暦の上では夏本番。日差しが眩く、茹だる暑さを持て余す頃。心なしか屋外に人の気配も少なくなったように感じられます。
昔なら軒先に作務衣や下着姿のオヤジさんたちが将棋を打ったり、打ち水に涼をとったり、豆腐屋のラッパの音が響いたり、まさに『三丁目の夕日』の日本の夏の風情があったであろう頃。
季節がなくなってゆくと感じる頃です。
目次
大暑
大暑(たいしょ)は二十四節気の12番目。
現在の定気法では太陽黄経が120度のとき。
2024年の大暑は、7月22日(月)、および立秋(8月7日の前日)までの期間をいいます。
『暦便覧』には「暑気いたりつまりたるゆえんなればなり」と記されています。
「暑さが、至り、詰まる」季節であることの意味。
ちなみに暑さがピークに達するのは8月の上旬、大暑の後半頃であるといわれています。
夕立と入道雲
夏の季節をイメージする特徴のひとつに入道雲と突然の夕立があります。
夕立は夏の午後から夕刻にかけて見られる天候。
古語として、雨に限らず風・波・雲などが夕方に起こり立つことを「夕立つ」と表現したことに由来しています。これを名詞にしたのが「夕立」。
夏の季語として用いられ、ゆだち、驟雨(しゅうう)、白雨(はくう)、喜雨(きう)とも称されます。
入道雲も夏をイメージする景色のひとつ。正式名は「積乱雲」。動きが早く濃厚な雲がみるみる形を変えるのが特徴。大気の状態が不安定になっている為に発生し、多くは夕立の前触れともなる雲。その発生には注意が必要です。
とはいうものの、雄大に形を変えてゆく入道雲と「夕立」の適度なお湿りは、やはり日本の夏の風物詩のひとつです。
土用の丑の日
小暑の終わりごろに夏の土用に入ります。
土用とは暦の雑節にひとつ、四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間ずつをいいます。土用には丑の日が年によって1日か2日あり、2日ある場合はそれぞれ一の丑・二の丑といいます。
ちなみに2024年の今年の夏の土用の丑の日は7月24日(水)・8月5日(月)
夏の土用の丑の日には鰻を食べる習慣があります。
なぜ、土用の丑の日にうなぎを食べるようになったかについては、昔の風習として「梅干し・うどん・瓜(うり)など「う」のつくものを食べて食い養生をした」のが今に伝わっているという説があります。
「大暑」の頃七十二候
「大暑」の頃、七十二候においては下記のように表現されます。
初候(7月22日頃〜7月26日頃) 桐始結花(きり はじめて はなをむすぶ) : 桐が花を咲かせる頃
桐は日本の紋章にも使用される神聖な木、大暑のこの頃に実を結びます。
次候(7月27日頃〜8月1日頃) 土潤溽暑(つち うるおうて むしあつし): 土が湿って蒸暑くなる
最も蒸し暑いと感じる頃、木々や草花には土の湿りが緑濃く潤う時
末候(8月2日頃〜8月6日頃) 大雨時行(たいう ときに ゆく) : 時として大雨が降る
青空に湧き上がる入道雲が夏の大空に現れるこの頃、夕立や台風など夏の雨が降りやすくなる時
「二十四節気」とは
二十四節気は、一年を春・夏・秋・冬の季節に分け、それぞれをさらに6分割した24の期間に名前をつけたものです。現在でも季節の節目を示す言葉として使われています。
二十四節気の名称は、中国で考案された当時のものがほぼそのまま使われています。考案当時の文明の中心であった黄河の中・下流域の気候を反映しており、日本よりも寒冷で大陸的な気候のため、日本の気候とは多少ずれがあります。
太陽黄経が30の倍数であるもの(春分・穀雨など)を中(中気)、そうでないもの(清明・立夏など)を節(正節、節気)と言い、節気から次の節気の前日までの間を一ヶ月とする月の区切り方を節切り、その月を節月と言います。季語の分類も主として節切りで行われています。
夏至・冬至の二至、春分・秋分の二分を併せて二至二分といい、立春・立夏・立秋・立冬を四立、二至二分と四立を併せて八節と言います。二十四節気をさらに約5日づつの3つに分けた、七十二候という分類もあります。
大暑の頃の行事
大暑の頃、日本各地で様々な夏祭りが催されています。
夏まつり
北海道 函館港まつり (開催日:8月1日~8月5日)
出典;hokkaido
2万人が歌って踊る、函館夏のメインパレード。きらびやかに装飾された山車や神輿は必見
