死体という説があります。
江戸時代には口減らしのための間引きが頻繁に行われていました。河原に上がった死体を見た他の子供たちに悟られないよう、大人が作った嘘が河童になったのだといわれます。
河童の外見
河童は子供ほどの体格で、オカッパ頭、赤く猿のような顔。
頭部に乗せた皿(あるいは円形に窪んだ部位)はいつも濡れた状態で、皿が乾いたり割れたりすると力を失う、または死ぬと伝えられています。
全身にぬめりがあって、生臭い体臭。ウロコ(または毛)で覆われ、緑色または赤色をしています。
短いクチバシ、背中に亀のような甲羅、手足に水掻き。足の裏には吸盤があり、目立たない小さな尻尾があります。
肛門が三つあり、そのため(?)河童のおならは強烈に臭いと言われています。
ちなみに、以上のような両生類的な姿は江戸の人々に受け入れられやすいように18世紀半ばに創作されたもので、19世紀に全国に定着していきました。
性格
一般的な河童のイメージは子供と相撲が好き、ひょうきんでおっちょこちょいなイタズラ者。
人間に捕らえられ、懲らしめられ、その代償に田植えを手伝ったり、秘薬の製法を伝授、魚を届けるような、人間に友好的な言い伝えも数多く残されています。
けれど、一方で、水辺にいる人間を水中に引き込み溺死させたり、好物の尻小玉(しりこだま)を抜いて食う、地方によっては血を吸う河童も存在しているようです。
河童の特徴
◾️水泳が得意
河童は水中に住まい、水中で生活しています。なので、一日中水の中に潜っていられます。水の中にいる河童は、牛や馬を引きずり込むこともできるほどの怪力を発揮できます。
その河童の骨は水の中では見えなくなり、そのため河童の死骸は人間に見つからないのだそうです。
◾️相撲好き
河童は相撲が大好きで、よく子供を相撲に誘います。河童が相撲を好むのは、相撲が元々、水神に奉げる行事だったためという説があります。
河童は人間の大人よりも力が強く、相撲に負けた子供の尻子玉を抜くという伝承も残されています。
けれど、勝負に勝つと「河童の妙薬」をもらえるといいます。その必勝法は、相撲をとる前に河童にお辞儀をすること。そうすると河童もお辞儀を返し、頭の皿の水がこぼれてしまうため、力が出せなくなってしまいます。
◾️河童の好物、キュウリと尻子玉(しりこだま)
好物はキュウリ、魚、果物。キュウリを好むのは、河童が元は水神で、キュウリは水分補給のできる水神に欠かせない供えものであったことが由来しています
河童の中には、人間の生き肝と尻子玉(人の肛門にあるとされた想像上の玉)を好物とする者がいます。
◾️弱点は頭の皿
河童は皿が乾くとせっかくの怪力が出せなくなってしまいます。そして、河童は人間に騙されることの多い妖怪。
なので、河童に襲われたら「お辞儀をする」こと。
すると、河童もお辞儀を返してくるので、頭の皿から水が流れ、力が抜けて、河童から逃れることができると言い伝えられています。
河童の神通力
河童は怪力の持ち主。
またシダの葉で頭をなでると人間に化けることができると伝えられています。
「死んだ者を生き返させる生き針、生きている者を死なせる死に針」という武器を持ち、人間や家畜の魂を操れるといいます。
取り憑かれた者は魂を抜かれ、一日中川や沼を見つめ続け、最後には溺れ死んでしまいます。
西遊記の沙悟浄は河童?
西遊記の沙悟浄が河童の妖怪であるというのは日本での設定のよう。本場中国では沙悟浄は「河伯(かはく)」という黄河の水神。人の頭に魚の体を持つ白い龍。
これが日本に伝来して「河伯」→「河童」になったという説があります。
けれど、中国の河童は「水猴子」という名の「水鬼」(中国での「鬼」は幽霊や妖怪をいいます)であるともいわれています。
「河童の妙薬」は実在する?
日本に伝わる「河童」伝説は東北、関東、四国など各地に残されています。
河童は悪戯好きな妖怪。それが人間に知られ、手を切り落とされるなどの罰を受けることになるのですが、切り落とされた手を返してもらうために自ら調合した薬と引き換えにするというのが主な伝承。
「西遊見聞髄筆」「利根川図志」などの江戸時代の書物にも「河童の妙薬」として記述が残されています。
薬の効果は「打ち身」「火傷」「切り傷」に特に高い効果を発揮するといわれています。
その妙薬は薬事法の制定で家伝薬が廃止されるまで各地で実際に販売されていました
その代表的なものに茨城県の「岩瀬万応薬」、新潟市猫山宮尾病院の湿布薬「猫山アイス」などがあります。
河童、寿司になる酒になる、モンスターになる。今でも人気の妖怪
河童でイメージするのはまず、「ポケモン」のハスボー。水色のヌボっとした体に蓮の葉を乗せた6本足のモンスター、進化して河童になります。
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『ONE PIECE』の河松は、河童であることを誇りにしている、光月おでんに仕えていた侍「赤鞘九人男」の一人
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芥川龍之介の「河童」では主人公が河童の国に迷い込み様々な体験をする、大人向け日本版「不思議の国のアリス」のような物語。
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年配の方にはTVコマーシャル「黄桜」のイメージキャラになっていたのも懐かしいところ。
柳田國男の『遠野物語』にも河童は登場しています。
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河童と『河童の妙薬』まとめ
出典:deviantart
河童が日本古来の妖怪なのか、中国から伝来した水神なのかは定かではありませんが、日本に根付き、日本の風習で進化した妖怪であるのは確かなよう。
実在したか、架空の生物なのはさておき、「河童の妙薬」でHP回復できるなら家伝薬だって試してみたいかも。。。