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岩手県 さんさ踊り(開催日:8月1日〜8月4日)
出典:ze-ssan
東北五大祭りに数えられて藩政時代から伝わる「さんさ踊り」。悪鬼退散を喜んで踊ったのが始まりといわれており、現在では踊り手、笛、太鼓あわせて3万6千人の群衆となります。
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山形県 花笠祭り (開催日:8月5日〜7日)
東北五大祭りのひとつ。花笠太鼓の勇壮な音色と共に、艶やかな衣装と紅花をあしらった笠を手にした踊り手が、山形の真夏の夜のメインストリートを練り歩きます。
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青森県 ねぶた祭り(開催日:8月2日〜7日)
中国から渡来した「七夕祭」と、古来から津軽にあった習俗と精霊送り、人形、虫送り等の行事が一体化して人形、扇ねぶたになったと伝えられています。
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仙台 七夕祭り(開催日:8月6日〜8日)
伊達政宗公の時代から続く星祭りの優雅さと飾りの豪華絢爛さを併せ持つ伝統行事。
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京都府 祇園祭 (開催日7月1日〜7月31日)
出典:kyoto-design
一千年の歴史を持つ日本三大祭りのひとつ。平安時代に疫病・災厄の除去を祈った祇園御霊会を始まりとする、八坂神社の祭礼です。 7月1日から1ヶ月にわたり様々な神事・行事が行われます。
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福岡県 大牟田夏祭り「大蛇山」 (開催日:7月16日~23日)
笛や太鼓のお囃子にのって、口から七色の火を吹きなが圧倒的な力強さを漲らせ練り歩く大蛇たち。200人~300人もの引き手の汗と情熱によって生命を吹き込まれ、大牟田の夏と人々を祭りの渦の中に飲み込んでいきます。
大暑に見頃な花
朝顔
朝顔は中国語で牽牛(けんぎゅう)、奈良時代末期に遣唐使が薬として種子を持ち帰ったと伝えられています。
種子は「牽牛子」(けにごし、けんごし)と呼ばれ、粉末にして下剤や利尿剤として用いられる生薬。平安時代には主には薬用植物として扱われていました。
江戸時代に多様に品種改良され、観賞用として広まっています。
現在も日本の夏を彩る花として親しまれ、各地で朝顔市が催されています。
ヒマワリ
ヒマワリの原産地は北アメリカ大陸西部、太古からネイティブ・インディアンの食用作物でした。
現代でも種は絞って搾油されヒマワリ油として、または煎って食用されています。
夏の花として人気のヒマワリの名所は日本全国に点在しています。
** 東京都 国営昭和記念公園 **
公園内花の丘に約5万本のヒマワリが植栽され、見頃には間近で観察できる都内ヒマワリの名所のひとつです
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** 兵庫県 佐用町南光ヒマワリ畑 **
ヒマワリの町佐用町では、町内6地区で7月上旬からの約1ヶ月間、合計約23ha、約120万本のひまわりが開花します。
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** 広島県 世羅高原農場 **
50種類110万本のひまわりが丘一面に広がる「ひまわり迷路」や、ひまわりの摘み取りも楽しみ。珍しいひまわりの見本園や、赤いひまわり畑も見所のひとつです。
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大暑 まとめ
都会に暮らす者にとって、エアコンのない夏は過ごしづらい、お年寄りは健康を害する恐れさえある現代。そんな生活で季節感を感じるなんてはっきり言って難しい時期。
けれど、休日に出かけた郊外で、思いの外、吹く風が涼しいと感じたことはないですか?
できるなら、木陰で、吹く風に夏を満喫したいものです。